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「退路を断つ」のは絶対ダメ。常に逃げ道が確保されてるか確かめておこう。

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ツイッターやブログをやっているとよく若い人から相談を受ける。都度できるかぎり答えているけれど、一番伝えたいことの一つは「退路を断つのは絶対ダメ。常に逃げ道が確保されてるか確かめておこう」ということ。

この記事に書いたように、自分が「逃げ込める」場所があったことは、僕の人生においてすごく重要な意味を持った。

「退路を断って」成功したと言える人は「少数派」だからこそ、その物語は希少で魅力的なものとして多くの人に消費されるのであって、現実的にはその陰で数え切れない人が「退路を断った」ことで困ったところに追い込まれている。

さらに言うと、例えば「退路を断った」経験を語る起業家は、もともと精神力や実行力、そして知力に長けていることが多く、本人が自覚的か否かは問わず、その能力自体が「リスクヘッジ」になっていることも多いように思う。

とても面白いスタートアップ指南書の「起業の科学」では、起業する時に「退路を絶たない」で、サイドプロジェクトとして事業の準備をした方がいいと薦めている。

中には、「どうせやるなら逃げ場をなくして自分を追い込んだほうがいい」と考える人もいるだろう。資格試験の勉強などをするならそれでいいかもしれないが、スタートアップを始めるならそれはむしろ逆効果だ。

「起業の科学」田所雅之

例えばアマゾン創業者のジェフ・ベゾスは、投資銀行に「勤めながら」ECにチャンスがあると気づいた。Yahooは、スタンフォードの学生だったジェリー・ヤンとデビッド・ファイロが授業の合間に作ったポータルサイトが原形になっている。そして、Facebookはザッカーバーグがハーバード大時代に学生年鑑をネットで閲覧できたら「面白そう」というアイディアから始まった。

重要なのは「サイドプロジェクト」として起業の準備をすることである、と彼は強調する。

会社を辞めてしまうと、気合が入ると同時に、早く成果を上げなくてはと焦る気持ちが出てくる。良いアイデアは、追い詰められるから生み出せるものではないのだ。追い詰められて焦ると、どうしても「結果」を追い求めてしまう。課題をしっかり検証するより、成果が目に見えるプロダクトを作ることにフォーカスしてしまうのだ。結果として、誰も欲しくないプロダクトが出来上がって失敗するのである。

同上

起業や事業立ち上げというイケてる話ではないけれど、私もリストラの危機に陥った時に「逃げ道」を用意しておくことの重要性を痛感した。

自分がリストラされるかもしれない、という場面に追い込まれたことで、人生において常に準備をしておくことの重要性が「身に沁みて」理解できた。

このことがあって以来、仕事の節目ごとにきちんとレジュメを更新しているし、人材エージェントに定期的に会って、自分の「市場価値=年収」を確かめるとともに、どんな仕事に需要が大きいのか、それに対して自分のスキルはマッチしているのか、といった情報も集めるようにしている。

こうしておくことで、いざという時の「退路を確保」しているという安心感を持てるし、今の仕事でどんな成果を出すべきか、という点も明確になってくる。

周知のように日本は「背水の陣」でなにかに「命がけ」で向かい合うことを好む傾向がある。しかし、どんな状況でも生き残れる成功した強者の「退路を絶って頑張った」を単純に信じるのは危険だ。「兵站」や「リスク管理」の意識は「戦争」の勝敗を分ける重要な要素なのだから。

 

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