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冷笑的な人はなぜ組織を「壊す」のか?

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ネットでの情報発信を挫けさせるもの

このインタビューでも話したけれど、ツイッターやブログで自分がまさに「毎日やっている仕事」での気づきや考察を書くのは本当におすすめ。書いてみてはじめて自分が何を考えてたり、知っているのか分かるし、そこに読んでくれた人からフィードバックもらえると、さらに嬉しいし記憶にも残る。それは、自分だけの「知のデータベース」と言えるものなっていく。

どんな仕事や職種にも必ず奥深く面白い要素があるし、それを人に届くようにちょっと工夫して「言語化」することで、自分って面白いことやってるかも、という気づきが必ずあるはず。そして、その「面白さ」はどこかで他の人にも届き始める。

一方で、ネットで何かを「発信し続ける」上で一つの壁になるのが、極端に冷笑的、批判的な人たちの存在。

冷笑的、批評的なポジションはネットでもリアルでも「最強」で、そこにいれば傷ついたら笑われたりしないし、しかも「頭がよく」見えたりする。

どんな主張でも、そこに論理的な穴や説明が不十分な部分を見つけることはできるので、冷笑家達は的確にここを突いてくる。「それは特殊な事例に過ぎない」「こんな反例がある」「きちんと論証できていない」と。

もちろん、建設的な批評はきわめて重要だ。それによってある考えやアイディアは強くなっていく。けれど、残念ながら、誰かを「バカにする」こと、「からかう」こと、が本当の動機となっているタイプが存在するのも事実。

コツコツと発信を続けて、ある時うまく拡散されたとしても、こうした冷笑的な人に寄ってたかって批判されてそのまま発信を辞めてしまう人は案外多い。

組織を蝕む「冷笑家」たち

実はこれは組織でも同じで、特に、仕事の能力は高く声が大きい人が冷笑的だと組織に与える負の影響は甚大になる。

大多数のメンバーは、「場の空気」を読みながら自分の立ち位置を決めるので、仕事ができて影響力の大きい人が冷笑的だと、いつのまにか皆がその視点を受け入れていく。

結果としてそういう組織はマネジメントが機能しなくなる。例えば、うまくいっていない組織のチームミーティングに出席すると、かなりのケースでこういう「冷笑家」が会議の空気を支配していて、マネージャーは場をリードできずに何とも言えないムードが漂っている。

私の覚えている印象的な事例もそうだった。その組織のマネージャーは、中途ですぐそのポジションについたので、その領域の専門的な知識や経験は不足していて、また性格も優しかったので、強いリーダーシップで皆を引っ張るタイプではなかった。

そこに「付け込んだ」のが、組織に長くいて自分の知識や経験に自信を持っている「冷笑家」。彼は事あるごとにマネージャーの発言や判断を批判し、ネガティヴな空気を組織に広げ、その「場の空気」を常に「支配」していた。

結果として、多くのメンバーも、マネージャーに対して懐疑的な姿勢を取るようになった。必ずしも全員がこの「冷笑家」を100%支持していたわけではなかったが、「場の空気」の支配は強く、多くの人はそこに流されていく。数多くの論者が指摘しているように、「場の空気」が人々の行動を支配しがちな日本型の組織ではこの傾向はさらに強くなる。

こうなると組織のマネジメントは難しい。そういう冷笑的なタイプが仕事ができなければ、組織から外してしまうという選択肢が出てくるが、多くの場合そういうタイプは経験豊富で仕事の能力も高かったりするので、マネージャーも大胆なアクションを取りにくい。

唯一の解決策は、より上位のマネジメントがその課題を正しく理解して適切な対応を取ること。実際のこのケースでも、最終的には上位のマネジメントが介入し、それを不服としたこの「冷笑家」は自ら会社を去っていた。

 

このケースのように上位マネジメントが決然としたアクションを取れればよいけれど、そこにきちんと踏み込める人は案外少なく、結果として課題が放置されてしまっている組織は多い。この問題の影響は皆が思っているより深刻なので、マネジメントにおいては非常に重要なポイントといつも思っている。

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