グローバル経営の極北

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P&G日本法人の売上高比率はわずか3% - 帝国データバンク&経済産業省の「外資系企業動向調査」を読み解く

日本における「外資系」企業の動向はなかなか掴みにくいけれど、面白い調査を見つけた。まずは帝国データバンクの「外資系企業動向調査」(概要:企業概要データベース「COSMOS2」に収録されている 144 万社のデータ を基に、外国資本が発行済み株式の 25%以上を所有する外資系企業の動向を調査)

まず企業数について。2013年で3,189社。リーマン後の不景気がまだ尾を引いている2009年に急増してるのが本当かなと思うのだけれど、一応「2008 年は前年までの円安進行にともない海外企業による日本企業への投資環境が改善し、7 兆円を超える対内投資が行われた」という説明がなされている。

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次に売上高別の構成比。1000億円以上は72社とわずか2.3%のみ。500億円以上を入れても4.3%と5%に満たない。最も多いのは50億円未満で全体の76.4%を占める。外資系日本法人は社員数100名いかないところが殆どという印象なので、これも頷ける。

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次に外資系の主要企業の日本法人の売上高。これはとても面白い。本体の決算では地域ごと、特に国ごとの売上を開示するところは殆どないので貴重なデータ。

日産、昭和シェルはちょっと特殊なので置いておくと、一番大きいのはやはり日本IBMで約8,500億円。ただ、最盛期はこの2倍の1兆7千億円近くあったはずなので、この10年くらいは本当に厳しい状況だった。IT系だとマイクロソフトが3,767億円、HPが3,687億円、インテルが3,615億円と続く。サムスンが4,263億円と大きいのは半導体売上かと思われる。

それ以外だと製薬がやはり大きい。ファイザー5,242億円、MSDが3,560億円、サノフィが2,845億円、GSKが2,729億円と世界のトッププレイヤーが軒並み大きな売上を上げている。

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次にこの日本法人の売上高の、全社売上高に占める比率を見てみた。個人的な経験だと外資系は日本法人の売上比率が10%近くなると、かなり「うまくいっている」という感じになる。その基準で言うと、ファイザー(11%)、GSK(8%)、日本IBM(9%)、MSD(8%)、インテル(7%)、マイクロソフト(6%)あたりのITと製薬の巨人達は合格点で、本社から見てもかなり重要な市場になってくる。

一方で、予想通りサムスンは2%と非常に低いし、P&Gも3%とやはり低い。サムスンはスマートフォンはじめとして日本市場では全くプレゼンスを示せてこなかったし、P&Gはこの売上比率だとやはりうまくいってきたとは言いがたい。日本法人にあったマーケティングやR&D機能がシンガポールに移管されていることが最近ニュースになっていたが、むべなるかなという気もする。

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*各社全社売上高はYahoo Financeを参照。日本法人売上高は$=¥100で計算。

ちなみに、経済産業省は継続して毎年同様の外資系企業動向調査を実施しており、そちらにも触れておこう。こちらは最新は2014年度についての調査がある。

まず、集計企業数は3,151社。このうちヨーロッパ系企業が最多の1,399社で全体の44.4%。前年比プラス0.3%。次にアメリカ系企業で843社、全体の26.8%。比率は下がってきていて26.8%と前年比マイナス0.9%。アジア系企業は700社で22.2%前年比0.7%プラス。ヨーロッパ系企業が全体の半数近くを占めるというのは意外なところ。

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次に従業者数。金融・保険、不動産を入れると13年度で61万人。前年度比 14.1%増加(前年・当年とも回答のあった 企業のみの比較では同 3.9%増加)となっている。ちなみに帝国データバンクの調査だと外資系企業は70%が東京にあり、東京都の民間従業者数が約900万人なので、ざっくり計算すると約5%くらいが外資系に勤めていることになる。

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最後に最近よく話題になるアジア・オセアニアの地域統括拠点がどこにあるかについて。予想通りシンガポールが多く339拠点とダントツ、次いで中国の283拠点。日本は95拠点とやはり少ない。シンガポールの税制、中国の市場としての重要性を考えれば妥当と言えるがやや寂しい結果。

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*拠点数は複数回答のため延べ数

これ以外にも売上高、経常利益、設備投資額といった計数値と共に、日本の市場としての魅力と阻害要因についてのアンケートなど面白いデータが並んでいる。興味がある方は是非一読をおすすめする。