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サイボウズ「ちゃんと赤字になった」の背景とは?

サイボウズの直近の決算は「赤字」だった。青野社長の「ちゃんと赤字になった」というコメントの背景に触れたい。

重要なポイントは、クラウドのソフトウェア企業の多くは「赤字」決算を続けているということ。以下米の代表的なクラウドソフトウェアの企業の決算からその点を見ていく。

まずはSaaS市場を切り開いたCRMの雄、Salesforce。以下示すように、直近3年間のNet Incomeは全て赤字。一方で売上はYonY +20-30%で成長しており、2016年度の売上は既に67億ドルと独立のソフトウェア企業としてはきわめて大きい数字まで成長している。

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ソフトウェア企業はきわめて高い利益率を誇るのになぜ赤字なのか?以下示すように、R&DとSG&A(販売費及び一般管理費)の売上比率がきわめて大きいことがその理由。Salesforceの場合は、特にSG&A比率が高く、人員増とマーケティング強化に投資し続けていることが伺える。

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 一方でSaaSモデルは月額課金が中心で、キャッシュフローが安定して稼げるのが財務的なポイント。Salesforceの営業キャッシュフローを以下見てみると、YoY +30%後半の数字を続けており、売上増以上の成長を見せている。安定してキャッシュを稼ぐビジネスモデルをもとに、R&Dや従業員、マーケティングなどに大きく投資してさらなる成長を生み出していくサイクルをうまく続けていることが伺える。

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次に人事領域のSaaSでトップを走るWorkday。こちらも過去3年は全てNet Incomeが赤字。一方で売上はYoY +70%のレベルときわめて高い成長率を維持している。

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次にR&DとSG&Aの売上比率。こちらはR&D比率が38-40%と突出して高い。商品的には成熟を見せてきたSalesforceに比べて、まだまだ商品開発に大きく投資していることが伺える。

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以上Salesforce, Workdayの決算から青野社長の発言の背景が読み取れると思う。決算発表説明会の中で青野社長はこう話しており、クラウド分野への積極的な投資を行ったことに触れている。

「(当期純利益を)-8億円と設定したことで、思い切ってクラウドに投資した。長期的にみると、十分な利益」とした。同社は昨年、積極的にクラウド関連サービスの広告宣伝を行い、前年比2億6600万円増の17億4600万円を広告費に投下している。