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米投資銀行の「Google化」について

next.ft.com

ゴールドマン・サックスの新卒応募が25万人を越えた、というFinancial Timesの記事について触れたい。

まず、この記事の背景にあるのは、アメリカでは金融危機後の規制強化と業績不振、高額報酬への世間からの強い批判、極端な長時間労働、などを理由に、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった投資銀行の労働市場における人気が落ちてきているということ。

逆に人気が高まっているのはハイテク業界。Google, Facebook, Amazonといったハイテク業界の中心プレイヤーから野心的なスタートアップまで、エンジニアを中心に優秀な人材を高額の報酬で奪い合っている。さらに、Googleが先鞭をつけた至れり尽くせりの福利厚生やお洒落なオフィス、そしてなにより従業員の「自由」や「イノベーション」を尊重する企業文化が、多くの優秀な若者を引きつける要素になっている。

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例えばハーバード・ビジネススクールの卒業生の進路を見ると、この流れははっきりしている。上にあげたグラフ*は2011年と15年の卒業生の進路を比較したグラフだが、11年には39%が金融業界(Financial Services)に就職していたのが、15年には31%と8%も減少している。

一方でハイテク業界(Technology)は、逆に11年に11%だったのが、15年には20%と9%も増加している。つまり、金融業界の減少分がそのままハイテク業界に移ったことを表している。

(なお、コンサル業界が24%と安定した人気を誇っているのも興味深い。コンサルティングへの安定した需要、高い給与水準、「知的」職業としての面白さ、などは高学歴層には依然として魅力を保っていると言える)

こうした「不人気」に危機感を感じた金融業界は、過剰な長時間労働の是正パフォーマンスレビューの廃止サバティカル休暇の提供、など「Google Model」を意識した従業員待遇の改善による魅力の向上に努めてきた。FTの記事で触れられているように、そもそも金融業界の「不人気」というのは誇張されすぎてきた面はある。一方で、こうした施策によって就職先としての魅力が改善してきていることは事実だろう。

また、FinTechの潮流はハイテクと金融の接点に新たな産業を興しつつある。AI, IoTが生み出す大きな変化を考えると、テクノロジーという「横串」と既存の産業との接点に「魅力的」な仕事が産まれてくる、というのは今後も続いていく流れで、そこが世界中から優秀な人材を惹きつけ続けるアメリカの強さであろうと改めて思う。

 *Source: AT-A-GLANCE Recruting, Harvard Busines School
http://www.hbs.edu/recruiting/data/Pages/at-a-glance.aspx?tab=career&year=2015
http://www.hbs.edu/recruiting/data/Pages/at-a-glance.aspx?tab=career&year=2011

 

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