グローバル経営の極北

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データ分析してみると「人事の常識」は間違ってるかも、というお話

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Mckinsey Quarterlyは、経営の最前線のテーマについて幅広く触れた論考が読めるので重宝している。マッキンゼーのコンサルタント自身が執筆しているので、程よく現場感覚もあり、またデジタル化というテクノロジーの大きな流れもきちんと抑えているので、日々の実務を行う上でのヒントが結構見つかる。今回紹介したいのは、"HR Tech"に関するネタ。

www.mckinsey.com

"People Analytics"、つまり人事領域のデータ分析活用が進むと、今まで人事で常識と思われていたことが実は間違ってたことがわかるかも、というのがこの小論のテーマ。事例とともに3つポイントがあげられている。

どこから人を採用すべきか

あるアジアの銀行では、トップ大学からの採用を最重視していたけれど、各支店でのパフォーマンスを統計分析してみると、どんな「役割」や「ポジション」で経験を積んだかの方がハイパフォーマーと相関が強い、という結果が出た。この銀行はこの結果をもとに、採用手法の再検討、パフォーマンスの計測方法の変更、人材の最適配置、などに関する施策を打ち出し、支店における生産性を25%高めたという。

どうやって採用するか

あるプロフェッショナル・ファームは、年間25万件にも及ぶレジュメが送られてくる状況に困り果てていた。そこで、過去送られてきたレジュメや採用された人の特性、取りたい人材のタイプ、などを統計分析にかけて、採用モデルを構築し、自動化されたスクリーニングで候補者をふるいにかけた。これによって、採用者側で必要なタスクは大幅に減り、面接に集中することが可能になった。

どう人材を引き止めるか

高い離職率に悩まされていた保険会社は、従業員プロファイル、学歴や職歴、人事評価、給与水準などのデータを分析にかけた。そこでわかったのは「比較的小さなチームで、なかなか昇進していなく、パフォーマンスが悪いマネージャーのもとにある社員」が離職率が高い、という事実。そこで、この企業は、従業員のスキル開発やマネージャーのスキル向上に投資することを決定し、離職率を下げることに成功した。ここでのポイントは「給与水準」が一番の要因でないということ。それよりは、しっかりとしたマネージャーのもとで、自分がきちんと成長できているか、というのが重要というのは大切な洞察といえる。

人事領域におけるデータ分析の活用は、経営においていま一番注目されてるテーマの一つ。米企業はファイナンスやマーケティングに比べ、データの取れない人事領域は後回しにしてきたけれど、様々な形でデータ取得できるプラットフォームが整ってきたので、一気に焦点が当たっている。今後も随時触れていきたい。