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パワポ1枚でビシっと決める 経営陣から合意をとりつけるコツとは?

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経営陣によるビジネスレビューに参加することが多いのだけれど、いつも気になるのは、パワポで10枚以上になるような資料を作ってくる人たちのこと。しかも、ご丁寧に1枚目はデータの前提や定義からはじまり、その後、一枚一枚彼らの考えるロジックが淡々と説明されていく。で、大抵の場合そのロジックは冗長で、それぞれの論理的繋がりも弱かったりする。

こういう時の経営陣は、見るからにイライラしだして早々にプレゼンを遮ったり、逆に無関心になって全然話を聞かなくなったりする。なぜ、こうなってしまうのだろうか。

まず大事な前提は、経営陣は「意思決定」するためにミーティングに臨んでいる、ということ。意思決定で必要となるのは、課題が構造化されていて、その課題を浮き彫りにする分析が定量的データと共になされ、そこから論理的に導き出されるいくつかのアクションが提示されていること。経営陣はこれらの要素を含んだ資料を見て、それを彼等の経験や洞察に照らし合わせて考え、最終的にこれだと思う「意思決定」を行う。

なぜ10枚以上になるような資料がまずいかというと、そういう資料を作ってしまう人は、多くの場合、課題の構造や本質を正しく捉えきれていなかったり、適切な抽象化を行えていないから。なので、論理的な展開が弱かったり冗長な資料を作ってしまうし、自信の無さからまずはデータの前提や定義からはじめてお茶を濁そうとしたりしてしまう。

僕が経営陣に資料を持って行く時は、多くてもパワポ3枚くらいに収まるようにすることを心がけている。理想的には1枚。課題の構造を適切に切り取った表やグラフが説得力のある定量データと共に示されて、そこからの洞察が簡潔に整理され、論理的に導かれるアクションや提案がまとめられている。これが1枚にまとまっていて、ミーティングが開始してすぐ経営陣を議論に引き込んでいく。

うまく経営陣に刺されば、彼等からは矢継ぎ早に質問が飛んで来る。この質問に、その場ですぐ数字や事例を、資料でなく「空で」返答できるかが非常に重要。「それはこちらの資料で」と言って、他のページに飛んだりするのが一番まずい。

なぜかというと、経営陣は質問した瞬間に適切な返答ができるかで、その人自身が分析や提案を深く理解しているか、その人は信頼できるか、ということをレビューしているから。上記したように、経営陣は「意思決定」するためにミーティングに臨んでいるのであって、持ち込まれた分析や提案が、自分の意思決定を助ける質と深さを持っているかはきわめて重要になってくる。

特に、グローバル企業では、経営に関する意思決定の失敗で数字の実績を出せないことが続けば、経営陣にはすぐクビや更迭が待ち構えている。だから、彼等は真剣に、自分の意思決定を助ける素材が提示されているかをレビューするわけである。

僕の前職の(勝手に師匠と思っている)COOは、本社との業績レビューの前には、自室に閉じこもって、関連資料を全て机の上に広げて真剣に読み込み、全ての経営指標とそれを補強する事例を頭に叩き込んでいた。その真剣さはこちらがとても近づけない迫力だった。そして、実際のレビューでは、本社CFO&COOから次々と投げかけられる厳しい質問に、瞬時に、しかもきわめて的確に答えていた。それは、まるで映画の一シーンのようで、今でも鮮明にその時のことを思い出すことができる。

経営陣に資料を持って行く時は最初の1枚が全てを決める。この意気込みで準備を行えば、きっと良い成果が得られるはずである。

 

ウォールストリート・ジャーナル式図解表現のルール

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