グローバル経営の極北

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「新卒以下のコンサル」がマネージャーになって思ったこと

日系メーカーから外資コンサルに転職した僕は簡単に言うと使えないコンサルで、そもそもPMの言っていることが分からなかったし、作った資料は「てにをは」から直されるし、お客さんからは怒鳴られるしと本当に悲惨な状況だった。で、そのままコンサルをお役御免になり間接部門に飛ばされた。異動は年の後半だったので、年次評価はコンサル時代のマネージャーが実施することに。付けられた評価は下から2番めの最低レベルで、それはリストラ候補となることを意味する。今思えば仕方ないと振り返れるけど、その時は悔しくて、少し突っかかって説明を求めた。そのマネージャーは普段は温厚だけれど、秘めたるプライドが高い人だったので、こちらの反論に不快感を露わにして言った。

「正直言いますけどね、あなたなんて新卒以下のスキルでしたよ」

この言葉は本当に悔しくて、その後も折にふれて思い出した。その悔しさがあったから異動先でどんなに嫌なことがあっても、歯をくいしばって、結果がでるまでやり続けられたと思う。何年かして、異動先での成果が認められてマネージャーに昇格し、部下を持つことになった。その時改めて思い出したのは、このマネージャーの言葉。この時の彼の言葉と振る舞いは反面教師となって、ああいうことだけは止めようと思った。

だから、メンバーには組織の向かう方向をきちんと示して、頻繁にコミュニケーションを取って、褒めるべき時は褒めて、叱るべき時はきちんと叱って、お互いの信頼関係を深めていくことを何より重視した。今思えば、少し肩に力が入りすぎていたし、全てがうまくいったわけではないけど、何人かのメンバーは見違えるようになった。

「メンバーのモチベーションが高く、目標にコミットしていて、相互のコミュニケーションが深く取れている時に、組織は高いパフォーマンスを出すことができる。」

組織運営の秘訣は煎じ詰めればこういうことになる。そして、これを実現するにはマネージャーが不可欠。でも、多くのマネージャーはメンバーに向かい合い切れない。やたら部下にキレて権力を盾にメンバーをコントロールする人、逆にメンバーを恐れて都合の悪いことが言えずなめられている人。マネージャーというのは本当に難しい。でも、僕が心がけているのは、メンバーとは絶対中途半端な気持ちで関わらないということ。褒めるときも、怒るときも、相手のことを思って真剣にコミュニケーションする。「外資系」的ではないかもしれないけれど、理由もくれずにただ僕を罵倒したマネージャーのことを思い出して、やっぱり自分はこのやり方でいこうといつも思う。