グローバル経営の極北

グローバル経営を考える「素材」を提供します

育児とはマネジメントである

f:id:nori76:20170210233825p:plain

娘は毎日すくすくと育っていて気づいたら1歳半。仕事と育児に追われる生活を続けながら重要な気づきがあって、それは、育児とはマネジメントである、ということ。

多くの人は育児や家事を「作業」と思っている。しかも偏見のある人からすると「単純作業」なのではとすら思われていたりする。でも、実際に育児をやっていると、こういいう考え方がどうもぴんとこない。「単純作業」だとしたらなんでこんなに毎日疲れるんだろうか。

で、改めて考えてみると、育児は意思決定の連続だということに気づく。毎日めまぐるしく状況は変わる。そして、子供の体調が悪い時どう対応すべきか、どの病院が最適か、待機児童の多い厳しい状況のもとで保育園戦略はどうするか、子供が急に泣き出した時どう対応するか、どんな食事を与えるべきか、などなど育児では常に意思決定が求められる。しかも一人目の子供であれば、過去に一度も経験したことないので、意思決定のもとになる情報や経験は限られて、常に手探り状態。

これはまさに「マネジメント」の仕事だ。与えられたリソースは限られているし、手持ちの情報も常に部分的。しかも未来がどう動くかはやってみないとわからないことだらけ。こうした不完全な状況下でも、マネジメントは「意思決定」し続けなくてはいけない。これはまさに育児で求められることと同じだ。

よく、育児や家事は「アウトソース」してしまえばいい、という話が外野からはあがる。これは経営の観点でも一つの真実ではあって、定型業務をアウトソースすることによる経営上のメリットは確かにある。しかし、どの業務をどういった粒度でアウトソースするか、というのはまさに意思決定が必要な部分だし、仮に定型業務をアウトソースしたとしても、その後に残るのは、マネジメントとして意思決定する、という非常に難易度の高い部分。これは育児でも同じ。子供をどういう方針で、どのくらい「限られたリソース」を投入しながら育てていくか。これはなかなか高度な判断を要する。

さらに言えば、うまくアウトソースできたとしても、育児って、結局マネジメントだけでなく細かい実務を同時にどっぷりこなす必要があって、スタートアップを立ち上げた社長みたいなものとさえ言えるかもしれない。しかも、1人目なら、その領域で経験やスキルがないのが普通という厳しい前提。離婚全体の3分の1が子供が3歳までに起こる、というように「破綻」が珍しくないのも起業に似てると言えるのではないだろうか。

「育児とはマネジメントである」この認識が世間に広がるといいなと思う。専業主婦だけでなく共働きであっても、日本は主に女性が育児を担っているけど、それは決して「単純作業」なんかでなく、複雑で難易度の高い「意思決定」を必要とするものなんだよ、と。そして、こういう認識が広がれば、俺ももっとそこに関与していかなくちゃな、と思う男性も増えたりするのではないかとそっと期待する。

 

大丈夫やで 〜ばあちゃん助産師(せんせい)のお産と育児のはなし〜

大丈夫やで 〜ばあちゃん助産師(せんせい)のお産と育児のはなし〜

 

 

いいおかお (松谷みよ子 あかちゃんの本)

いいおかお (松谷みよ子 あかちゃんの本)

 

 

 

「内面の葛藤」はそれ自体では解けないということ

f:id:nori76:20161219234713p:plain

この記事で書いたように、仕事も含めて改めて人生の意味みたいなものを考える時期になってて、久々に内省的なモードになっている。仕事ってなんなのか、というのを、未来は全て想像でしかなかった若い頃と違う形で、15年ほどの仕事経験を踏まえて改めて考えなおしているとも言える。

前職で駐在していた時の日本人の同僚で、仕事の理想像を強く持ち、そのビジョンをメンバーにも伝えて組織を鼓舞し、成果の達成に徹底的に拘ることで実績を積み上げていた強いリーダーがいた。自分に厳しい人で、そういう人の常として、他人に求める基準も高かった。僕もその人に幾度となく「詰められて」何度も冷や汗をかいたことを思い出す。

その人がある日突然会社を辞めて日本で独立した。当初は色々と試行錯誤していたけれど、最終的に行き着いたのは、個人の変容を東洋思想的な観点から促す、みたいな「ちょっと精神性強すぎないでしょうか」というような方向での事業だった。ただ、その内容自体がどうというより、そこに至る精神の動きみたいなものは最近なんとなくわかる。米の公開企業が四半期業績をきちんと着地させることに注ぐ力やプレッシャーはものすごいものがあって、そこからの要請で、狂ったように仕事に没入することで学べることや、限界を走る快感みたいのは確かにある。ただ、やはりその延長に何かしらの袋小路を感じてきたのも事実。

そうした外面的な圧力とは別に、僕の場合は、「内面の葛藤」の延長として仕事に狂ったように打ち込んでいた側面がある。それは自分がうまく成果を出せないことへの「怒り」が原動力だったし、他人や状況からのプレッシャーや圧力に正面から向かい合い、自分の「弱さ」を言い訳にせず、それと対峙して一歩も引かない強さを求めていく過程だった。この内面的な葛藤は、幸いのところ、実際の仕事における試行錯誤と鍛錬の結果、30代を通じて一つの解決といえる地点までたどり着いた。一方で、では、仕事それ自体になにを求めるのかと、というのがテーマになってきているのだろう。

内面に抱える課題は内面の葛藤それ自体では解けない、というのが30代に学んだことで、それがよく分かってなかった20代は、そこで完全に隘路にはまっていた。例えば自分の弱さを克服したいとして、その弱さを内面の言語、つまり抽象的な概念で克服することはできない。外面と内面は常に連動していて、外面、ここで言えば仕事という場における課題を通じて内面の課題は浮かび上がり、仕事の課題解決を通じて、それは内面の課題にフィードバックされる。この相互依存性が本当に鍵で、もう少し自分の体験も踏まえながら今後掘り下げていきたいと思う。

「どんな状況でも仕事で成果を出すのがプロ」という主張の危うさについて

f:id:nori76:20161218140501p:plain

最近のネットは、成功した起業家や、注目企業で成果を出した人のインタビューや記事に溢れていて、そういった人への憧れや、何かを学び取りたいという皆の思いが強く感じられる。それ自体は特に悪いことではないし、学びを得られることも多いのだけど、一つ気になるのは「どんな状況でも仕事で成果を出すのがプロ」という主張がよく使われている点。

職業人としてのプロ意識というのは重要だし、困難な状況に追い込まれながら成果を出せるかはきわめて重要。ただ、経営管理の仕事をしてきた経験からすると、どんなに優れた実績をあげてきた優秀な人も、例えばモチベーションの低下やメンタル面での不調でパフォーマンスは有意に影響される。これはビジネスに限らず、プロスポーツの世界でもよく見られる事象で、例えば欧州で活躍するトップレベルのサッカー選手が、監督との不和、もしくはプライベートでの悩み事、など様々な精神的な理由でパフォーマンスを落としていく事例は多い。

私のいる外資系ハイテクの競争的でタフな環境で生き残ってきた役員クラスでも、新しい組織を担当した時に、配下のマネージャー達をうまく方向付けできず、彼等からの不満や反発などが強まることで、自信を失ったり焦りが生じ、その結果として期待された成果が上がらず、それがさらに自信を失わせる、という負のスパイラルにはまり込んでしまう例は多く見てきた。

また、仕事で成果を出してきた人というのは、必ず自分の中に成功モデルを持っている。逆に言うと、そのモデルがうまくはまらない状況では、モデルへの依拠が足枷になる場合も多い。成功モデル、はどんな状況にも普遍的に当てはまるものではないのに、成功したイメージを捨てきれず、モデルがうまくはまらない、前提の異なる新しい状況にもそれを適用しようとして泥沼にはまっていく。

例えば、外資系の日本法人には本社側から外国人の経営層が送られてることも多い。その際に米国以外での実績や経験に乏しい役員は、ビジネスの構造や文化が全く違う日本市場や組織に、米国での成功体験を「そのまま」持ち込もうとして、激しい反発を受けて成果を出せないケースがよくある。

外資系を生き延びているうちに学んだのは、自分の成果は所詮状況に依存している部分が大きいということ。事業の状況、与えられた役割、上司のタイプ、ステークホルダーとの関係。こういう多様な要素のもとに自分の成果もかなり規定されてくる。

ビジネスでは一人で成果を出すことは不可能で、周りが自分を信頼してくれてお膳立てをしてくれているから成果を出せるのに、「どんな状況でも仕事で成果を出すのがプロ」という「プロ信仰」に固執して潰れていく人はとても多い。圧倒的な「プロ」であるメッシですら代表ではクラブの時ほど活躍できないように、どれだけ優れた人も、周囲との関係性の中で個のパフォーマンスは決定されてくる。

もちろん、組織からの同調圧力が強く「個」を発揮することを躊躇いがちな日本の文化において、強い個としてのプロ意識を持って主張することはもっと求められるとは言える。ただし、プロがより高いレベルでパフォーマンスを出すには、改めて冷静かつ客観的に、自分の成果は外部の様々な要因に規定されていることを認識するのは重要と思う。

なんであんなに仕事に熱中してたんだろうか?

f:id:nori76:20161217223712p:plain

育児をしていると、自分の人生観みたいなものが組み替えられていくのを実感する。今年1年は、仕事より育児・家事の比重が間違いなく高かったのだけれど、そういう生活を続けていると、24時間仕事のことばかり考え、毎日少しでも経営を良くするにはどうしたらよいかと格闘していた時のことが随分遠くに感じられる。

特に前職は、売上数千億円の事業のターンアラウンドという要素が大きく、細部まで張り巡らされた経営管理の仕組みを精緻に動かしながら、本社から求められるきわめて高い数値目標を狂いなく出していくことが必要だった。経営陣からのプレッシャーは非常に強く、重要な経営数値についてCOOとCFOに詰められる夢を何度となく見た。夜中に絶叫して起きたことも何度かある。

それでも、そういう生活は充実感も伴う。与えられた課題の本質的な部分、作動する原理や働き方を、データに入り込んでいくことで分析し、そこから論理的に導き出される解決策を設計していく。論理性だけでなく、組織に流れる感情や政治力学にも配慮し、さらに施策を練りこんでいく。こうした没入を経て思ったような成果が出ると、大きな達成感に包まれたことをよく覚えている。

この生活は娘が産まれて一変した。育児や家事に物理的に時間が取られる以上に、精神的な部分での変化が大きい。自分が想像していたよりはるかに、育児というのは心配事が多い。保育園に通いはじめると子供はすぐ病気になるし、目を離したすきに事故になるのではと気が休まらないし、寝ている間になにかあったらどうしようと不安を常に感じる。などなど、精神的な負荷は思ったより高く、結果として、そのモードから仕事へ頭を切り替えることがなかなか難しかったりする。

そういう生活が続くと、あれっそもそもなんで俺はあんなに仕事に熱狂的にのめり込んでいたのだろうと思う。数字の達成に全力を傾け、少しでも妥協した仕事をした人がいれば怒鳴りつけ、最後の最後まで執念を燃やしながら成果を出すことに拘る。そういった没入や狂気と共に毎日を過ごしていた日々はなんだったのだろうか。

保育園に迎えに行くと、こちらを見つけた娘がニコニコしながら、よたよたとこちらに向かって歩いてきて、両足にぎゅっと抱きついてくる。鼻水を取りに行った耳鼻科で、膝の上にちょこんと乗った娘に絵本を読んであげていると、こちらを見上げてにこーと微笑みかけてくる。疲弊と心配、そして幸福を行ったり来たりしながら、自分の中で人生のステージが切り替わっていることを毎日感じる。

------------------

はてなの読者登録もぜひ!ブログ更新時にメールで通知がいきます。

経営陣が現場で泥まみれにならずに「日本的経営」なんてできないのでは

僕は小売業には明るくないけれど、このインタビューは経営のあり方について示唆を与えてくれる。

まず、玉塚氏がIBM時代に柳井氏に「説教」されたと語るところ。

【玉塚】君は何をやりたいんだと言われました。僕が本当にやりたかったのはコンサルティングではなく経営。それを見抜かれたんでしょう。柳井さんはこうおっしゃったんです。経営や商売というのは、自分のなけなしの金で場末に店を出して、一生懸命考えることから始まる。誰も来ないとする。どうして誰も来ないんだろうと考える。店が暗いのか、他の店よりも価格が高いのか。試行錯誤して、お客さまに来てもらえるようになったとしても、何も買わずに出ていく人もいる。そのうち自分の手元のキャッシュが減っていき、胃が痛くなる。そういう経験をし続けない限り、MBAを取ろうが、コンサルティングをやろうが、商売人、経営者にはなれない。

そして、震災の時のこんなエピソード。

【玉塚】最初の震度7の地震が起こったのが4月14日でした。ローソン本部からまず200人を派遣しました。土曜日の朝、16日に東京で対策会議を開いていたんですが、テレビ会議では現地のことはわからない。そこで翌日、私も道路が通じていた鹿児島から4時間かけて熊本に入りました。

【弘兼】トップ自らが現地に入った。

【玉塚】被災地の現状、温度感を知ることは大事。トラックを走らせる、航空機で空輸するという指示を出さなければなりませんからね。

【弘兼】熊本は地形的に周囲から物資を運ぶのに渋滞しがちだとか。

【玉塚】今回は東日本大震災のときと違って、製造拠点が壊滅的な被害を受けたわけではありませんでした。周囲には商品があったので、いかに効率的にお店に届けるかが一番のポイントでした。現場の状況を判断してパンを東京から二度空輸しました。

【弘兼】現場でトップが適切な判断ができれば強い。

【玉塚】オーナーの方は泥だらけになって、店を復旧しようとしておられた。そこで感じるものってありますよね。できる限りの加盟店さんを回りました。現場に張り付いている社員も徹夜でした。

これを読んで前にツイートしたことを思い出した。

日本を「代表」するとされる伝統的な大企業がここ20年苦戦している例は多いけれど、経営の仕組みは欧米的にしつつ、終身雇用はじめとした「日本的経営」を温存、みたいなパッチワークでやろうとしているところに問題があるのではないか。本当の意味での「日本的経営」を貫徹するなら、兆円規模の会社になっても、経営陣が現場で汗かいて、真剣にメッセージを伝えて、従業員やその家族のためになることを嘘なく実行する、などが必要になってくるはず。

そういう経営は、この規模の大企業ではできないからとかいって、自分は個室で運転手つきで、欧米的に上がりつつある報酬を貰いながら、反発を恐れて事業撤退もリストラもできなくて、形骸化した終身雇用モデル維持してるなら、そりゃ企業の活力は失われる。従業員はみなそういう経営陣のあり方の嘘や情けなさをよく知っているはずだから。

経営陣で考え抜いた末に日本的経営モデルを守ると決めたなら、経営陣は徹底的に現場で従業員と泥まみれになってお客様のことを考え、社内に向けては従業員が目標に向かって、真剣かつ楽しく働けるような仕組みを毎日必死に考える。こういうことを実行するのでなければ、どうやってもうまくいかないだろうと思う。そこまでやらずに、日本的経営を守る、みたいのはないのではないか。

玉塚氏の経営が実際どういう形で「現場」から受け止められているかはわからないけれど、「日本的経営」という幻想にとらわれずに、改めて「商い」の原点に立ち返ることの重要性を思った。

プロフェッショナルマネジャー  ?58四半期連続増益の男

プロフェッショナルマネジャー  ?58四半期連続増益の男

 

 

ネガティブな人こそ組織に必要かもしれないわけ

f:id:nori76:20160827115539p:plain

 今日はエンゲージメントに関するHBRの記事をご紹介。

従業員のエンゲージメントの強さがパフォーマンスを高める、というのは、アメリカの経営まわりでは最近よく見かける考え方。それに対しこの記事は、確かにエンゲージメントは重要だけど、そんなに単純な話でもないよ、ということを論じている。

例えば、Googleの研究は、オープンで安心できる文化、明確なゴール、強い目的意識が存在すること、の3つがチームがうまく機能する要因であることを明らかにした。

他にも、リーダーの判断や意思決定が、エンゲージメントよりも、チームや組織のパフォーマンスに影響していることを示した心理学の研究も紹介されている。時に「暴君」となるスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾスがきわめて強い組織を作り上げていることがよい実例と言える。

こうした見解を踏まえつつ、この記事ではエンゲージメントを高めようとする時に注意すべき4つの点を上げている。

現状を守ろうとしてしまう

 メンバーが自信を持っていて、強く動機付けされている「エンゲージメント」の高い組織は、実は新しいやり方に抵抗を示す傾向を持つ。例えば、この研究は、自分に自信のある人ほど現状に甘んじてしまい、逆に現状にストレスや不満を感じている人ほど、新しいブレークスルーを生みやすい、ということを明らかにしている。記事中では、Nokia, Kodak, Yahooを例としてあげているけれど、確かにビジネスにおいても、強い技術やビジネスモデルで、強固な基盤を築いた企業が、産業の変化についていけなく衰退していくのは、「イノベーションのジレンマ」でも論じられている通り。

従業員が燃え尽きてしまう

エンゲージメントの高い組織では、従業員は仕事に深く入り込んでいる。しかし、この研究が示すように、過度に仕事にのめり込むことが、家族との関係や健康を壊してしまう。組織への忠誠心が高く、仕事をきちんとこなすことへのモラルも高い日本ではよく見られる光景。短期的には業績向上に役立つケースも多いけれど、長期的には組織を疲弊させ、結果として業績悪化に繋がる場合も多い。

前向きな人ばかり集めてしまう

これは面白いポイント。組織がエンゲージメントを意識し過ぎると、仕事に前向き、性格がポジティブ、コミュニケーションが得意、といったタイプの人ばかりを重用しがちになる。例えばこの研究では、ホテルのフロントやレストランの従業員が、自分の仕事が好きで誇りを持っている人ほど高い顧客満足度を得る傾向があることを示している。確かに企業はそういうタイプの人をできるだけ増やしたいと思っているだろう。

一方で、上記したように、現状に不満を抱えている人ほどブレークスルーを生み出す、というケースもあり、組織全体でエンゲージメント向上に適した明るく外交的で、自分の仕事が好きな人ばかりを集めればいいとは言えない。役割に応じて従業員の多様性を担保することが重要になってくる。

ネガティブの価値を軽視してしまう

 これも3つ目のポイントに関連した面白い点。この研究は、ネガティブなムードにある人のほうが、ポジティブなムードの人より、粘り強く作業し続けることを明らかにしている。また、適度にストレスを与えられた人のほうが、目的達成のために、集中して仕事する傾向になる結果として成果をあげられる、ということも別の研究が示している。これは確かに経験からも頷けるところがあって、必ずしも人当たりは良くないし、よくネガティブなことを言うけれど、仕事ではそういう性格が、高い作業品質の確保、納期の厳守、組織への適度な緊張感の植え付け、などに繋がって実績をあげている人はよく見る。

以上4点とも現場の経験からも頷けるところがあって、組織を運営する上での頭の整理にはなかなか有益と思う。こういった「心理学」の要素を組織の仕組みづくりに具体的にどう反映していくか、というのは今後ますます焦点があたってくるだろう。

 

産業・組織心理学エッセンシャルズ

産業・組織心理学エッセンシャルズ

 

 

職場の人間科学

職場の人間科学

 

 

過去40年の年収データが示すアメリカの「分断」

田端氏と山口氏のツイートを踏まえて、こんなツイートをした。

 これは「クルーグマン教授の経済入門」でクルーグマンが示していた数字の記憶をもとに書いた。実際はどうなのかなと思い、アメリカの年収階層別の統計についてググると、アメリカ統計局のデータを見つけた。1967年から2011年のアメリカの年収分布別の年収推移(インフレ調整済み)。

これはなかなかすごくて、上位5%は+66%、上位10%は+62%と大きく増加しているのに対し、ミディアン(50%)は+19%, 下位10%については+25%と非常に低い伸び率になっていて、この40年あまりでほとんど年収が増えていないといっていいレベル。トランプ支持が広がることも頷ける「分断」が存在することに改めて気づかされる。

f:id:nori76:20160818150246p:plain

http://www.cleveland.com/datacentral/index.ssf/2012/09/historical_median_household_in.html

 

 

クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)

クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)

 

 

これから始まる「新しい世界経済」の教科書: スティグリッツ教授の

これから始まる「新しい世界経済」の教科書: スティグリッツ教授の

 

 

 

RBSがインドIT大手Infosysとの約300億円の契約を解除

RBSがインドSI大手のInfosysとの3億ドル(約300億円)の契約を解除したというニュースをFinancial Timesが報じている。

www.ft.com

 記事によると、RBS傘下のWilliams & Glynのシステムを独立して構築することにInfosysは失敗した模様。過去数年の度重なる遅延で、総コストは既に15億ポンド(約2,000億円)に達するという悲惨な状況になっている。

日本でも最近みずほ銀行の次期勘定系システムが遅延しているのでは、というのが話題になっていたが、大規模SIビジネスはどうしてもこうした遅延やトラブルがつきまとい、訴訟リスク等も含めてコントロールは非常に難しい。

Infosysは先月の決算発表での売上予測が市場の期待値より低かったことから、株価が急落しており、このRBSとの契約解除はまさに「泣きっ面に蜂」と言える。

f:id:nori76:20160817123245p:plain

一方で、記事でも触れられているが、より本質的に深刻な課題は産業全体のクラウドへのシフト。ITインフラからミドルウェア、そしてアプリケーションまでクラウドへの移行は急速に進んでおり、それは、旧来のオンプレミス環境でのシステム構築に強みを持っていたIBMやHP, Oracleなどの米のIT大手、そしてタタやInfosysなどインドのIT大手にとって脅威になっている。

その「脅威」となるAWSやMicrosoft Azureは大きな成長を遂げており、記事では英のOakNorth Bankが基幹系のシステムにAWSを採用したことに触れている。

Adobeのハーバード・ケーススタディーからクラウド時代の経営変革を考える

f:id:nori76:20160816230020p:plain

Google, Amazon AWS, Salesforceといった企業が切り開いてきたクラウドビジネスはエンタープライズIT産業の風景を完全に変えました。それは単にテクノロジーの進化という点に留まらず、現代の「経営」の基盤にも大きな影響を与えています。

この記事では、シリコンバレーの「老舗」ソフトウェア企業で、一般にもPhotoshopやIllustratorでよく知られるAdobe社の経営変革について触れます。ハーバード・ビジネス・スクールのケース・スタディ "Reinventing Adobe" (Gupta & Barley, 2014)を参考にしつつ、経営変革を成功させるポイント、クラウドが現代の経営において持つ意味、などについて考察していきます。

まず、結論から言うとAdobeの経営変革は大きく成功しています。

商品は3つのクラウドで分かりやすく整理されています(以下の表・グラフの出典はAdobe Investor Handout

Creative Cloud(Photoshop, Illustratorなどのクリエイティブソフトウェア)のARR*は、2012年以来大きく成長し、2015年で25億ドル(約2800億円)を越えています。

*ARR(Annualized Recurring Revenue): 年間の定期売上

買収を中心に「新たに」作り上げたMarketing Cloud(Analytics, CMS, マーケティングオートメーションなどのマーケティング支援ソフトウェア)のビジネスは2015年に売上15億ドル(約1700億円)に迫るレベルまで成長しています。

3月17日に発表された最新の2016年度第1四半期の決算も非常に好調で売上は四半期として過去最高の13.8億ドル(約1540億円)を記録しました。株価はここ5年で大きく上昇し、時価総額は477億ドルと5兆円を超える規模です。

Source: Yahoo Finance

では、この成功はどうやって成し遂げられたでしょうか。Adobeの経営変革のポイントは以下の4点です。

1. 経営変革のビジョンを定める
2. 買収を通じて新たなビジネスを「創造」する
3. ビジネスモデルを大胆に組み換える
4. ウォールストリートと巧みに対話する

これからそれぞれのポイントについて説明していきます。

1. 経営変革のビジョンを定める

2008年の金融危機後、Adobeは「成長の壁」にぶつかります。Photoshopをはじめとした既存事業は成熟し、新しい商品の開発にも失敗していました。そこで、CEOのShantanu Narayenは経営陣を集め、経営変革の方向性を議論します。(Gupta & Barley, 2014, p1)

まず、インターネットの普及で、写真や動画は爆発的な規模で共有され、コンテンツ作成の方法もデジタル化で変化を遂げ、さらに「データ」が鍵を握るようになります。コンテンツ作成の核となるソフトウェアを持っていたAdobeにとって新たな成長機会が多くありそうでした。

一方で、例えばTIMEのような雑誌はAdobeのソフトウェア無しには作成できないにも関わらず、彼等のビジネス全体のバリューチェーンへの関与は限定的でした。単に商品を販売しているだけで、その「プロセス」や「意思決定」にまでは入り込めていませんでした。

さらに、Adobeの顧客は広告代理店、出版社、マーケティング部門が中心で、IT化の進展で力を増していたIT部門には入り込めていませんでした。そこではIBM, Oracle, SAPといった「巨人」達が圧倒的なプレゼンスを誇っていました。

これらの認識を踏まえ、経営陣は3つの方針を定めます。

a. 既存事業の成長機会を逃さず投資し続ける
b. 新領域に買収で入り込んでいく
c. 新しい「顧客」を発見する

方針はシンプルですが、当時のAdobeのポジションを考えると色々と示唆があります。

まず、Adobeがクリエイティブ・コンテンツ制作のソフトウェア分野で圧倒的なシェアを誇っていたことが重要です。情報・ネットワーク産業の肝の一つは「エコシステム」の構築ですが、Adobeはこの「エコシステム」を長期に渡って構築していました。

がゆえに、デジタル化の進展でコンテンツ制作の「文法」が変わったとしても、強い「エコシステム」を新しい「文法」に合わせていくことで大きなチャンスと変わる可能性がありました。

さらに、上記したようにAdobeは広告業界やマーケティング部門といった限られたセグメントでビジネスをしていました。しかし、デジタル化の進展はマーケティング自身の姿を変えていきます。

煎じ詰めれば「データ」がマーケティングの鍵を握るようになります。Adobeはその変化をうまく捉え、買収による新領域への進出、IT部門との関係強化、などを通じてこの変化に対応していきます。

実際Adobeはこの3つの方針をベースに、具体的に経営変革に乗り出します。

2. 買収を通じて全く新たなビジネスを「創造」する

上記1.で定めたビジョンをもとに、Adobeは新領域のビジネスへと踏み出します。2009年にウェブ・アナリティクス分野で大きなシェアを持っていたSaaS企業Omniture社を18億ドルで買収したのです。

実は、Omnitureの経営陣は当初Adobeからの買収提案に懐疑的でした(Gupta & Barley, 2014, p3)。

というのも、Omnitureが地盤を置いていたのは一般に「エンタープライズIT」と呼ばれる企業向け(BtoB)市場だったからです。Adobeは一般消費者向け(BtoC)が強い企業であり、BtoBの企業とは思われていませんでした。

なので、Omnitureが候補としてあげていたのは、SaaSの盟主SalesforceやOracle, SAP, IBMといった「エンタープライズIT」の巨人達でした。

これに対し、AdobeのCMO Ann Lewnes はこう述懐しています(Gupta & Barley, 2014, p4)。

Omniture買収はAdobeにとって合理的な選択でした。我々の商品は人々がコンテンツを作るのを助ける。で、コンテンツを作ればその効果を「計測」したくなるのは自然ですよね?しかもOmnitureはトップランクの出版社や広告代理店、強いブランドを持った企業、などに広くリーチできていた。Adobeも彼等の商品を使っていましたし、デジタル・マーケティングが今後のトレンドであることもよく分かっていたんです。CMOとしての立場からも、代理店に聞いて回る必要なしに、マーケティング予算の効果が自分で測定できることは魅力的でした。

このように両者間のシナジーを強調するAdobeにOmnitureの経営陣も納得し、AdobeはOmniture買収に成功します。

一方で、株式市場は否定的でした。WSJは”Adobe buys Omniture: What Were They Thinking?"という強い口調の記事で、買収による2者間のシナジーに疑問を呈しました。

ここで、Adobeが取った対応が非常に大切なポイントです。

AdobeはOmnitureをCEO直轄の単独事業部として残し、Omniture生え抜きの経営陣をそのトップに据えて「自主性」や「企業文化」を尊重しました。そればかりか、彼等から「学ぶ」姿勢を強調します。

というのも、上記したようにOmnitureが展開していたエンタープライズITのビジネスは、Adobeにとって新たな領域だったからです。

こうした対応は一般的な買収ではなかなか起こりません。特に買収が頻繁なソフトウェア産業では、IBM, Oracleといった巨大なプレイヤーが有望なスタートアップを買収後に、トップをすげ替えたり企業文化の強引な統合を図って、商品開発や営業の核を担っていた人材の離反を招き、結果として買収時の価値が失われるというのはよくある光景です。

CEOのShantanuは以下のように語っています。こうした姿勢が成功を導いたわけです。

Omnitureは業界のリーダーでした。なので、マネジメントチームをそのままにしておくことが、成功の鍵であることを我々はよく分かっていたんです。買収は難しい。常に真剣に取り組んで、うまくいくための「ポイント」を外さないことが重要なんです。

3. ビジネスモデルを大胆に組み替える

ミッションを定め、買収を通じて新たな領域へ参入し、Adobeの改革は本格化していきます。続いて、クラウドビジネスの肝と言えるサブスクリプションモデルの導入にAdobeはいよいよ踏み込みます。

ソフトウェアの販売は"パーペチュアル"と呼ばれる、一度ソフトウェアを買えばずっと使えるパッケージ販売モデルが主流でした。昔はPhotoshopやMicrosoft OfficeのCDが箱に入って売られていたのを皆さん覚えていると思いますが、あの売り方です。

それに対して"サブスクリプション"と呼ばれる定期(主に月額)課金モデルがあります。Salesforceに代表されるクラウドでソフトウェアを提供する企業は、こちらのサブスクリプションモデルが主流で、大きく成長していました。

Adobeのこの当時の課題をCEOは以下3点にまとめています。

1. 商品の価格が高すぎてこれ以上の拡大が見込めない
2. プロ以外の消費者にはソフトウェアの習得が難しすぎる
3. 過去の成功が大きすぎてより広いバリューチェーンでのビジネスをうまく検討できていない

この課題を踏まえ、Adobeは2011年に"Creative Cloud"と呼ばれるクラウドを通じて19種類のソフトウェアが、デスクトップ、モバイル、タブレットなど複数のデバイスで使える包括的なサービスを打ち出します。

販売形態はサブスクリプションが主で、個人は$49.99, チームでは$69.99の月額で全てのソフトウェアが使用できる契約となり、パッケージ販売の時の値段の$2,599と比べて大きく値ごろ感のある価格戦略を取りました。

これによって、今までAdobe製品の敷居の高さや価格に尻込みしていた消費者にも製品が広がります。さらに、既存の「プロ」ユーザーにとっても、クラウドで頻繁に製品アップデートが行われ最新のツールが使えること、今まで使ったことのなかった製品も包括的なクラウドサービスによって触れる機会を得られるようになったこと、などから商品の価値が上がりました。

この結果、以下のようにサブスクリプションモデルの契約数は1年で5倍近く(47.9万)拡大します(Gupta & Barley, 2014, p9)。

この成功に自信を深めたAdobeはさらに改革を進めます。2013年の自社カンファレンス(MAX)で、パッケージでのソフトウェア販売を全て中止し、今後はクラウドでの提供のみとする、と発表したのです。

これは非常に大胆な決断です。Adobeは過去に大きなインストールベースを持っており、その顧客がこのクラウドへの全面移行に伴い離反すれば、将来の売上を失うことになるからです。

現にMicrosoftはこんな声明を出しています。

Adobeのように、MicrosoftもサブスクリプションによるSaaSモデルが「未来」だと考えている。しかし、Adobeと違い、我々はパッケージ販売からサブスクリプションへの移行にはもう少し時間がかかると見ている。そのベネフィットは大きく、10年以内には、みんなサブスクリプションを選んでいるだろう。しかし、現状では、パッケージ型でソフトウェアを売り、関連サービスはサブスクリプションで売る、という形でいきたい。

しかし結論から言うとAdobeは賭けに勝ちました。この発表のあとにもサブスクリプションユーザーは増え続け、それはAdobeが想定していた以上のレベルでした。

ここはクラウド時代における経営の最大のポイントです。クラウドは顧客との「長期的」かつ「より深い」エンゲージメントを可能にするのです。

以前のように2年おきのアップデートでのパッケージ販売だと、どうしても目標数量を売るための販売者側の都合が前に出てきます。

一方で、クラウド+サブスクリプションモデルの場合、契約期間内に顧客が製品に満足しているかが契約更新を決めます。なので、販売者側にも、普段から顧客が満足する品質やサービスを提供し続けるインセンティブがあるわけです。

この構造に加えて、クラウドは頻繁な製品アップデートを可能にしますから、顧客の要望にきちんと耳を傾けながら、短期かつ頻繁なアップデートでその要望を叶えていくことが可能になります。

Amazon AWSが圧倒的な成功を収めているのも、基本的にはこの構造によります。クラウド、というとテクノロジーの観点から語られることが多いですが(またそれが重要なのは間違いないのですが)、より本質的には上記のように「顧客価値の向上」にごまかしなく向かい合える、というのが実は一番重要なポイントです。

このCreative Cloudの成功と並び、Omnitureの買収をきっかけに、ウェブコンテンツ制作、マーケティングオートメーション、動画配信管理、などのソフトウェア企業を立て続けに買収し、これらをMarketing Cloudとして統合します。

結果として、Adobeにとって新しい領域だったエンタープライズITでも、Marketign Cloudは大きな成功を収め、ここでも事業変革の方針通りに「実行」できたことになります。

4. ウォールストリートとの巧みな対話

1.-3.で見てきたAdobeの変革の基盤を支える要素として、最後にフィナンシャル・マネジメントの点に触れたいと思います。

ご存知のように、アメリカでの投資家の圧力は非常に強く、「四半期ごと」に彼等が予測する売上やEPS、経営にとって重要なKPI、翌期以降の業績ガイダンス、などに企業業績が達しない場合は、容赦なく株が売られます。

よって、Adobeのような事業変革を成し遂げるには、ウォールストリートといかにうまく対話して、彼等に変革の内容と計画を十分に納得させ、その計画通りに実行し業績を出していく必要があります。

これは「言うは易し、行うは難し」です。しかし、Adobeはこの点もうまく乗り切ります。

以下は2012年~15年の売上と営業利益率(Operating Margin%, Non-GAAP)の推移です(出典はAdobe Investor Handout)。2013年に売上と営業利益率が大きく下がっているのがわかると思います。

ここがポイントで、パッケージ販売からサブスクリプションに変わると短期的には売上と利益が下がります。サブスクリプションは薄く長く回収していくモデルだからです。

通常こうした売上と利益の減少についてウォールストリートで理解を得るのは難しいです。しかし、Adobeは、今は事業変革中であり短期的には業績が下がるが長期的には必ずうまくいく、ということを別の指標で示すことで市場の説得を図ります。

それがARR(Annualized Recurring Revenue)です。これは簡単に言うと、既存のサブスクリプション契約から見込める1年間の売上、です。サブスクリプション契約の解約率は通常あまり高くないですから、この数字が積み上がっていけば、安定した売上と利益が見込めることになります。

それを示したのが以下のグラフです。2012年に27%だったARR比率は2015年には74%と大きく上がっています。

この指標に市場の関心を向けさせ、着実にサブスクリプション契約を増やしていくことで一度下がったAdobeの売上と利益は再度増加していきます。

上に挙げたグラフを改めて見ると、2013年に$4,055M, 23.1%まで下がった売上と営業利益率は、2015年には$4,796M, 28.9%と売上については2012年を超える規模となり、利益についても順調に回復してきています。

このように、ウォールストリートとうまく対話することで、市場からの圧力に耐え切れず改革が中途半端に終わる、というアメリカ企業によくある事業変革の課題をAdobeは乗り切ったと言えます。

---------------------

以上4つの観点からAdobeの事業変革を見てきました。

ポイントは彼等が「実行」と「顧客価値」にきちんとフォーカスできていたことだと思います。企業経営では、お題目としての計画が実行されない例は枚挙に暇がないですし、顧客価値がお題目になっていることもまた多いからです。

【参考文献】
Sunil Gupta & Lauren Barley (2014). Reinventing Adobe. HBS No. 9-514-066. Boston, MA: Harvard Business School Publishing.

Adobe Investor Handout, January, 2016
http://wwwimages.adobe.com/content/dam/Adobe/en/investor-relations/PDFs/ADBE-Investor-Handout-Jan2016.pdf

データ分析してみると「人事の常識」は間違ってるかも、というお話

f:id:nori76:20160816225352p:plain

Mckinsey Quarterlyは、経営の最前線のテーマについて幅広く触れた論考が読めるので重宝している。マッキンゼーのコンサルタント自身が執筆しているので、程よく現場感覚もあり、またデジタル化というテクノロジーの大きな流れもきちんと抑えているので、日々の実務を行う上でのヒントが結構見つかる。今回紹介したいのは、"HR Tech"に関するネタ。

www.mckinsey.com

"People Analytics"、つまり人事領域のデータ分析活用が進むと、今まで人事で常識と思われていたことが実は間違ってたことがわかるかも、というのがこの小論のテーマ。事例とともに3つポイントがあげられている。

どこから人を採用すべきか

あるアジアの銀行では、トップ大学からの採用を最重視していたけれど、各支店でのパフォーマンスを統計分析してみると、どんな「役割」や「ポジション」で経験を積んだかの方がハイパフォーマーと相関が強い、という結果が出た。この銀行はこの結果をもとに、採用手法の再検討、パフォーマンスの計測方法の変更、人材の最適配置、などに関する施策を打ち出し、支店における生産性を25%高めたという。

どうやって採用するか

あるプロフェッショナル・ファームは、年間25万件にも及ぶレジュメが送られてくる状況に困り果てていた。そこで、過去送られてきたレジュメや採用された人の特性、取りたい人材のタイプ、などを統計分析にかけて、採用モデルを構築し、自動化されたスクリーニングで候補者をふるいにかけた。これによって、採用者側で必要なタスクは大幅に減り、面接に集中することが可能になった。

どう人材を引き止めるか

高い離職率に悩まされていた保険会社は、従業員プロファイル、学歴や職歴、人事評価、給与水準などのデータを分析にかけた。そこでわかったのは「比較的小さなチームで、なかなか昇進していなく、パフォーマンスが悪いマネージャーのもとにある社員」が離職率が高い、という事実。そこで、この企業は、従業員のスキル開発やマネージャーのスキル向上に投資することを決定し、離職率を下げることに成功した。ここでのポイントは「給与水準」が一番の要因でないということ。それよりは、しっかりとしたマネージャーのもとで、自分がきちんと成長できているか、というのが重要というのは大切な洞察といえる。

人事領域におけるデータ分析の活用は、経営においていま一番注目されてるテーマの一つ。米企業はファイナンスやマーケティングに比べ、データの取れない人事領域は後回しにしてきたけれど、様々な形でデータ取得できるプラットフォームが整ってきたので、一気に焦点が当たっている。今後も随時触れていきたい。

優れたプレイヤーがマネジメントを嫌うわけ

f:id:nori76:20180106005405p:plain

僕は様々な部署のマネージャーとやり取りがあるのだけれど、プレイヤーとして優れた人ほど、マネジメントの立場で数字を管理したり、人を方向づけたりすることを、どこか「純粋でない」仕事と思っているなと感じる時がある。それはそれで一つの見識と言える。一方で、管理職の立場になったら、人をマネジメントすることから逃げるわけにんいかないので、ここは壁になってくる。

もちろん、一生プレイヤーでやる、というのも不可能ではない。ただ、優れた人材はやはりマネージャーとしての役割を会社から期待されるし、その仕事をどう本質的に捉えて面白さを見つけていくか、というのはキャリア構築上避けられない。

優秀な人がマネジメントの仕事を好まないのは、誰かに仕事を「やってもらう」(もしくは「やらせる」)側面をどうしても含むからなんだろう。優秀な人はマネージャーから何かを「やらされる」ことを好まないし、誰の力でもない自分の力で成果を出してきた、と自負を持っている場合が多い。なので、いざ自分がマネジメント側になった時にどうしてもそこに違和感を感じてしまう。

結果として、メンバーを放置していたり、自分の成功モデルでメンバーを詰めまくるマネージャーなどが生まれる。当然のことながら、それは長期的に組織が成功するやり方でないので、パフォーマンスがあがらない組織を前にして、彼等は苛立ちを募らせていく。

さらに、そういうマネージャーを上位マネジメントが、プレイヤーとしての優秀さに遠慮や尻込みしてきちんとマネジメントを教えられないと、結果的にもっと不幸なことになる。彼等はマネジメントというのが改めて学ぶ必要のあるスキルであることをうまく認識できず、プレイヤー時代の成功モデルを組織にそのまま持ち込もうとして失敗していく。残念ながらこういう例は多く見てきていて、結局マネージャーとして実績を残せないままプレイヤーに戻っていく人も多い。

また、マネージャーから適切なマネジメントを受けられないことは、組織のメンバーにとっても不幸なことになる。よくあるのは、プレイヤーとして優秀なマネージャーが、難しい仕事を自分で巻き取ってしまうこと。メンバーの実力を信じきれなかったり、育てる手間を面倒と感じるがゆえに、彼等は自ら仕事を推進してしまう。それはメンバーの成長のチャンスを奪うことになり、結果的にマネージャーにとって一番欲しい「優秀なプレイヤー」が生まれてこない悪循環に陥っていく。

こうした残念な例は本当に多い。「優秀なプレイヤー」だった人をうまく説得するのはとても骨が折れる難しい仕事なのだけれど、マネジメントの巧拙が業績を決めるので、嫌われても仕方ないなと思いながら彼等と向かいあうのだった。

 

プロフェッショナルマネジャー  ?58四半期連続増益の男

プロフェッショナルマネジャー  ?58四半期連続増益の男

 

 

なぜ目標を立てることが成功の秘訣なのか~産業・組織心理学から読み解く

 

産業・組織心理学エッセンシャルズ

産業・組織心理学エッセンシャルズ

 

 今日は最近じっくり読んで勉強しているこの本のご紹介。

経営管理の仕事をしていると、組織や人のマネジメントに長けているマネージャーとそうでないマネージャーがいることに気づく。そして、マネジメントが得意なマネージャーは必ず何かしらの「方法論」を持っている。僕もマネジメントの経験を積むにつれて、そういった「成功モデル」をいくつか持っている。これらの方法論の理論的背景を勉強したいなと思っていたのだが、この本はまさにその要望にぴったりで、非常に勉強になる。

紹介したい理論はたくさんあるのだけれど、この記事ではまず「目標達成理論」に触れたい。

現実の多くの仕事は達成が困難で報酬も不十分である。期待理論では動機付けの低いこのような仕事でも、なぜ人は努力するのか、これを説明し予測するのが目標設定理論(goal-setting-theory)(Locke & Latham, 1990a)である。目標設定理論では、明確で困難な目標を設定した場合、人は強く動機づけられ高い業績をあげると考える。「産業・組織心理学エッセンシャルズ」 p20

ここのポイントは「明確で困難な目標」というところで、「30分で10問」という目標の方が、「30分で2問」といった簡単な目標、「最善をつくそう」といった曖昧な目標よりも業績を高める、という例があげられている。

さらに、ただ目標を立てるのでなく「必ず実現しなければならない"コミットメント"を必要とする目標」とすることも重要であるとされている。例として「今年の利益目標は1000万円」でなくて「今年中に1000万円の借金を返さねば倒産する」といった目標設定が効果的であるとされている。

この2つのポイントは、アメリカ企業にいると非常に頷けるところで、よく「ストレッチ」という言葉で表現されている。売上や利益、といった目標に限らず、まず「ストレッチ」された難易度の高い目標を具体的な数字と共に「ターゲット」として設定し、責任者に達成を強く迫っていく、というのはアメリカ企業のマネジメントの「基本」と言えるくらい当たり前の手法になっている。

さらに、上の例にある「借金を返さねば倒産する」という目標にコミットさせる部分は、アメリカ企業だと「達成しなければクビになる」というプレッシャーがあたる。もちろん達成しなければ「必ず」クビになるわけでないけれど、クビになったり、役割を外されるかも、という可能性は常にあるので、それは社員に「コミットメント」を促す仕組みとして機能していると言える。

この目標達成理論に基づいた高業績サイクル(Locke & Latham, 1990b)というモデルも非常に面白い。

明確で困難な目標が業績を高めるのは努力に加え、目標が努力だけでは実現できないので新しい方略・技術の考案や学習が促進されるからである。やさしい目標では努力の集中や方略の考案の必要がなく、曖昧な目標では何をどこまですべきかの基準が明確でないので業績が高まらないのである。同上 P21

これは非常に重要なポイント。明確で難しい目標を「立てることによって」イノベーションが生まれ、それが成果に結びつく、というのは多くの含意がある。イノベーションというと、イノベーションの内容に目が行きがちだけれど、まず目標を立てることが「どうやったらそこにたどり着けるか?」という試行錯誤を引き起こし、その繰り返しが結果的にイノベーションを生む、というのは、確かに成功の秘訣になっている事例が多い。

例えば、テスラもまさにそのやり方をとっている。イーロン・マスクは、まず「明確で困難な目標」を明示した。高級車のロードスターからスタートし、モデル S & Xを経て、モデル3でマス・マーケットに進出する。EVの量産化には懐疑的な声が大きかったが、この「明確で困難な目標」に沿って突き進んだ結果、400万円クラスのモデル3の発表にまで漕ぎつけ、あっという間に40万台に迫る予約を獲得した。

f:id:nori76:20160616194713p:plain

さらに、この「高業績サイクル」を支えるものとして「動機づけ」の重要性が論じられている。

目標設定理論の想定する行動は、実現可能性が高く価値のあるものをめざす期待理論の想定する行動ではない。この行動のめざすものは外的な報酬ではなく自分自身に対する内的な評価の高まりである。(中略)この動機づけによる行動では、達成できない場合でも成果のレベルは高くなるので必ずしも失敗とならない。また、挑戦したこと自体や努力の過程で知識や技術を身につけたことが内的報酬となるので、達成できないことが必ずしも大きな不満足をもたらさないという特徴がある。同上 P22

これまたとても頷けるポイント。金銭など外的な報酬でなく、自分が成長している、という手応えや実感こそが内的な報酬として人々を動機づける。これは多くの人が思い当たる経験を持っているのではないだろうか。

僕も自分が一番成長したと感じ、深い充実感を感じていたのは、前職でCOOから毎日のようにストレッチ気味の経営課題を与えられて、そこに徹底的に没入してベストの解を出すべく奮闘していた時。彼は厳しい課題を突きつけてくるだけでなく、フィードバックも常に与えてくれて、うまくいけば褒めてくれたし、うまくいっていない時は示唆や洞察を与えてくれた。朝起きてから夜寝るまで、経営課題が頭を離れることはなかったけれど、そこでの挑戦や学びは何よりのモチベーションとなっていた。

行き過ぎた金銭的報酬が、社内のインセンティブ構造を歪め金融危機の一因となった、と欧米の金融期間は危機後に厳しく批判された。それ以来、欧米企業では、金銭的報酬でなく内的報酬こそが重要だというのが、Googleなどテクノロジー企業の成功と合わせて強調されはじめている。その流れにおいても、これらの心理学の理論モデルは非常に興味深いと思う。

「ダメならクビ」がハイテク産業の勢いを支えている理由

f:id:nori76:20160614125555p:plain

いま一緒に仕事をしている事業部長はなかなか含蓄のあることを言うのだけれど、この前こんなことを言っていた。

僕のポジション(シニア・ディレクター)って、運や政治に左右されることも多いから、急にポジション失うこともよくある。それはしかたないのよ。だからさ、きちんと組織を作って、人を育てて、組織の成功を導く「モデル」とか「文化」を作るのがやりがいだよね。

 こういうことをさらっと言えるのはカッコよい。実際のところ、アメリカ企業でディレクター以上(日本企業の執行役員レベル)になり、しかも事業責任を担う役割についていれば、業績が2四半期連続で悪ければほとんどアウトで、たいていの人はクビになるまえに他の仕事を探し始める。また、当然ながらアメリカ企業、特に大企業には社内政治が多かれ少なかれ存在するので、同じ業績を出していても経営陣の評価が異なってくることもよくある。

ダメなら即クビ、というのは厳しく聞こえるかもしれないけれど、産業全体で成長が続いているハイテク産業は、労働市場の流動性が高く、新しいチャンスは外部にいくらでもある。なので、自分のスタイルで業績を残せそうにないなと思えば、彼等はためらいなく会社を辞めて次の機会を求めていく。

この構造の利点は2つある。まず労働市場の流動性が担保されているので、事業責任者や管理職のレイヤーで新陳代謝がきちんと起きる(起こせる)。簡単に言えば、ダメな管理職が重要なポジションで滞留することを防げる。特に、アメリカ企業の経営モデルの場合は、組織の業績はマネジメントの巧拙にかなり依拠しているので、この「新陳代謝」は企業経営において非常に重要なポイントと言える。

以上は雇用者側の視点で、雇われる方にとってもメリットはある。それは、上記した事業部長のように自分の「やりたいこと」を追求できるという点。彼が触れているように、自分がきちんと社内で評価されるかは、運や社内政治にも大きく左右される。ならそこに拘泥しないで、自分がこうしたいと思うビジネスを追求しよう、となる。

実際のところ、いま僕が所属している会社でも、非常に優秀で業績をあげているディレクターが、自分の上司が変わったらすぐ辞めるという例は世界中で頻繁にある。上記したように、ハイテク産業はあちこちにチャンスがあるので、自分が「やりたいこと」が自由にできなそうなら、すぐ他社に移っていくわけである。

もちろん、こういう風に考えず、社内政治をうまく乗りこなして業績があまり出ていないのに居残る人もいる。ただ、全体としてそういった人が安穏としていられない環境と構造があり、それがハイテク産業の勢いを支えていると感じている。

日本的雇用慣行を打ち破れ

日本的雇用慣行を打ち破れ

 

 

能力主義と企業社会 (岩波新書)

能力主義と企業社会 (岩波新書)

 

 

ラオスの村を訪れた時のこと

f:id:nori76:20160608234052p:plain

僕は会社でつい近くの人と雑談してしまうんだけど、今日なぜか大学時代のNGO活動の話になった。

ちょうど「国際援助」というのが日本でも盛り上がりを見せており、国際政治における新しい「アクター」としてNGOが注目を浴び始めたころだった。僕もあるNGOによく顔を出していて、2年生の夏に「スタディーツアー」で、彼等が支援しているラオスの村を尋ねることになった。

今日雑談しながら思い出したのは、そのラオスの小さな村に実際滞在して支援活動を行っていた一人の熱い若者について。

いったい彼はなぜ辺鄙なラオスの村に、NGO職員として辿り着いたのか?

彼はSFCを卒業して、ある大手の石油会社に勤務していた。働き始めて数年が経った頃、阪神大震災が起きて彼は発作的にボランティアに向かう。そのまま彼は会社を休み、ボランティア活動に必死に従事した。しばらく活動を続けたあと、いつまでも仕事を休むわけにもいかない彼は東京に戻ってくる。

そこで彼は部屋に戻り、温かいシャワーを浴びる。そこで彼はこう思う。

「被災地では今も多くの人が苦しんでいる。でも俺はこうしてきれいな部屋で、温かいシャワーを浴びてほっとしている。矛盾じゃないのか」と。

そして、彼はそのまま会社を辞め、ボランティア活動に戻っていった。その後NGOに辿り着き、ラオスの小さな村に「持続的な農業」支援を行う職員として派遣された。

村で会った彼は流暢なラオス語で村人と会話し、ツアーに参加した学生たちに熱く語りかけてきた。

「この村にはね、近代国家が収奪し、破壊してきた伝統的な文化が残ってるんだよ。彼等が代々受け継いできた農業は守られるべきなんだ」

「僕はね、このラオスでの活動が終わったら、日本で有機農業をやるつもりなんだよ。農業からあるべき社会の姿を考えていきたい」

今でも、そうまくし立てる彼の目を覚えている。熱気に満ちた語り口。派手に手振り身振りを加えながら、彼はこちらをきっと睨みながら話しかけてきた。その眼差しは本当に真剣だったけれど、その奥にはどこか寂しさを感じさせた。

大学卒業後はすっかりそのNGOにも顔を出さなくなってしまったので、彼が、その後どこで、なにをやっていたかは全く知らない。彼は、自分の信じるところに従って、あのこちらが気恥ずかしくなるくらいの真剣さで、有機農業をはじめたのだろうか。それとも全く違うなにかをやっているのだろうか。

僕は「国際援助」とは程遠いビジネスの世界で15年ほど過ごしてきた。でも、たまに、NGO活動を通じて出会った、多様で、真剣で、そして少し変わった人達のことを思い出す。そして、その頃の自分がなにを真剣に追い求めようとしていたのかを考える。

米投資銀行の「Google化」について

next.ft.com

ゴールドマン・サックスの新卒応募が25万人を越えた、というFinancial Timesの記事について触れたい。

まず、この記事の背景にあるのは、アメリカでは金融危機後の規制強化と業績不振、高額報酬への世間からの強い批判、極端な長時間労働、などを理由に、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった投資銀行の労働市場における人気が落ちてきているということ。

逆に人気が高まっているのはハイテク業界。Google, Facebook, Amazonといったハイテク業界の中心プレイヤーから野心的なスタートアップまで、エンジニアを中心に優秀な人材を高額の報酬で奪い合っている。さらに、Googleが先鞭をつけた至れり尽くせりの福利厚生やお洒落なオフィス、そしてなにより従業員の「自由」や「イノベーション」を尊重する企業文化が、多くの優秀な若者を引きつける要素になっている。

f:id:nori76:20160607165555p:plain

例えばハーバード・ビジネススクールの卒業生の進路を見ると、この流れははっきりしている。上にあげたグラフ*は2011年と15年の卒業生の進路を比較したグラフだが、11年には39%が金融業界(Financial Services)に就職していたのが、15年には31%と8%も減少している。

一方でハイテク業界(Technology)は、逆に11年に11%だったのが、15年には20%と9%も増加している。つまり、金融業界の減少分がそのままハイテク業界に移ったことを表している。

(なお、コンサル業界が24%と安定した人気を誇っているのも興味深い。コンサルティングへの安定した需要、高い給与水準、「知的」職業としての面白さ、などは高学歴層には依然として魅力を保っていると言える)

こうした「不人気」に危機感を感じた金融業界は、過剰な長時間労働の是正パフォーマンスレビューの廃止サバティカル休暇の提供、など「Google Model」を意識した従業員待遇の改善による魅力の向上に努めてきた。FTの記事で触れられているように、そもそも金融業界の「不人気」というのは誇張されすぎてきた面はある。一方で、こうした施策によって就職先としての魅力が改善してきていることは事実だろう。

また、FinTechの潮流はハイテクと金融の接点に新たな産業を興しつつある。AI, IoTが生み出す大きな変化を考えると、テクノロジーという「横串」と既存の産業との接点に「魅力的」な仕事が産まれてくる、というのは今後も続いていく流れで、そこが世界中から優秀な人材を惹きつけ続けるアメリカの強さであろうと改めて思う。

 *Source: AT-A-GLANCE Recruting, Harvard Busines School
http://www.hbs.edu/recruiting/data/Pages/at-a-glance.aspx?tab=career&year=2015
http://www.hbs.edu/recruiting/data/Pages/at-a-glance.aspx?tab=career&year=2011

 

最高の仕事ができる幸せな職場

最高の仕事ができる幸せな職場

 

 

How Google Works

How Google Works

  • 作者: エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2014/10/17
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログ (7件) を見る
 

 

ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える

ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える