グローバル経営の極北

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ビジネス系オススメ情報まとめ!経営学からスタートアップ指南書まで

定期的にビジネス系の情報でおすすめなものを紹介していきたいと思います。今日は、経営学輪講、スタートアップ指南書、そしてアントレプレナーシップの講義、の紹介です。

赤門マネジメントレビュー経営学輪講

AMR経営学輪講

この前お会いした経営学の博士課程の方に紹介頂いたサイト。東京大学の「赤門マネジメントレビュー」内にあり、大学院の「経営文献購読」の授業をもとに、海外の経営学に関する論文の紹介および批評的な「読み」を行った論文がたくさん紹介されています。

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実際の経営でも使えそうな面白い論点のものが多いですし、どれもPDFで「無償」でダウンロードできます。

経営学は経済学と比べてなかなか全体像がつかみにくいですが、こうして論点ごとに専門家の知見に触れることで、実務への応用についてアイディアも沸いてきます。

さっと眺めて面白そうなものを5つピックアップしてみました。皆さんもぜひ面白そうな論文を読んでみてくださいませ。

なぜイノベーションは拡散しないのか?:専門家組織のもつ境界―経営学輪講 Ferlie, Fitzgerald, Wood, and Hawkins (2005)

 ■官僚制はイノベーションを阻害するのか?―経営学輪講 Thompson (1965)

専門職および専門職集団におけるステータス決定要因―経営学輪講 Abbott (1981)

変革力マップとInnovator's Dilemma: イノベーション研究の系譜―経営学輪講 Abernathy and Clark (1985)

デザインの新奇性は製品の売り上げに貢献するのか?―経営学輪講Talke, Salomo, Wieringa, and Lutz (2009)

SaaS スタートアップ 創業者向けガイド

SaaS スタートアップ 創業者向けガイド - セールスフォース・ドットコム

セールスフォースの創業時からのメンバーを中心にまとめられたSaaS(Software as a Service)のスタートアップを作るための「指南書」です。私は英語版を読んでいたのですが、いまは日本語訳まで提供されておりさらに利便性が増しています。

これは本当にすばらしい内容で、サブスクリプションモデルがなぜ画期的なのか、というビジネスモデルの説明からはじまり、売上10億円企業を作るための必要なステップ、成長のためにどう営業組織を作りあげていくか、などなど実例を踏まえながら具体的に説明されていますし、カスタマーサクセス、というSaaSを特徴づける重要な概念についても触れています。

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個人的には「サブスクリプションモデル」がなぜ経営モデルとして「画期的」なのか、というのをきちんと理解するのは、現代の経営で非常に重要と考えており、その部分の記述には頷くことしきりでした。

アドビの経営変革についての記事でも、この「サブスクリプションモデル」の重要製については触れているので、ぜひ読んでみてください。

一方で、クラウド+サブスクリプションモデルの場合、契約期間内に顧客が製品に満足しているかが契約更新を決めます。なので、販売者側にも、普段から顧客が満足する品質やサービスを提供し続けるインセンティブがあるわけです。

この構造に加えて、クラウドは頻繁な製品アップデートを可能にしますから、顧客の要望にきちんと耳を傾けながら、短期かつ頻繁なアップデートでその要望を叶えていくことが可能になります。

Amazon AWSが圧倒的な成功を収めているのも、基本的にはこの構造によります。クラウド、というとテクノロジーの観点から語られることが多いですが(またそれが重要なのは間違いないのですが)、より本質的には上記のように「顧客価値の向上」にごまかしなく向かい合える、というのが実は一番重要なポイントです。

また、これはアメリカのハイテク業界のいいところなのですが、 この「指南書」のように、成功の秘訣や皆が陥りがちな失敗を、具体的な自らの体験を踏まえ、しかもそれをモデル化してオープンに伝えることが当たり前になっています。

こうした「情報共有」の文化が、シリコンバレーで次々と新しく、画期的で、世界に通用する企業が生まれてくる「エコシステム」を支えているんだなと、改めてこの資料を見て思います。

アントレプレナーシップ

次は、このブログではおなじみCourseraの紹介です。USA TodayのMBAランキング1位のペンシルベニア大学ウォートン・スクールの「アントレプレナーシップ」の授業です。

オススメのメールが送られてきたところで、まだ私も受講していないのですが、どれも面白そうです。

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一つ目は「機会を見つける」です。良いアイディアをいかにビジネスの「機会」に変えていくか、について概説されています。

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二つ目は「スタートアップを立ち上げる」です。「機会」を見つけて、プロトタイプまで作ったら、次はいよいよスタートアップを「立ち上げる」必要があります。組織をどう作るか、その注意点はなにか、というところまで詳しく触れています。

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三つ目は「成長戦略」です。事業を立ち上げて最初にぶつかる壁は、ビジネスをどう「スケールさせるか」です。これについて、売上機会をどう発掘するか、顧客をどう獲得するか、需要をどう予測するか、などノウハウについて具体的に触れています。

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四つ目は「ファイナンスと収益性」です。事業を成功させるには「ファイナンス」の側面は非常に重要です。損益モデルをどう組み上げるか、エンジェル、VC、クラウドファンディング、など投資をどう呼び込むか、などについてノウハウがまとめられています。

これらはSpecializationの形で提供されており、月額79ドルですが、Certificationが必要なくそれぞれのコースを受講するだけならば無料です。そのやり方は以下の記事でまとめているので、参考にしてみてください。

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ポール・オースター「幻影の書」を読む。そこで示される希望とは。

昔はてなダイアリーを書いていたのですが、それを改めて読んでいたらこの書評を見つけました。ポール・オースターの「幻影の書」についての感想。とても気に入っている文章なのでこちらに載せてみます。ぜひご一読くださいませ。

幻影の書 (新潮文庫)

幻影の書 (新潮文庫)

 

ゆっくりと読み進め読了。ストーリー性が高い上(当然ながら)柴田訳は見事な品質を保っていて心地良い読書体験だった。オースターの物語は、まずオースターという全体を制御する人物がいて、一方でその作品内で動きだす登場人物がそれぞれ固有の物語性を持って人生を生きる(そこには喜劇あるいは悲劇がある)、という入れ子の構造が細部まで意識された形で構築されているから安心して読むことができる。柴田氏がオースターは作品内作品、今作でいうとヘクターの映画描写が素晴らしい、と言っているがそういった明示された入れ子構造だけでなく、上記したように物語全体を貫く入れ子構造がオースターの特徴だと思う。

そして、オースターがこの日本にいる僕の心を温めてくれるのは、彼が信じている「物語」というものの力だ。

ヘクターの自伝を7年間書き続けているアルマという女性。彼女はデイヴィッドをヘクターに引き合わせようとする。主人公とアルマはこの不思議な邂逅を経て近づいていく。ヘクターの元にデイヴィッドはたどり着き彼と言葉を交わし親密な関係を築くが、翌日の未明ヘクターは静かに息を引き取る。長旅の疲れからそのことを知らずに眠っているデイヴィッド。アルマは彼のベッドの横で彼が目を覚ますのを待っている。そして彼が目をさました時、彼女は死についてすぐに触れない。まずキスがあり、親密な言葉があり、彼にコーヒーを渡す。

ヘクターについてすぐ話し出さないことによって、彼女は私に、物語の結末部分の中に自分たち二人を溺れさせる気はないことを伝えていたのだ。私たちはもう自分たち二人の物語を始動させたのであり、その物語は彼女にとって、もうひとつの、彼女のこれまでの人生そのもの、私と出会う瞬間に至る全生涯そのものだった物語に劣らず大切だったのだ。

アルマはヘクターの物語を紡ぐ事で、自分の人生を生きてきた。人の物語に仮託することで生起する人生。深く絶対的な孤独を癒す手段としてそれはあっただろう。しかし、ヘクター・マンという男の人生を通じて彼女は別の物語の回路と繋がるきっかけをつかむ。それがデイヴィッドであり、ここに引用したようにアルマはその物語をはっきりとした意志を持って始動させようとする。

では、ここで新たに生み出された物語は自由意志の勝利だろうか。簡単にそうとは言えないことは、オースターは残酷にも物語のラストで示す。アルマは自分の意志で確かに物語を始動させたように見えた。しかし、その物語はどこまでもヘクター・マンを巡るものだった。その桎梏が彼女を縛りつけ、彼女の孤独からの解放は不首尾に終わる。

けれど、アルマの残した痕跡はデイヴィッドの心に残りその物語は引き続き彼の中で生きる。オースターは簡単に希望を示してはいない。ただ物語の持つ力と時としてそれが持つ残酷さ、そしてそこからの回復、という転回を今回もまた見事に描いていると思う。安易な内省に留まらないオースターの示す希望に少し励まされたりする。

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「ワトソン不振」は「イノベーションのジレンマ」の観点から捉えておきたい

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この記事に対して「ワトソンとAWSを比較するのは適切でないのでは」というコメントを幾つか頂いたので、それに対しての見解をツイートしました。まとめておきます。

IBMが直面している状況と、それに対して進めている事業構造変革の動きは、「イノベーションのジレンマ」に大企業はどう対応すべきか、という論点について学びの多い事例です。今後も定期的に触れていきたいと思います。

グローバル企業の経営変革を「物語」から学ぶ「臨床医」としての経営管理

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 ※この記事はフィクションです。筆者の経験を下地にしていますが、設定、登場人物、数字などは全て実際のものと異なります。

過去noteで連載しよう、と試みつつ一回で挫折した、、「V字回復の経営」風に物語仕立てでグローバル企業の経営変革を描いた話があるのですが、少し修正した上でこちらに載せてみます。

響き渡るCOOの怒号

「この数字はいったい何なんだ。しかも、いま何が起きているのか全くわからないじゃないか。お前達はふざけてるのか?」

Sysmetic社日本法人COOのSteveの怒号が会議室に響きわたる。私が上海から帰国した時、所属部門の業績は低迷しており、経営陣のストレスは高まっていた。

世界各地でCOOを歴任してきたSteveは、2012年の1月に日本に赴任してきたばかり。経営のプロである彼から見て、当時の日本法人の状況はまさに「悲惨」な状況だった。

まず当時の事業環境を概観しよう。

売上(Revenue)は金融危機後の需要急減以降下がり続けていた。2009年に40.2億ドル(約4,023億円)だった売上は、2011年には31.3億ドル(約3,125億円)まで2割以上落ち込んでいた。

売上の減少に伴い、利益水準も大きく影響を受け、税引き前利益(PTI)は、09年の20%から11年には13%まで下がっていた。競合の日本企業に比べると依然として十分に高い水準だったが、本社が期待するのは20%という数字だった。

なにより深刻だったのは契約高(Bookings)の減少だった。2009年に38.2億ドル(約3820億円)だった契約高は2010年に33.2億ドル(約3320億円)と急減。その減速は2011年も継続し12年には29.7億ドル(約2970億円)まで落ち込んでいた。

サービス事業は契約時に売上が計上されず、コンサルティングやシステム開発の作業の進行と共に売上が計上されていく。つまり、契約高は将来の売上の先行指標の意味を持つ。これが下がり続けているということは、新しい契約が十分に増えておらず、過去の契約を食い尽くしはじめているということを意味した。

そして、契約高の減少は実際のところ稼働率の低迷を招いていた。特にBillable稼働率(顧客向けの仕事の稼働率)の低迷が深刻で、ターゲットとする70%に対して、60%前後の実績が続いていた。コンサルタントやエンジニアがアサインできる顧客向けの仕事が見つからないため、仕方なく社内のプロジェクトでお茶を濁す例も多かった。

問題なのは、Sysmetic社員の稼働率が低いにも関わらず、外注先への発注金額は高止まりしていたこと。2011年には11億ドル(1100億円)近くの費用が発生しており、売上に対する比率は35%ときわめて高い水準だった。

背景として、日本特有のシステム開発における多重下請け構造がある。

顧客のプロセスやシステムに精通しているのは外部のパートナー会社で、彼等への発注を減らすことはできなかった。しかし、経営の観点からすれば、社員が低稼働であるにも関わらず、外部発注を減らせなければ、それはそのままキャッシュアウトに繋がり利益を毀損する。実際のところ上記したように、利益率はじりじりと下がっていた。

本当の課題はなんなのか?

こうした状況を一刻も早く脱却することをCOOのSteve、そしてCFOのBradは厳しく各部門長と管理部門に求めた。

そうした背景もあり、冒頭に触れた、私が帰国してはじめて参加した週次の経営レビューは大荒れだった。毎週の業績資料を、私の同僚で管理部門のマネージャーの佐久間が説明し始めるや否や、Steveはその説明を遮って怒鳴りだした。

Steve「この稼働率はなんだ。ターゲットより5%も低いじゃないか。いったいどのチームの誰が低稼働なんだ?この資料じゃなにもわからないぞ」

佐久間「はい、すいません。流通部門で契約が想定より遅れており、アサインする予定だったコンサルタントが稼働できて・・」

Steveは佐久間の発言を再度遮りさらに興奮して怒鳴り散らす。

Steve「??本当にそれが原因なのか??その契約で何人、何時間分の稼働が落ちてるんだ、それは全体の何%を占めるんだ?本当にそれが全体の数字を悪くしてる原因なのか?」
Steve「しかも、この外注費はなんだ。既にターゲットを大幅に超えてるじゃないか。社員は低稼働、外注し放題、で、この散々な業績だ。お前たちはふざけてるのか」

佐久間「申し訳ありません、、すぐ原因を調べて報告します、、」

あまりの荒れぶりに唖然としたが、一方で上海で多国籍の経営陣と同様のレビューをこなしてきた私は、現状の経営管理に根本的な課題を感じ取っていた。

それは、事業の構造を全体として捉える仕組みが構築できていないこと、だった。事業とは、まるで人間の身体のように、それぞれの要素が密接にからみ合いながら全体のシステムを作りあげている。なので、売上、利益、稼働率などの指標を個別に取り上げて好不調を捉えるだけでは、事業全体がうまくいっているかを判断できない。

Steveが佐久間に対して怒鳴ったのは、彼が流通という一部門の一つのプロジェクトという個別の要素で、全体の不調を語ろうとしたことにある。

Steveが知りたかったのは、まず事業全体の構造はどうなっているのか、その構造にもとづいて設定された各経営指標はどういう状況なのか、そして、そこからどういったアクションが導き出されるのか、という点だった。こうしたステップを踏むことで経営の健全性を精査し、その改善を導く具体的なアクションを取ることができる。

優れた臨床医は、血圧や心拍など個々の数値だけを取り出して患者の病状を判断したりしない。複数の定量的なデータをもとにし、さらに、往診で得た定性的な情報も加味し、総合的に患者の病状を判定する。経営管理も同様で、個々の経営数値だけ取り出して事業の真の課題を発見することはできない。

Steveの収まらない怒りを眺めながら、私は「臨床医」としてこの事業の構造をどうやったら正しく掴み取れるだろうかと考え始めていた。

【経営ポイント】
事業は、人間の身体のように、個々の要素が密接に絡み合いながら全体の構造を形作っている。よって経営を正しい方向に導くには、優れた臨床医のように、定量データと定性情報を組み合わせながら、総合的に事業の状況を捉える必要がある。

 

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「ワトソン」は不調?IBMとMITの共同研究を読み解く

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IBMとMITがAIの共同研究プロジェクトに、今後10年間で2億4千万ドル(約260億円)を出資すると発表があった。

「MIT-IBM Watson AI Lab」と名付けられた研究所で、ニューアルゴリズム、ハードウェア、ソーシャルインパクト、ビジネス活用の4領域に注目するという。

上記の記事でも触れられているように、気になるのはIBMのワトソン事業の状況。

IBMは21四半期連続の減収という苦しい業績が続いているが、ワトソンを核とした「コグニティブ」事業に大きく投資をして、事業の再編を狙っている。

一方で、本当にワトソン事業がIBMを救うのか、という疑念は投資家の間で広がっている。

例えば、ヘルスケア情報関連のメディアであるStatが癌研究での活用が期待されたワトソンが思ったような成果を挙げられていないことを詳細にレポートしている。

インタビューを受けた、ワトソンを導入した病院の医師は「ワトソンはまだ開発途上で、実際の医療に活用するまでは先は長い」と回答している。

また、継続的に医療関連の最新データをワトソンに読み込ませ続ける必要があり、エンジニアや医師の負担が大きいほか、現場の医療活動にとって意味のある「洞察」はなかなか出てこないと記事ではまとめている。

この苦戦を裏付けるように、直近の2017年Q2の決算では、ワトソン事業を含むコグニティブ・ソリューション部門が対前年比1%の「減収」となった。これは「異例」のことだ。

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https://www.ibm.com/investor/att/pdf/IBM-2Q17-Earnings-Charts.pdf

というのも、ハイテク企業では大きく投資する成長事業の場合は、前年比+30-50%の勢いで伸びることが通常となっており、まだ立ち上げ段階とはいえ、なかなかワトソン事業が想定どおりに立ち上がっていないことを示唆する。

例えば、AWSは前年比+50%レベルの成長を一貫して続けてきている。

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https://www.nextplatform.com/2017/02/03/will-aws-move-stack-real-applications/

さらに、直近の2017年Q2の決算では、四半期の売上が41億ドル(約4500億円)となっており、年間売上は1兆5千億円を優に越えるペースとなっている。

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http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=97664&p=irol-presentations

さらに、課題なのは前掲のForbesの記事でも触れられている人材面。

経済メディア「バロンズ」はKisnerの次のような発言を記事内に引用した。「人工知能領域では人材の不足が大きな課題だ。我が社のアナリストらの見立てでは、IBMがAI人材の獲得戦線で勝利を収める見込みは少ない」

たしかに、Google、Facebook、Microsoft, Amazonといった「巨人」達が全てAI領域に注力しており、彼等との人材争奪戦に勝つのは容易なことではない。

よって、今回のMITとの共同プロジェクトについては、労働市場での直接の人材争奪戦ではやや分が悪いIBMが、MITというアカデミアの人材に深くアクセスすることで、なんとか活路を見出したいと考えるのは間違いではないだろう。

なお、IBMの株価はここ2四半期の低調な業績により大きく下げている。

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アクセンチュアが絶好調 16年国内ITサービス市場ベンダーランキング(IDC発表)

IDC Japanが2016年の国内ITサービス市場のベンダー売上ランキングを発表している。

2016年の国内ITサービス市場は5兆4,515億円で前年比成長率は1.4%となっており、成長はやや鈍化してきている。上位陣はおなじみの顔ぶれで、富士通、NEC、日立製作所、NTTデータ、IBMと続く。

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上位5社の過去3年の売上成長率で整理すると以下の通り。富士通が+2.2%と最も大きく、NTTデータ +1.5%、NEC +0.3%と続く。日立製作所とIBMは苦しく、それぞれ-0.9%、-0.5%とマイナス成長になっている。

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この売上上位のリストにはあがっていないけれど、アクセンチュアは非常に好調で、IDCのプレスリリースでも以下のようなコメントがある。

前年比売上成長率が最も高かった大手ITベンダーは、前年同様、アクセンチュアでした。アクセンチュアは、参考資料に掲載した上位7社には含まれていませんが、すべての産業分野で、プラス成長を遂げ、ITサービス事業の全社的な拡大が継続しています。(強調筆者)

この業界にいると、アクセンチュアの好調はやはり聞こえてくるのだが、直近の2017年Q3の業績発表でも、以下のように日本の好調に触れている。

And in Growth Markets, we delivered another excellent quarter, with 13% growth in local currency, led by very strong double-digit growth in Japan, as well as double-digit growth in Australia and Singapore.

次に「成長市場」ですが、現地通貨ベースで前年比+13%とすばらしい実績でした。特に「非常に強く」二桁成長を遂げた日本と、やはり二桁成長となったオーストラリア、シンガポールがこの実績をドライブしてくれました。

上流の戦略からシステムの実装、そしてアウトソーシングまでEnd To Endの幅広い領域で大企業顧客を支援してきた実績と、その経験による産業ごとの知見の蓄積や顧客との関係構築、デジタルやアナリティクス領域への投資、といったことが合わさって、アクセンチュアは当面は力強い実績を継続すると思われる。なお、同様の理由からデロイトやPwCのコンサルティング部門の好調も継続しそう。

一方でIBMは苦しい。IBMのサービス部門は歴史的に自社のメインフレームと紐づく領域が強かったこともあり、そこをAWSをはじめとしたクラウド勢に侵食されているし、自社のソフトウェアやハードウェアを持つことが、「中立」の立場から顧客にサービスを提案できるアクセンチュアやデロイトに比べて逆に弱みになっている部分があると思われる。

なお、マッキンゼーなどの戦略コンサルも含めた業績については、少し古くなるが以下に過去まとめているのでぜひ参考にしてほしい。

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アドビが「デジタル変革」コンサルの提供を開始:「最上流」からのデジタル化支援の競争は激化

アドビがデジタル変革支援に進出

デジタル・マーケティング事業を展開しているアドビが、「デジタル・ストラテジー・グループ」を新設し、デジタル変革を支援するコンサルティングの提供を開始すると発表した。

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提供サービスとしては、業界別のベスト・プラクティスの展開、カスタマージャーニー設計支援、デジタル化のパフォーマンスや組織成熟度評価、ROI評価など「戦略コンサル」としてはオーソドックスなメニュー。

ポイントとしては、SaaSのベンダーが顧客のデジタル戦略策定という「最上流」のところに入っていこうとしているところ。

この「デジタル戦略策定」の部分は、マッキンゼーなどの戦略コンサルティングファームから、アクセンチュアやIBMといった戦略xITを得意としてきた企業までが狙っている競争の激しい領域になっている。

例えばマッキンゼーは、デジタル・マッキンゼーというオファリングを展開している。

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また、ボストン・コンサルティング・グループは、BCGデジタルベンチャーズ、という名前で、デジタル領域におけるベンチャーキャピタル的動きとコンサルティングを組み合わせた面白い試みをしている。

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さらに、アクセンチュアも、アクセンチュア・デジタルの名前で、デジタルマーケティングやアナリティクス領域のオファリングを強化している。

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このように、デジタル変革支援のコンサルティングは、クラウドベンダーから戦略コンサル、総合系コンサルまで各社入り乱れた状況になっている。

日本のデジタル変革支援の文脈

日本の文脈に触れておくと、日本企業は一般的に「戦略的かつ全社的に」マーケティング施策を設計、実行していているところが少なく、いきなり「デジタル化」をと言われてもなかなか具体化できる企業が少ない。

そのため、クラウドベンダーにとっても、デジタルマーケティングを推進するソフトウェアをそのまま売ろうとしても顧客側にその準備ができていないケースが多い。

アドビの今回の「デジタル戦略」のオファリングもその課題に対応しており、ベンダー自ら上流の戦略構築に入っていくことで、その後の自社ソフトウェアの活用に繋げていきたいという思惑があるだろう。

上記したように、この領域は非常に競争が激しく、今後どういった形のコンサルティングが顧客に受け入れられるかを見守りたい。

 

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「怒り」をうまく使って仕事を成功させる秘訣

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「怒り」は、普通ネガティブなものと思われている。けれど、それをうまく「使いこなす」ことで、仕事を成功に導いてくれる場合がある。

「怒り」が自分を変えてくれた

例えば、こんなことがあった。

私が担当事業の翌年度の事業計画作成に関わっていたときのこと。ある経営数値を巡って、アメリカ人のCOOと現場のリーダー達は激しく対立していた。

計画作りの担当だった私は両者の板挟み。アグレッシブな数値を求めるCOOと、現実的な数値を求める現場リーダーの両方から「詰められる」毎日だった。

ある日の会議のあと、COOが真っ赤な顔をして我々を一人一人指差しながら怒鳴った。

「お前たちは何やってるんだ?あいつらをまったく説得できてないぞ。この仕事に本気なのは俺だけじゃないか!!

毎日のように深夜まで、それこそ身を粉にして仕事していた私はここで「キレた」。

「冗談じゃない、こっちがどれだけ本気で仕事してると思ってるんだ。そんなこと言うなよ!!!」

この頃の私はマネージャーですらないただのメンバー。COOは上級役員。外資系であっても(だからこそ)、こんなにあからさまに「怒り」をぶつけることは通常はご法度だ。

しかし、その時の私は本当に真剣に、のめり込んで仕事をしていたので、相手がだれであろうと「仕事に本気でない」などと言われることが許せなかったのだ。

COOはその勢いに驚いたのか、その場で私を叱責したりはせずに、逆にあとで別の日本人役員を通じて「すまなかった」と伝えてきてくれた。

この一件があったあと、私は計画の作成と合意形成に一層邁進し、結果として皆が納得する強い事業計画を作ることができた。

つまり「怒り」が私を成功に導いてくれたわけだ。なにがポイントだったのだろうか。

 腹をくくる

まずは怒りを通じて「腹をくくった」ことが重要。外資系でよく使われるのは「コミットメント」という言葉。

この一件の前の私は、COOとリーダーの板挟みになり、両者の言われるがままになっていた。だから、重要なポイントでどっちつかずになり、計画を前に進めることができていなかった。

つまり、COOや現場のリーダーという肩書きを過剰に尊重したり、恐れたりしていたことで、仕事の本質的な部分である「事業を本当によくする計画を作る」というところに十分にフォーカスできていなかったわけだ。

しかし、COO相手に怒鳴り返す、という「暴挙」で「もう後には引けない、俺がやるんだ」と心の底から思えるようになった。「怒り」というのは、非常に強い感情なので、こうした「強い決意」を支える力となってくれる。

人を引っ張る

一方で 「腹をくくった」だけでは仕事はうまくいかない。次に重要となるのは関係者を「引っ張る力」、つまりリーダーシップだ。

ここでも「怒り」は私を助けてくれた。自分の心の底からの強い感情を持って仕事に挑むことは、他の人にとって、理屈を越えた「迫力」となる。

真剣な場での仕事というのは、論理だけでうまくいくものではない。強い感情を持っていることは、それを直接表現しなくても相手に伝わっていく。

この時も、現場のリーダー達から散々なめられていて、僕の意見など全く聞き入れてもらえなかったのが、心の底に根源的な「怒り」を抱えながら仕事を推進していると、不思議な事に彼等がこちらの意見に耳を傾けてくれるようになってきた。

最後までやりきる

 そして、次に重要となるのは「やりきる力」だ。仕事にコミットし、リーダーシップを発揮しても、仕事は最後までやりきらなければ成果を出すことができない。

ここでも私にとって「怒り」は大きなポイントで、それはストレスの高い、タイトなスケジュールの事業計画作成の仕事を心を切らさずに推進し続ける上での「エンジン」となってくれていた。

私は性格的にはきわめて「負けず嫌い」なので、COOから言われた「お前たちは本気でやっていない」という言葉は心の底から悔しかったし、そんなことを言われてしまう状況になっていることに対する「怒り」も強かった。

そして、この時の思いが「仕事をなんとしてでも成功裏におわらせてやる」という形で自分を動機付けてくれたし、結果として最後まで「やりきる」ことができたのだと思う。

「怒り」に限らず、ネガティブな感情というのは、こちらの記事でもまとめたように、うまく向かい合うことで仕事の質を高めてくれる。ぜひとも自分の性格にあった、感情をうまく活用する方法を見つけ出してほしい。

 

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「職務経歴書長すぎ」日本人の文章の問題点

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職務経歴書に「メッセージ」や「構造」がない

私は仕事柄よく履歴書や職務経歴書を見るのだけれど、そこに「メッセージ」が込められていないものが多くて勿体無いなといつも思う。例えると、商品名しか書いてない広告を読まされているような感じになることが多い。

労働市場では自分は「商品」なので、的確な言葉や描写で自分の経験やスキルを示して、どうやったら「買ってもらえるか」を考えるのが大切かなと。

まあ「誇大広告」という言葉もあるように、職務経歴書をいくら「お化粧」しても自分のスキルが上がるわけではないけれど、まずは文書から自分を「魅力的に見せる」というのは、転職活動においては非常に重要。

そして、より本質的な課題としては、職務経歴書の文章に「構造」がないことがある。実はこれがメッセージの弱さにも繋がっている。この点はすごく強調したい部分。

残念ながら日本では、文書は標準的なフォーマットに則って論理的かつ簡潔に記述すべし、というのを習う機会が大学などでもなかなかない。ゆえに、職務経歴書の場合でも、5ページ以上になる冗長なものも多い。基本は、最大2ページで両面印刷で1枚というのがあるべき姿なのだけれど。。

ライティングを「学ぶ」ことの重要性

やはり、大学できちんとライティングの基礎をみっちりと学べないのは、日本の職業人の弱点になっていると思う。構造的かつ論理的な文章を書ける人が少ないし、そもそも変な表現を使う人も多い。仕事ができる人でも、なんだか摩訶不思議な論理展開と文体を持った文章を書いてきて困ってしまうことも多々ある。

また、就活のエントリーシートの内容にも疑問を感じることが多い。エッセイを課すこと自体は悪くないと思うけれど、エッセイというのは、構造が決まっていないし、その文体を含めて非常に高度な文章力が求められるので、就活における自由記述的な文章で果たしてどうやってそれを評価するのだろうかと思ったりする。

そして、これは日本のビジネス界では、文書作成とは標準的な「お作法」に則ってなされるべき、と認識されてないことを示唆していると言える(これは実は業務の標準化を好まない日本のビジネス界、という課題とも直結していると思う)。

例えば、私がアメリカの大学で学んだことでいまも役立っているのは、このライティングの「作法」を叩き込まれたこと。アメリカの大学の授業では、重要な論点についてエッセイ(小論)を宿題として課されることが多いけれど、この文章は必ずアカデミック・ライティングの構造に準拠していることが求められた。

アカデミック・ライティングとは何か、については、この記事などはわかりやすい。

以下の図が示すように、Introdution - Body - Conclusionが基本の構造で、この構造に則った文章を書くことはアメリカの大学のエッセイでは必須。これ以外は認めない、というところが重要で、これは業務の標準化にも繋がる重要な考え方。

Introdcutionでこの文章で何について論じるのかを明確にし、BodyではIntroductionで呈示した論点を、複数の観点から論理的に説明していく。そして、ConclusionでBodyで論じたことを踏まえて、論点に対しての自分の回答をまとめる。

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 そして、これを踏まえて、職務経歴書であれば、このビズリーチの記事はうまくポイントをまとめている。

Intorductionにあたる「職務要約」や「スキル」で自分の経験や強みをまず要約して伝える。そしてBodyにあたる「職務経歴」の部分で、なぜ自分がそのスキルを持っていると言えるかを、過去の経験をポイントを踏まえて記述することで説得力を持たせていく

そして、結論(Conclusion)として、採用側が職務経歴書を読み終わった後に「なぜこの人を採用すべきか」が文書から理解されるように構造化されていることが重要になってくる。

また、実際に自分でこうした「構造」を意識した文章を書いて練習すると同時に、構造化された優れた文章を読み込むことは良い訓練になると思う。

その一例としては、この「クルーグマン教授の経済入門」を挙げたい。ノーベル経済学賞を受賞し、日本の「リフレ派」にも大きな影響を与えた、アメリカの経済学者のクルーグマンが、アメリカ経済を題材に、生産性や貿易、日本経済、欧州統合など幅広いテーマについて論じた本。

クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)

クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)

 

ある論点について、分かりやすい論理構造と簡潔な記述でその背景や課題、解決の方向性を提示する文章を書く、というビジネスで求められるスキルを、具体的に楽しく学ぶことができるので、ぜひ一読してほしい。

 また、山形浩生氏の訳者あとがきは、ここで読めるのでぜひ。クルーグマンの過去の業績も分かりやすくまとめられているので、一度読んでおくと理解が深まるかと思う。

P. Krugman "The Age of Diminished Expectations" Translator's Note

 

楽しみながら仕事を「やり抜く」コツとは?

  「やり抜く力」を読んでいるけれどやはり面白い

やり抜く力

やり抜く力

 

「人は自分の興味に合った仕事をしているほうが 、仕事に対する満足度がはるかに高い」

「人は自分のやっている仕事を面白いと感じているときのほうが 、業績が高くなる」

マネジメントの仕事をしていていつもぶつかるのは、この「動機づけ」の部分。「この仕事やってて面白い!」という状態にメンバーを持っていけるかが大事なのはわかっているけれど、これは本当に難しい。ほとんどの人は、仕事で「自己実現」したいわけでなくて、ほどほどに稼ぎつつ暮らしていきたいな、というのが普通なのだし。

だから、仕事を「楽しめる」というのは案外難しくて、特に毎日やっている仕事からその「面白さ」を引き出すというのもひとつのスキルと言える。

例えば、私の仕事なら、毎週の稼働率のデータをじっくり眺めてるとコンサルの「生態」が浮かび上がってきてむちゃくちゃおもしろいんだけど、その面白みを共有できる人はとても少ない。

就活でも「好きなものを探そう」というけど、探さなくちゃいけないようなものは「好きなもの」じゃないですよね。好きなものってのは、人になに言われるまでなく、既にやり始めてるわけで。ただ、それを職業に結びつけるまでにはかなりの試行錯誤や覚悟もいるから、そこですよね、論点は。

「やりぬく力」でも、関連する研究を以下のように整理している。

「おとなになったらなにをしたいかなど 、子どものころには早すぎてわからない」
「興味は内省によって発見するものではなく 、外の世界と交流するなかで生まれる」
「興味を持てることが見つかったら 、こんどはさらに長い時間をかけて 、自分で積極的に掘り下げて行かなければならない」

これは非常に面白くて、なにかを「好きである」というのは大事なのだけれど、より大切のはその興味・関心を外の世界に位置づけること、そしてそれを掘り下げること、だということ。

仕事でいえば、どんな仕事でも面白いところはあるので、そこに気づいて自分で工夫して改善して、成果が出てくると、そのループが楽しくてもっともっとはまっていく。ここが分岐点と思う。逆に、この「自ら」はまっていく感覚や経験がない人を変えていくのはとても難易度が高い。

上海から帰国して、マラソンでサブ4を目標に集中して練習したことがあったのだけど、あれは確かに非常に学びが多かった。練習本を読み漁り、毎日の練習にフィードバックしながらタイムをあげていく。最終的に3時間半までタイムを伸ばせてのだけれど、なによりどう「やりきる」のかという点を学べたのが大きかった。

このマラソンの時もそうなんだけど、仕事でも、ポイントは、毎日努力しているんだけど成果が思ったよりはあがらない時に、どこまで我慢できるかなんですよね。そこで我慢すれば後で大きな飛躍が訪れる可能性は高いんだけど、こらえきれない人は多い。

つまり、「やり抜く」体験があると強いのは、成果が出てない時に「焦らない」ことかなと思う。ゴールまでのイメージができているので、まだ中間点でしょ、と動じない。で、試行錯誤しながら粘り強く改善を続けていって、なんとしてでも成果に「たどり着く」。このゴールを手繰り寄せるイメージが重要かと思う。

 他にも面白い論点がありそうなので、読み進めたらまた紹介します。

偉い人と「うまくやる」ための3つのコツ

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私は参謀的な仕事をしてるので、よく「えらい人」と話をします。そこでのコツは「相手の目をみる」「相づちを打つ」「相手の言ったことを適語でまとめる」です。

えらい人は基本的に孤独です。そして話を聞いてほしいタイプです。プライドも高いです。だってえらいんですもの。

だから、まずは全身で聞いていますよ感を出します。でも、ただ聞いてるだけだとバカと思われますから、適語で相手の話を要約する。「そうっ!」って身を乗り出してきたら勝ちです。

と言われてもあまりピンとこない人も多いかと思います。ということで、私がどんな風にやっているかを、最近の役員Tさんとの会話から紹介してみましょう(Tさんの部下のYさんについての会話です)。

ーーーーーーーーーー 

役員Tさん「Yくんはさー、なんだろう全部自分でやろうとしちゃうよね」

私「人に振れない、ですよね」

役員Tさん「そう!だからさあ、この前のあの問題もバタバタしたでしょ」

私「うまく移譲できてない、かなと」

役員Tさん「そうそう!でね、彼は優秀だからさ、うまくこなせるんだけどさあ。彼にはもっと考えてほしいことあるわけじゃない」

私「戦略、とかですね」

役員Tさん「そうそうそう!やっぱ中長期的な戦略を考えてほしいんだよね、彼にはさ」

私「わかりました、彼と話をしておきますよ。戦略の方向性を詰めておきます

 ーーーーーーーーー

どうでしょうか。

私がたいしたことを言っていないのは、すぐわかると思いますが、この場合はそれでいいんです。なぜかというと、ここでのポイントは「話を聞いてほしい」だからです。

別に意見を求めてるわけでなくて、ちょっとYさんに対して持ってる不満や要望を聞いてほしいんですね。

だから、私の方は、相手の言ってることを一語で集約して、そのことで「気持ちわかりますよ、よく聞いてますよ」というメッセージを伝えるわけです。

さらに、適語で要約されることで、相手も「俺いいこといってるな」と気持ちよくなってきます。人は他者の視点を通じてこそ、自分をより良く知ることができる、というのは奥深い真理です。

その上で、最後のところで、Yさんと直接話をして解決策考えますよ、と続いたのが、さらに効果的です。「こいつは話がはやい!」ってなるわけです。

これは、えらい人に限ったことではないですが、相手が自分の話をきちんと聞いてくれているというのは、すごく嬉しいものです。

というのも、多くの人は実際のところ人の話を聞いてません。上司から言われたことの80%は「今日のランチどうしようかな♡」と考えた側から忘れます。

よって、仕事においてとても大事なのは「相手の気持ちに寄り添うこと」です。当たり前に聞こえますが、それを実践する人はとっても少ないです。だから、相手の目を見て、きちんと相づちを打って、適語で要約してあげれば、 相手は嬉しくなってきちゃうわけです。

ちょっとしたコツなんですが、人の心理の綾みたいなところにきちんと意識を向けるのはとても大事です。全くモテなかった大学生の頃の自分に教えてあげたいですね。それではまた。

英語を学ぶには「決算資料」が最強であるワケ

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この記事(「英語力をどうやって鍛えるか? 私が普段やっていることを公開!」)はありがたいことに反響が大きく、たくさんの方に読んでいただきました。ありがとうございます。そこで紹介した、グローバル企業の決算は英語の勉強にも最適、という点について、IBMを例にしながら説明してきたいと思います。ポイントは以下の3つです。

  • 構造をつかもう
  • 表現を学ぼう
  • 真似をしよう

なお、決算資料はInvestor Relations(IR)のページに置いてあります。よってGoogleで「IBM IR」など検索をかければすぐ出てきます。

IRのページは非常に充実していますが、今回は四半期決算の資料を見ていきます。直近の決算であるIBMの2017 Q2(第2四半期)を使います。

では、早速見ていきましょう。

構造をつかもう

ある程度基礎ができたあと、実際に仕事で英語を使っていく上で重要なのは、実は「構造」の理解です。

 【プレスリリース】

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 【プレゼン資料 P1】

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両者とも、資料の「冒頭」に箇条書きで決算のポイントが簡潔に述べられています。EPS(1株あたり利益)、売上、戦略事業およびクラウド事業実績、Free Cash Flow、EPSガイダンスといった投資家はじめとしたステークホルダーがまず一番知りたい情報が最初にまとめられているわけです。

アメリカのビジネス界はこうしたスタイルを好みます。英語はあくまで「言葉」ですので、本質は相手にどういったメッセージをどうやって届けるか、です。その点で、相手が知りたい情報を簡潔に最初に伝える、というのは英語でのコミュニケーションで常に意識すべき「構造」です。

例えば、米企業の場合は、普段のプレゼン資料でも、冒頭にExecutive Summaryとして箇条書きでその資料全体の「要約」を簡潔にまとめ、その資料のスコープとメッセージを明確にすることが好まれます。

これにより資料の受け手は、いまから説明される資料が、いま起きている課題にどうやって答えようとしているのか、という一番重要な点を最初に理解できるわけです。これにより、その後の説明への理解や関心が深まりますし、適切な議論も生み出されます。こうした「トーン・セッティング」は非常に重要です。

なお、「構造」に関して言うと、Academic Writingの考え方は参考になります。以下のページはとても参考になるので読んでみてください。

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表現を学ぼう

次に重要なのは、ビジネスにおける英語表現の特徴を掴むことです。ビジネス文書の場合は、日本語でもそうですが、回りくどい言い回しや華美な表現は必要ありません。また使われる単語もシンプルです。

そして、重要なのは適切に数字を入れることです。これにより変に凝った文章に頼ることなく、ビジネスで必要となる情報を相手に明確に伝えることができます。

これらを頭に入れて、IBMの決算発表の原稿を見てみましょう。

Overview

Thanks Patricia. In the second quarter, we delivered $19.3 billion of revenue, operating pre-tax income of over $3 billion, operating earnings per share of $2.97, and free cash flow of over two-and-a-half billion dollars.

「構造をつかもう」で触れたように、決算発表でも、まず「一番相手が知りたいこと」を簡潔に伝えています。しかもその表現がとてもシンプルなことに気づくと思います。We delivered の後に、先ほど触れたように、ステークホルダーにとってもっとも関心の高い、売上、税引き前利益、EPS、フリーキャッシュフローについて数字とセットで表現しているだけです。

ビジネスの現場では、これくらいのシンプルさで、重要なポイントを数字とともに明示する、というのが大切です。これにより「ノイズ」なく必要な情報について議論をすぐはじめることができるわけです。

The quarter played out as we expected, with continued solid growth in our strategic imperatives, which now really reflects organic growth. We wrapped on the acquisitive content, and we’re at the stage where we can start to get some efficiency as a result of bringing them into IBM, while we build on the new content.

次に触れているのは「Strategic Imperatives 戦略事業」についてです。ここでも表現はシンプルですね。動詞はplay out, reflect, start, get, bring ~ into, bulid onなど中学生レベルの単語が使われています。また、構文もひねっておらず、事実を頭からどんどんと伝えていきます。

大事なのはここでも構造や文脈です。1段落目で主要な経営数値を述べたあとに「戦略事業」に触れています。これは、IBMが現在メインフレームを中心としたレガシーのビジネスから、コグニティブ(Watson)、クラウド、モバイルといった成長領域への事業構造転換が事業戦略上もっとも重要であるという背景があります。よって投資家の注目が高く、彼等の「知りたい」情報なわけです。

A Cognitive Solutions & Cloud Platform Company

We have been focused on helping our enterprise clients transform their businesses to leverage their data for competitive advantage, and to improve the efficiency and agility of their IT environments. Our strategic imperatives performance has been an indication of our progress in moving to these areas. As you know, our “strategic imperatives” aren’t separate businesses, but signposts that represent the revenue across our business lines that work together to address demand for analytics, cloud, security, mobile and social. Our clients are taking the productivity savings we’re delivering to them in the more traditional areas of IT, and reinvesting those savings to move into these new areas. These are the dynamics you’ve seen in our revenue.

その流れで、Overviewの次のトピックは、A Cognitive Solutions & Cloud Platform Companyになっています。

ここは学びがいのあるところで、先ほど言ったように、IBMが一番力をいれている戦略事業がなぜ重要で、そこにどうアプローチしているかを論理的かつ簡潔に表現しています。

ちょっと訳してみると、以下のようになります。

我々は、お客様企業が、データを競争優位として事業を変革すること、IT環境の効率性と柔軟性をより良いものに改善していくこと、の「お手伝い」をすることにフォーカスしてきました。そして、「戦略事業」がうまく実績を出せているかを見ることで、この方向に我々が正しく向かっているかを測っています。ご存知のように、我々の「戦略事業」は、バラバラな事業群を示すのでなく、アナリティクス、クラウド、セキュリティ、モバイル、ソーシャルにおけるお客様のニーズを、様々な事業にまたがって満たしていることを表現した概念です。お客様は、昔ながらのIT領域では我々により生産性改善をはかり、そこで浮いたお金をこうした新しい領域に再投資しています。こうした動きが我々の売上における「構造」を表しているわけです。

ここでのメッセージは、「戦略事業」とは?、です。それに対して、IBMの強みはなにで、その流れにどう「戦略事業」は位置づけられるか、なぜ顧客のニーズを捉えられるのか、というのを短い文章に論理的な流れをもって、かつコンパクトにまとめています。

英語を「表現する」上で大切なのは、繰り返すように、このように文章レベルでも核となるメッセージと構造を予め整理しておくことです。まずそこを準備した上で、できるだけ平易な単語とシンプルな構文を使って文章を書いていくことで、相手へのメッセージは強くなります。

真似をしよう

最後のポイントは「真似をすること」です。ほとんどの米企業の決算発表では、投資家向けの電話会議を質疑応答まで全て録音が公開されています。

これは最高の教材で、私も時間を見つけては、決算発表の原稿をそのまま自分でしゃべってみる練習をしています。その時に、スマホで録音をしておくと、自分のスピーキングの発音やイントネーションのつけかたのどこに課題があるかもよくわかります。

また、決算発表の部分は主に用意された原稿を読み上げるだけですが、質疑応答の部分は臨場感があるやり取りとなっているので、どんな表現が使われているかを学べますし、またリスニングの勉強にもなります。

さらに、経営陣と機関投資家というビジネスのプロたちが企業業績や戦略についてどういう視点で議論を戦わせるのか、というのをリアルに学べますので、英語だけでなく経営を学ぶ教材としても素晴らしいと思います。

最後に、以下にいくつかのハイテク企業の決算発表へのリンクを紹介しておきます。皆さんも「企業名 IR」でGoogle検索してみてください!

Google

Alphabet Investor Relations - Investor Relations - Alphabet

Amazon

Amazon - Investor Relations - IR Home

Facebook

Facebook - Home

Salesforce

Salesforce - About Us - Investor Information - Home

Intel 

Intel Corporation - Investor Relations

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リストラされる寸前だったときのこと

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少し個人的な話を。

ここで書いたように、2008年の夏ごろの私は、コンサルの仕事でまったく成果が出せずに、長年の持病にも悩まされ、完全に八方塞がりの状況。しかも業績の不振から、会社ではリストラのプログラムが動き始めていました。

そして「使えないコンサル」だった私は、案の定その対象の一人となり、異動先が見つからなければそのまま退職せざるを得ない状況に。

でも、ここまで追い込まれて「負けず嫌い」の火がつきました。自分を売り込むプレゼン資料を徹底的に磨き込んで、社内の知り合いには異動の可能性を聞きまわり、前職のメーカーの事業部門長に久々に会ってもらい状況を聞き、同時にエージェントに会って転職の可能性も探りました。

その努力が実り、社内の間接部門で人を募集しているという話を聞きつけ、面接の機会を得ることができました。改めて「売り込み」資料を磨き直して、面接に向けて準備。転職の面接ばりの真剣さでした。

外資系の文化に慣れた人ならば「そんなのさっさと転職すればいいじゃん」と思うかもしれません。ただ、その頃の私は、本当に悔しかったんですね。

仕事でなんの成果も出せずに、毎日怒鳴られ、そのまま捨てられることに。いや、正しく言うとそういう状況でも、ただ無力な自分が許せなかったんです。とにかく悔しかった。何度も歯ぎしりしながら、一人の時によく泣いていました。

だから、どんな仕事でもいいから、その会社で爪痕を残したかったんだといま振り返ると思います。

尋常じゃない真剣さが実ったのか、幸い面接は好感触でした。ただ、異動の許可を得るためには少し時間がかかりそうなので待ってくれと言われました(外資系は、異動であっても人を増やすのはとても大変です)。

決定を待つ間に私は社内プロジェクトにアサインされました。海外のベスト・プラクティスの資料を翻訳して日本向けに編集する仕事。

もう一人アサインされた人は、長い休職から戻ってきた40代後半のコンサルタント。もともとエンジニアだった人で、朴訥とした、でも頭の良い、とても感じの良いおじさんでした。

私はそのおじさんと、朝から資料を翻訳して、お昼ごはんを社食で一緒に食べて、また翻訳作業に戻って、一日のおわりにお互い進捗を確認して、という日々を淡々と積み重ねていきました。

そして、家に帰って食事を済ませて少し休んだら、夜の10時くらいから毎日同じコースを5キロ走っていました。毎日毎日、かならず。

走っている時にかならず聴いていたのがPerfumeの1stアルバム。繰り返し彼女たちの音楽を聴いて走りながら「あせるな、あせるな」と自分に言い聞かせていました。

その頃の私は(こうして書くと気恥ずかしいですが)長い年月の間、売れないアイドルとして格闘しながら、決して諦めずに成功を掴んだ彼女たちに、自分の現状を投影して共感していたんだと思います。

だから、ポリリズムで一気にメジャーに浮上した2ndアルバムでなく、その下積み時代の息づかいと真剣さが全体に満ち溢れている1stアルバムばかりを聴いていた。

実際のところ、状況は依然として予断を許さなかったし、精神的にも正直なところだいぶ追い込まれていました。

でも、そこで感情の渦に巻き込まれたら終わりということがよくわかっていました。だから、ただ、自分に「あせるな」と言い聞かせて、Perfumeの音楽に励まされながら、毎日走っていたんです。

そして、いま振り返れば、毎日淡々と翻訳作業に打ち込み、家に帰れば走る生活が、自分にとっての「人生のリハビリ」だったんだなと思います。

とても幸運なことに、1ヶ月ほど待たされはしたものの、無事にその間接部門への異動は承認されました。異動後は、久々に仕事に集中することができるようになり、人の縁にも恵まれ、なんとか成果を出すことができて、それがいまに繋がっています。

ただ、いまでも、この時のことは思い出します。先が見えなくて、でも、その不安に押しつぶされたらダメだと、ただ、ひたすらに昼間は英語を日本語に移し替えることに集中し、夜は音楽に耳を傾けながら走っていた時のことを。 あの時の自分の息づかいも。

機械学習からファイナンスまで Courseraの素晴らしい講義に無料でアクセスするコツ

世界中の名門大学の講義がオンラインで学べるCourseraは本当に素晴らしくて、MBAで世界ランク上位のペンシルベニア大学、ノースウェスタン大学などのファイナンスやマーケティング、スタンフォードやジョンズ・ホプキンス大学のデータ・サイエンスの授業がオンラインで気軽に受講できるのは革命的。

しかも全て無料!というのはさすがに厳しかったのか、最近はマネタイズが進んでいて、Specializationという形で複数の講義がまとめられ、月額$40-80くらいを支払えば受け放題というモデルが中心になっていると思っていた。でも、Certificateを取らずに、講義を受けるだけなら依然として「無料」だということに気づいたのでTips的にご紹介。

例えばこのペンシルベニア大学のBusines and Financial Modeling。ファイナンスのモデリングに関する5講義がまとめられている。

ただ、この画面のサイドバーにあるように、月額79ドルで受け放題モデルになっているように見える。

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でも、実はそれぞれの講義は無料で受講できる。以下簡単にご説明。

 

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まずはサイトの検索バーで受けたい講義の"Fundamentals of Quantitative Modeling"を検索。

 

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そうすると講義のトップページに。サイドバーの青い囲み部分の"Enroll"をクリック。

 

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ポップアップの下に小さく青字で"Audit"となっている部分をクリック。

 

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めでたく受講登録完了!

 

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例えば、Week 1をクリックすると、このように全ての講義の動画が見れるし、講義資料のPDFファイルもある!Courseraのアプリをインストールしておけば、スマホでも見れます。

ちなみにこの"Audit"の場合は、以下のように、コース・マテリアルへのアクセスのみで、課題の採点をしてもらったり、Certificateを取得することはできない。

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ただ、実際のところは、ほとんどの人にとって、コースの動画や講義資料へのアクセスができれば十分なので、依然として無償でアクセス可能というのは本当に嬉しい。

ということで、ファイナンスに限らず、ストラテジー、マーケティングからコンピューター・サイエンス、データ・サイエンスまでとにかく充実した講義リストから、気軽に好きなものを学べるわけです!

このページから講義カタログに行けるので、ぜひ眺めてみてください。で、良さそうなSpecializationを見つけたら、上に説明したやり方で無料受講が可能なはずです。

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例えば、名門ジョンズ・ホプキンス大学のデータサイエンスの10講義。

シアトルのワシントン大学の機械学習の4講義。

米MBAトップ校に常にランクインするノースウェスタン大学ケロッグスクールのソーシャルメディアマーケティングの6講義。

www.coursera.org

ヨーロッパのMBAトップランク校のひとつであるIEのMarketing Strategyの5講義。

あと、AIの分野における有名人で、Coursera共同創業者、Google Brain、Baiduのチーフサイエンティストを歴任し、最近はAI分野でのファンドを立ち上げたAndrew Ngのスタンフォード大での機械学習の講義はこちら。

さらに、最近はDeep Learningの講義もはじまっています。

これ以外にも魅力的すぎるコースがたくさんありますので、ぜひアクセスしてみて、良い講義があったら教えて下さいませ!

 【関連書籍】

退屈なことはPythonにやらせよう ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング

退屈なことはPythonにやらせよう ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング

 
Pythonではじめる機械学習 ―scikit-learnで学ぶ特徴量エンジニアリングと機械学習の基礎

Pythonではじめる機械学習 ―scikit-learnで学ぶ特徴量エンジニアリングと機械学習の基礎

  • 作者: Andreas C. Muller,Sarah Guido,中田秀基
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  • 発売日: 2017/05/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

 

読書が「目的」になってはダメな理由

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本を読む上でのポイントとは?

育児と仕事で忙しいのに、どうやって時間を見つけて本を読んでいるんですか?と最近たまに聞かれます。

当然ながら時間は限られていますので、隅から隅までは読んでおらず、ざっと読むんですが、普段から自分が知りたいことや仮説を頭の中で整理しておくのがポイントかなと思います。

例えば、先日紹介したこの「巻き込む力」という本を例に挙げます。

巻き込む力 支援を勝ち取る起業ストーリーのつくり方

巻き込む力 支援を勝ち取る起業ストーリーのつくり方

 

私は最近よく新規事業案を考えているのですが、方法論的には整理されておらず、いつもゼロから作る感じになっています。これは非効率です。

さらに、資料のデザインといった点でも、最新の動向を押さえておらず、自分のスキルがやや古いものになっていることを自覚していました。

これらの課題を自分で明確にしてあったため、その課題を解決してくれそうな本や情報を普段から常に「検索」していたわけです。

で、この本について言えば、ちょうど8月度のKindleセールの対象になっており概説やレビューを読んだところ上記の「課題解決」に繋がりそうであったため、購入に至ったわけです。

さらに、普段から課題の構造や仮説を意識して整理していたので、本を読み始めたらまずはその解決につながる部分にとにかく集中します。

この「巻き込む力」であれば、投資家向けの提案を行う上での、事業案づくりから、ストーリーの着目、デザインのポイントが構造化された形で整理されており、しかも実際に使われた投資家向けのピッチが12社分も入っています。

よって、私が課題と思っていたことへの回答が明確で、その部分に集中してポイントをまず読むことが可能になります。

このような過程を経て見つけた良書には、課題を解決してくれる適切な説明が見つかりますし、本を読む前からと読書中の文脈が繋がっているので記憶にも残りやすいと感じています。

読書は思考の連続性がカギ

つまり、本を読むというのは、実際の文章を読むときのことだけを指すのでなくて、もっと連続した営みであるというのがポイントです。

普段から、ここを知りたいな、と思うところを色々と頭の中で考えていることが大切で、それに最適な本を見つけたら、その本で思考を補完して、また次に進んで思考を深めていく、といったイメージです。

本をあまり読み慣れてない人の話を聞くと、このあたりが意識されていないと感じます。例えば、「なにか良い本ないだろうか?」とひとまず本屋に行って、店頭で目立つところにあるベストセラーの本を買って読む、というようなイメージ。つまり、「本を読むこと」自体が目的化されてしまっているわけです。

でも、そういった読書は文脈に繋がりがないから、読んでも記憶に残りにくいのかなと感じます。「思考の連続性」に欠けているからです。

例えば、これはファッションでも一緒ではないでしょうか。おしゃれな人は、自分の好みを押さえていて、一方で、その時に世間で流行っているものの文脈も知っていて、その一連の流れにお店やネットでの購入が位置づけられていて、いいなと思ったものが見つかった時に購入。それを着て外出する。

私はそういった「文脈」がわからないし、普段からファッションのことについて考えることはほとんどないので、服が足りない時は、とにかく無印良品に行ってみて、店頭でいいなと思ったのを買っています。そこには、文脈や思考の連続性がなく、結果的に垢抜けないファッションになってしまうわけです。

大切なのは、速読のような読書の最中のスキルではなく、普段から自分が知りたいと思うことについて思考し、そこに文脈をつけて、その流れの中に読書を位置づけることなのではないでしょうか。

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