グローバル経営の極北

グローバル経営を考える「素材」を提供します

「シンプルで美しい」パワーポイントのテンプレートをご紹介

スマホのアプリのように、ビジネス資料においても「シンプルで分かりやすく」デザインするニーズは高まっていると感じる。そこで、パワーポイント用のデザインテンプレートを多数提供しているサイトを紹介したい。

 

これは、Enavatotuts+というコーディングやデザインのTipsがまとめられたサイトの中の記事で、パワーポイントの様々なテーマのテンプレートが「圧倒されるほど」たくさん紹介されている。

 

以下このまとめページから良さそうなものをピックアップしてみる。

 

この記事ではデザインファームなどで使われそうな、クールなデザインの優れたテンプレートが17+個紹介されている。

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次はビジネス向けのテンプレートが15個。スタートアップが投資家向けの資料に使うようなシンプルかつポイントを押さえ、デザイン性に優れたテンプレートが並ぶ。

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これはインフォグラフィックスのテンプレートが12個。ビジュアルと数字がセットになって人に強い印象を与えるインフォグラフィックスのポイントを学べる。

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これは「クリエイティブ」なデザインのテンプレート15個。きわめてデザイン性の高いテンプレートが並んでいて、見ているだけでも楽しい。

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そしてこれはマーケティング・プランのテンプレート15+個。そのまま実践に使えそうなテンプレートが並んでおり便利。

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これら以外にも、教育、メディカル、動画など色々なテンプレートが並んでいるので非常に有益。

 

さらに、資料作成のコツの記事もあり、これは、37個のパワーポイントのプレゼンテーション作成におけるコツがまとめられている。


上に挙げたものと違うサイトになるが、この「フラットデザイン」のパワーポイントプレゼンをまとめた記事も良い。既にスマホでは「当たり前」になっているフラットデザインだが、ビジネス資料作りでもうまく応用していきたいところ。

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今まで紹介したものは有料が基本だったが、これは無料でフラットデザインの文字・数字をダウンロードできるサイト。試してみると良いかも。

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ぜひ参考にしてみてください!

 

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名門イリノイ大のデータサイエンス修士が、完全オンラインで取得可能に しかも安い!

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イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のコンピューターサイエンス学部のデータサイエンス修士(Master of Computer Science in Data Science)が「完全オンライン」で取得できるのでご紹介。

同校のコンピューターサイエンスは非常に有名で、US Newsのランキングでもトップグループの5位にランクされている。イリノイ大学内の米国立スーパーコンピュータ応用研究所でWebブラウザのMosaicが開発されたことも有名。

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特筆すべきはその「授業料」で、全単位取得にかかる費用は$19,200(約200万円)と「安い」。アメリカでは最近オンラインで修士が取れるコースが増えているけれど、例えばUSバークレーのデータサイエンス修士は6万ドルと600万円を優に越える。。全米トップランクのデータサイエンス修士を200万円くらいで取れるというのはかなりアドバンテージと言える。

 

出願にあたっての条件(Requirements)としては以下が挙げられている。

・学士号

・学部でのGPAが3.0以上(学部最後の2年のGPA、3.2以上を推奨)

・オブジェクト指向のプログラミング、データストラクチャーとアルゴリズムについての十分なバックグラウンド

・他のコンピューターサイエンスの修士を取得していない

 

次に「推奨」の条件は以下の通り

・コンピューティング領域の学士

・GPA 3.2以上

・営利もしくは何らかのプロジェクトにおけるプログラミングの経験

・C++ and/or Javaでのプログラミングの経験

また、非英語圏の学生にはTOEFL / IELTSの提出も求められている。

 

学習領域は以下のカテゴリー

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詳細なカリキュラムはこのPDFファイルで確認できる。

 

オンラインなので自由にペースを決められるが、通常3年以内に修了することが想定されていて、最短1年で修了可能。最長は5年となっている。

 

興味のある方はぜひ挑戦してみてください!

 

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マッキンゼーやBCGなどコンサルファームのプレゼンを学べるサイト

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ネット上にはマッキンゼーを始めとした著名なコンサルティング・ファームの「プレゼン資料」がたくさん公開されていて、非常に参考になるのでご紹介。

 

トップコンサルファームのプレゼン25選

まずはこれが便利。マッキンゼー、KPMG、デロイト、PwC、BCGといった著名ファームのプレゼン資料が合計25個集められている。

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マッキンゼー

マッキンゼープレゼン30+選

続いてマッキンゼー。このサイトではマッキンゼーが作ったプレゼン資料が30個以上集められている。カンファレンスや公共系の一般に公開されてる資料で、デザインや切り口を学ぶのに良い。

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マッキンゼーSlideShare公式アカウント 

プレゼン資料を誰でも公開できるSlideShareにもマッキンゼー公式アカウントがある。15個プレゼン資料が置かれており、16年M&A動向、デジタル化関連、など参考になる。

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マッキンゼー論考 戦略&コーポレート・ファイナンス

これはプレゼン資料ではないけれど、戦略とコーポレート・ファイナンスの領域におけるマッキンゼーの論考が集められている。「デジタル戦略」「CFOの役割」「成長とイノベーション」「世界の経営トレンド」などテーマは多様。

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マッキンゼースタイルガイド 

これは貴重で、マッキンゼーの資料のスタイルガイドがダウンロードできる。配色やチャートのサイズなど細かいデザインの仕様を確認できる。

以下リンクの"Web exhibit styleguide"からPDF資料がダウンロード可能。

https://ourbrand.mckinsey.com/learn/copy-chart-style

 

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BCG

BCG SlideShare公式アカウント

戦略コンサルのBCGのプレゼン資料は、Slideshareの公式アカウントに50個公開されている。インダストリー4.0から中国のインターネットまでかなり幅広いテーマの資料があり有益。

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BCGプレゼン13選

このページでは13個のBCGのプレゼン資料がPDFでダウンロードできる。次世代の製造業、世界のラグジュアリー市場、オンライン教育プラットフォームなど多様なテーマのチャートが並んでいる。

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PwC

PwC SlideShare公式アカウント

PwCもSlideShare公式アカウントを持っており、102個と非常に多くのプレゼン資料がアップされている。テーマはデジタルから会計系のネタまで幅広い。

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「退路を断つ」のは絶対ダメ。常に逃げ道が確保されてるか確かめておこう。

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ツイッターやブログをやっているとよく若い人から相談を受ける。都度できるかぎり答えているけれど、一番伝えたいことの一つは「退路を断つのは絶対ダメ。常に逃げ道が確保されてるか確かめておこう」ということ。

この記事に書いたように、自分が「逃げ込める」場所があったことは、僕の人生においてすごく重要な意味を持った。

「退路を断って」成功したと言える人は「少数派」だからこそ、その物語は希少で魅力的なものとして多くの人に消費されるのであって、現実的にはその陰で数え切れない人が「退路を断った」ことで困ったところに追い込まれている。

さらに言うと、例えば「退路を断った」経験を語る起業家は、もともと精神力や実行力、そして知力に長けていることが多く、本人が自覚的か否かは問わず、その能力自体が「リスクヘッジ」になっていることも多いように思う。

とても面白いスタートアップ指南書の「起業の科学」では、起業する時に「退路を絶たない」で、サイドプロジェクトとして事業の準備をした方がいいと薦めている。

中には、「どうせやるなら逃げ場をなくして自分を追い込んだほうがいい」と考える人もいるだろう。資格試験の勉強などをするならそれでいいかもしれないが、スタートアップを始めるならそれはむしろ逆効果だ。

「起業の科学」田所雅之

例えばアマゾン創業者のジェフ・ベゾスは、投資銀行に「勤めながら」ECにチャンスがあると気づいた。Yahooは、スタンフォードの学生だったジェリー・ヤンとデビッド・ファイロが授業の合間に作ったポータルサイトが原形になっている。そして、Facebookはザッカーバーグがハーバード大時代に学生年鑑をネットで閲覧できたら「面白そう」というアイディアから始まった。

重要なのは「サイドプロジェクト」として起業の準備をすることである、と彼は強調する。

会社を辞めてしまうと、気合が入ると同時に、早く成果を上げなくてはと焦る気持ちが出てくる。良いアイデアは、追い詰められるから生み出せるものではないのだ。追い詰められて焦ると、どうしても「結果」を追い求めてしまう。課題をしっかり検証するより、成果が目に見えるプロダクトを作ることにフォーカスしてしまうのだ。結果として、誰も欲しくないプロダクトが出来上がって失敗するのである。

同上

起業や事業立ち上げというイケてる話ではないけれど、私もリストラの危機に陥った時に「逃げ道」を用意しておくことの重要性を痛感した。

自分がリストラされるかもしれない、という場面に追い込まれたことで、人生において常に準備をしておくことの重要性が「身に沁みて」理解できた。

このことがあって以来、仕事の節目ごとにきちんとレジュメを更新しているし、人材エージェントに定期的に会って、自分の「市場価値=年収」を確かめるとともに、どんな仕事に需要が大きいのか、それに対して自分のスキルはマッチしているのか、といった情報も集めるようにしている。

こうしておくことで、いざという時の「退路を確保」しているという安心感を持てるし、今の仕事でどんな成果を出すべきか、という点も明確になってくる。

周知のように日本は「背水の陣」でなにかに「命がけ」で向かい合うことを好む傾向がある。しかし、どんな状況でも生き残れる成功した強者の「退路を絶って頑張った」を単純に信じるのは危険だ。「兵站」や「リスク管理」の意識は「戦争」の勝敗を分ける重要な要素なのだから。

 

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【Kindleセール 終了】ビジネス・経営系の良書をまとめました

※3/18 2冊追加 「フェイスブック 若き天才の野望」「ジェフ・ベゾス 果てなき野望?アマゾンを創った無敵の奇才経営者

※3/20 3冊追加 「巻き込む力 支援を勝ち取る起業ストーリーのつくり方」「ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則」「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則

 

Kindle春のセールで面白いビジネス本が多く半額になっているのでまとめました。

コーチングの基本 この1冊ですべてわかる

コーチングの基本 この1冊ですべてわかる

 

Kindle 66%オフ。日本における「コーチング」をリードしているコーチ・エイによるその方法論をまとめた本で、まずはこれを読んでおくと概要が掴める良書。

 

Kindle 63%オフ。最近話題の中国深センで起きている「ハードウェアのシリコンバレー」としての面白い動きをまとめた良書。いま読んでますが面白い。

 

ライフハック大全―――人生と仕事を変える小さな習慣250

ライフハック大全―――人生と仕事を変える小さな習慣250

 
問題解決大全

問題解決大全

 
アイデア大全

アイデア大全

 

普段ノウハウ本はあまり読まないけれど、この三冊の「大全」本は、該博な知識に裏付けされており面白い。

 

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

 

Kindle 50%オフ。これとても面白いです。シリコンバレーの著名VCの共同創業者である著者による、起業時代のタフな経験とそこから得られる示唆がまとめられていて臨場感があります。

 

MONEY

MONEY

 

Kindle 50%オフ。山形浩生訳による「お金」の仕組みを紐解いた本ということで、未読だったが非常に面白そうなので購入。

 

 

巻き込む力 支援を勝ち取る起業ストーリーのつくり方

巻き込む力 支援を勝ち取る起業ストーリーのつくり方

 

Kindle 50%オフ。 資金調達で必要となる事業計画の立案からピッチの作成、投資家へのプレゼン、資金調達でのポイントなどをとてもわかりやすく説明していておすすめ。

 

やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力

やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力

 

Kindle 60%オフ。何度も紹介しているこの本はとてもおすすめ。ミスターミニットの社長である迫氏が、「現場からの」経営変革を論理と情熱を軸にまとめた良書。

 

コンテナ物語

コンテナ物語

 

Kindle 50%オフ。とても面白そうな本です。

「天性の企業家マクリーンは次々に船会社を買収し、ベトナム戦争では軍事物資の輸送に食い込み、世界最大級の海運業者に飛躍する...グローバルな経済の成り立ちを「箱」に焦点を当てて振り返ったノンフィクション」

 
 

 

SAVE THE CATの法則

SAVE THE CATの法則

 

Kindle 58%オフ。実践的かつ理論的な「脚本術」の本で非常に面白いです。多くの人は脚本家ではないですが、ビジネスにおいても「物語」の要素は重要になっているので、その観点から読むと面白いかと。

 

天才たちの日課

天才たちの日課

  • 作者: メイソン・カリー,金原瑞人,石田文子
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2016/10/24
  • メディア: Kindle版
  • この商品を含むブログを見る
 

Kindle 59%オフ。古今東西の小説家、詩人、芸術家、哲学者、研究者、作曲家、映画監督の「天才」達の日常や仕事のスタイルが簡潔にまとめられていてとても面白いです。村上春樹もあります! 

 

Yコンビネーター

Yコンビネーター

 

Kindle 50%オフ。言わずとしれたアメリカの起業家養成「スクール」のYコンビネーターに密着取材して書かれた本。非常に面白そうなので私もすぐ買いました。 

 

ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則

 
ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則

 

Kindle 50%オフ。いまや当たり前になっているビジョン、ミッションの重要性を定義して豊富な事例をもとに説明した古典。一度読んでおくとよいかと。

 

フェイスブック 若き天才の野望

フェイスブック 若き天才の野望

 

Kindle 50%オフ。これはすごくおすすめ。ザッカーバーグのハーバード時代から丹念に取材されており、彼が何を考え、どうやってFacebookを成長させてかがよく分かる。

 

ジェフ・ベゾス 果てなき野望?アマゾンを創った無敵の奇才経営者

ジェフ・ベゾス 果てなき野望?アマゾンを創った無敵の奇才経営者

Kindle 50%オフ。これまたすごくおすすめ。アメリカのノンフィクションはやはり取材が深く、この本もアマゾンの成長の裏側を丹念に追いかけていて参考になる。 

 

Airbnb Story

Airbnb Story

 

Kindle 50%オフ。Twitterでも何度も紹介しているAirbnbの創業ストーリーをまとめた本で、事業を創る興奮と大変さがよく伝わってくる良書。

 

 

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

 

Kindle 50%オフ。インテル「中興の祖」のアンディー・グローブによるマネジメント指南本。一度読んでおきたい本。

 

ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学

 

Kindle 50%オフ。「学問としての」経営学の先端で議論されている概念を、分かりやすくまとめてベストセラーになった本で、頭の整理にもってこいです。

 

プラットフォームの教科書 超速成長ネットワーク効果の基本と応用

プラットフォームの教科書 超速成長ネットワーク効果の基本と応用

 

Kindle 50%オフ。 現代ビジネスを理解する肝となる「プラットフォーム」の類型をわかりやすく整理した本で、立ち読みした時に面白そうだったので今回購入。

 

プラットフォーム ブランディング

プラットフォーム ブランディング

 

最近新著も話題のブランドコンサルファームを経営されている山口さんによる共著。非常に勉強になります。

 

 

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

 

Kindle 63%オフ。なぜ特定の「都市」だけ繁栄するのか?そのメカニズムを経済学者が「イノベーション産業の乗数効果」という概念を使いつつまとめた面白い本。

 

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「科学」に裏付けされた英語勉強法をご紹介

語学習得の道のりは果てしなく長い。第二言語習得の理論を網羅的に分かりやすく説明している「外国語学習の科学」から、そこで紹介されている勉強法をまとめておく。どれもどこかで聞いたことある基本的なものが多いが、それが「理論」に裏付けされている、というところがポイント。

外国語学習の科学?第二言語習得論とは何か (岩波新書)

外国語学習の科学?第二言語習得論とは何か (岩波新書)

 

分野をしぼってインプット

インプットのポイントは背景知識を知っていて理解できることなので、自分の専門分野(例 ビジネス)や興味のある分野(例 音楽や映画)について、「徹底的に読んだり、聞いたり」することが推奨されている。

知っている分野であれば推測もできるので、それによって新しい単語も習得できる。さらに興味がある分野は動機づけが高まるので長続きする。

リスニングは20%しかわからないものより、80%以上わかるものを何度も聞いたほうが効果がある。わからないものを聞いても効果が低いのがポイント。

2カ国語放送などの場合は、まず外国語で聞き、次に日本語、最後に外国で聞くのも効果的。

リスニングはスクリプトを用意し、聞き取れないことを文字で確認し、もう一度聞くのが良い。聞く時は単語・意味を追いかけるのがやっとでも、読むことで文法構造まで理解できるし、再度リスニングすることで文法理解も深まる。

ほとんどわからないものも、聞くだけでもそれなりに意味はある。音声情報自体は脳が処理しているので、外国語のリズムに慣れる効果はある。

 

例文暗記はやはり大切

外国語教授法のトレンドは「コミュニカティブ・アプローチ」という、言語の本質は創造的で、単語と文法の組み合わせで「無限」の文を作れる、というもの。しかし、実際は日常言語のかなりの部分は「決まり文句」で構成されているとの研究もあり、言語習得に暗記は不可欠。

そこで、よく使う表現、例文、ダイアローグを暗記するのが効果的。単文暗記だと、どうやって表現が使われるかの社会言語的能力がつかないのでダイアローグの方がよい。

 

毎日欠かさずアウトプット

アウトプットは毎日少しずつでもやる。インプットだけでは不十分。日記をつける、独り言を録音する、ネットのチャット、など。インプット教材を聞いた後にコメントを外国語でしてみるのも効果的。

アウトプット時には発音の正確さ、流暢さに注意することも重要。通じさえすればいい、というのは好ましくない。長期的に「ブロークン」英語が固定化するリスク。

 

コミュニケーション・ストラテジーを使う

「コミュニケーション・ストラテジー」とは外国語で、単語が思い出せない、なんと言えばいいかわからないといった時に、うまく「対処する」ための戦略のこと。

まずは「時間稼ぎ」。well...um..., you know...Let's seeといった言葉の活用で、言いたいことがでてこない時にうまく「時間稼ぎ」できる。

次に「パラフレーズ」。「ごみばこ」のtrash canがわからなくても、the box in which you throw things away、のように説明することができる。

 

無意味学習と有意味学習の違いを理解する

 外国語の単語を覚えるのは難しい。これは本=bookのように、お互いに何の繋がりもないから。こうしたものを「無意味学習」と言う。

年をとるにつれて特にこの「無意味学習」での記憶力が落ちてくる。よって、自分の持っている知識構造と関連づけて覚える「有意味学習」の必要がある。

「有意味学習」するには語呂合わせや絵を使った暗記は有効。さらに、単語を文脈の中で覚えることも効果的。I went to a zoo and saw a hippopotamus、という文でhippopotamus(カバ)を知らなくてもzoo(動物園)と関連づけて、動物園にいる動物、という文脈を付与する、など。

 

発声・音声は真似るのが大事

発音のよさを決める要素は「学習開始年齢」「外国語環境滞在期間」「性別(女性の方が良い)」「模倣能力」「発音の正確さに対する興味」「どれくらい外国語を使っているか」など。

一番コントロールしやすいのは「発音の正確さに対する興味」。よって、好きな俳優、などモデルとなる対象を選んで、その人と同じように話せるように、リピーティングやシャドーイングするのがよい。

また、リピーティングやシャドーイングは「模倣能力」を高める上で効果があると考えられる。

大人の学習者の場合、「完璧な発音」を身につけるのはほぼ無理、ということを理解して、完璧を目指しすぎないことも重要。

ネイティブにとってわかりやすく、不快に感じない発音という観点では、イントネーションやリズムの方が個々の音の発音より重要、という研究が大勢を占めているというのも重要なポイント。「特徴をまねる」ことが大切。

 

動機づけを高める

動機づけは学習にとってきわめて重要。授業をとる、仲間と一緒に勉強する、好きな内容の教材を使う、資格試験を受験する、外国語でブログを書く、など自分に合った、動機を高めてくれる工夫が重要。

また、学習している言語の文化に興味を持つこともポイント。興味がわくことで、内容について詳しくなり、その結果インプットの理解が高まり、それが動機づけを高まる、という好循環が期待できる。

 

優れた外国語学習者の特質

優れた外国語学習者の特質は「言語形式に注意する」「コミュニケーションを重視して言語を使おうとする」「学習活動に積極的に関わる」「学習プロセスを意識している」「学習ストラテジーを必要に応じて柔軟に使う」など。これらを意識して学習することで効果が高まる。

 

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【セール終了】経営系の名著いろいろがKindle半額セール中なのでまとめました

Kindleは頻繁にセールをやっていて、本好きにとってはとても楽しい。経営系の名著が多く50%オフのセールになっている(注: 2018/1/4現在)のでまとめてみた。

 ※1/4でセールは終了してしまいました。。。

 

 HARD THINGS

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか

 

Kindle 50%オフ。シリコンバレーの著名VCの共同創業者ベン・ホロウィッツが、自身の起業家時代の「困難」について、その詳細と教訓を語った本。臨場感溢れる記述で読み物としても、経営の学びの本としても有用。

 

 HIGH OUTPUT MANAGEMENT

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

 

Kindle 50%オフ。言わずと知れたインテル「中興の祖」のアンドリュー・グローブの「マネジメント」本。実体験と論理に即した、実践的な本で一度読んでおくのをおすすめ。

 

ゼロ・トゥ・ワン

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

 

Kindle 60%オフ。 「ペイパル・マフィア」の一人で、シリコンバレーの伝説的投資家のピーター・ティールによる、ビジネスの「原理」について、彼特有の語り口で整理した本。競争でなく、いかにして「独占」を築くかが最も重要だ、というのはこの本の有名なメッセージ。

 

ワーク・シフト

ワーク・シフト ─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>

ワーク・シフト ─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>

 

Kindle 63%オフ。ロンドン・ビジネススクールの教授による「働き方の未来」についての本。 「連続スペシャリストになれ」「協力して起こすイノベーションが鍵」「情熱を傾けられる経験を重視せよ」など最近よく語られるテーマがうまく整理されている。

 

 

ビジョナリー・カンパニー 1 & 2

ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則

 
ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則

ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則

 

 Kindle 50%オフ。言わずと知れたビジョナリー・カンパニー。いまや「古典」という感じで、「ビジョン」をお題目にしない会社の方が少ないくらい。一度読んでおくのはいいと思う。

 

リーン・スタートアップ

リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす

 

Kindle 50%オフ。既にスタートアップ界隈では当たり前になりつつある「リーン・スタートアップ」の手法。こちらもその「原典」にあたる本なので、一度読んでおくのが良いかと。といいつつ、私も読んだことなかったので、買って読み始めてます。

 

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休職していた時のこと

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僕が体調を崩して休職していた時のこと、毎日朝食を食べて妻を送り出した後、10時くらいに近所の市民センターのジムに通っていた。築30年以上の古びた建物で、エレベーターはごとんという音を立ててゆっくりと上昇していく。ジムは3階にあり、一回300円。

市営ということもあり、設備はどれも古かった。最低限の機能だけがついたランニングマシンが3台並んでいて、いちばん右側の機械にはたいてい「故障中」と書かれたわら半紙が貼られていた。

印象的だったのは受付の男性。おそらく20代後半で身体はがっちりしているけれど、顔色は悪く陰気な印象を他人に与えるタイプ。彼に券売機で買ったチケットを渡すと、顔色ひとつ変えずに「2時間です」とだけいつもぼそっとつぶやいた。

休職中の平日はほぼ毎日このジムに通っていたのだけれど、この受付の男性の対応は全く変わらなかった。こちらのことを覚えていない、というか、そもそも関心がない様子だった。

でも、僕にとってはこういう素っ気なさ、というか無関心がありがたかった。30歳を越えた男が平日の午前から街を歩くというのは、自意識過剰ではあるのだけれど、どうしても人の目が気になった。

でも、このジムの男性は、そんなことはどうでもいい感じだった。いつも無表情で感情の変化が読み取れない。毎日チケットを受け取り「2時間です」とだけ呟く。そこに意味を感じさせない、ただ淡々としたやり取りで済むことがありがたかったし、だから毎日欠かさず通うことができたし、余計なことを考えずに身体を動かせたことはとても良かった。

ジムの真ん中には大きなマットが引いてあり、大型のテレビが一台置いてあった。僕がランニングマシンで走り、筋トレも一通り終えて、そのマットでストレッチしていると、テレビではいつもワイドショーが流れていた。

その時間に市営のジムにいるのは、ほとんどが老人で、僕の横でぼんやりとした顔をしながら同じテレビを見つめ、骨が浮き上がった腕や足をゆっくりと伸ばしたり曲げたりしている。

老人たちの虚空を見つめるような表情を横目に感じつつ、僕はいつもイヤホンで音楽を聴きながら身体を動かしていた。決して大きくないジムスペースだったが、大きめに作られた窓から入ってくる光を頬に感じる。

そして、その頃の僕はいつも、なぜここにたどり着いたのだろうと、過去に自分の取った行動やその結果起きたことを反芻しながら考えていた。それは「後悔」というものとも少し違っていて、仕事や私生活で自分が「下した」意思決定の連鎖が自分をどうやってここまで連れてきたんだろうと、しつこく考え続けていた。

それぞれの場面では、自分なりによく考えて決断したこともあれば、場の雰囲気に流されてなんとなく決めてしまったこともある。でも、不思議なのは、そのいろいろな形でなされた意思決定の連なりの結果として、いま自分がここに辿り着いている、というのがピンとこなかったことだった。

まるで「平行世界」に迷い込んでしまったかのように、自分がその場面にいることの根拠みたいものが揺らいでいた。

いま振り返れば、きっといろいろな感情を「閉じ込めよう」としていたのだろうと思う。休職に至るまでに、辛いことも多かった。抑えのようのない怒りと、それを許さない状況。いくら悲しくてもそれをうまく表現できないもどかしさ。

それらをうまく消化する技術も気力もなかったので、そこは「とりあえず」蓋をして、過去起きてしまった「こと」に対して、執拗に、けれど意味付けせずに反芻していたのだろう。

ジムに通い始めて数週間が経った頃、いつものように一通りのトレーニングとストレッチを終えて出口に向かおうとすると、あの受付の男性がにんまりと笑っていた。無機質なジムの空間に、いつも感情をどこかに置いてきたような顔をしたあの男が。その笑顔は僕の記憶に鮮明に焼き付けられていて、その頃のどこかに「迷い込んでしまった」ような感情とセットで時々思い出すことがある。

 

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2017年読んだ本「番外編」

おかげさまで「2017年に読んだ本ベスト20冊はこれだ!」は、多くの人に読んで頂き嬉しいです。

ベスト20には入れませんでしたが、積ん読中だったり、入り切らなかったもので面白かった本も紹介してみます。

 

統計学が最強の学問である[数学編]

統計学が最強の学問である[数学編]――データ分析と機械学習のための新しい教科書

統計学が最強の学問である[数学編]――データ分析と機械学習のための新しい教科書

 

ベストセラーとなった「統計学が最強の学問である」シリーズの最新刊で、テーマは「データ分析と機械学習のための数学」。まだ読み始めたばかりだが、三角関数、行列、微分・積分などをどう学び、データ分析と機械学習に応用していくか、が分かりやすく整理されており有益そう。

 

データ・ドリブン・マーケティング

データ・ドリブン・マーケティング―――最低限知っておくべき15の指標

データ・ドリブン・マーケティング―――最低限知っておくべき15の指標

 

「アマゾン社員の教科書」は強力なキャッチコピーで、データをもとにしたマーケティングを実施する上で重要な指標を15にまとめて解説しており有益。

 

人材覚醒経済

人材覚醒経済

人材覚醒経済

 

 経済学者による、日本企業の「無限定正社員システム」が時代の変化についていけておらず、「ジョブ型」への転換が生産性拡大などの鍵になると論じた面白い本。

 

サーチ・インサイド・ユアセルフ

サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

  • 作者: チャディー・メン・タン,一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2016/05/17
  • メディア: Kindle版
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Googleで「サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)」という、マインドフルネスにもとづくEQカリキュラムをリードしている著者による本で、非常に実践的なので勉強になる。

 

ウェルビーイングの設計論

ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術

ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術

  • 作者: ラファエル A.カルヴォ& ドリアン・ピーターズ,渡邊淳司,ドミニク・チェン,木村千里,北川智利,河邉隆寛,横坂拓巳,藤野正寛,村田藍子
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2017/01/24
  • メディア: 単行本
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「ポジティブ・コンピューティング」という、テクノロジーを人間の活力や幸福にどう繋げていくか、という試みを包括的に整理した本。マインドフルネスはじめ、フロー、認知行動療法、レジリエンスといった最近話題のキーワードを掴むのに良い。

 

昔話と日本人の心

昔話と現代〈〈物語と日本人の心〉コレクションV〉 (岩波現代文庫)

昔話と現代〈〈物語と日本人の心〉コレクションV〉 (岩波現代文庫)

 

ユング派の心理療法家で「箱庭療法」でも有名な河合隼雄による、日本の「昔話」から日本人の精神構造を読み解こうとする試みの本。「物語」はいまの自分の大きなテーマなので、少しずつ読んでます。

 

サブスクリプション・マーケティング

サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方

サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方

 

IaaS, SaaSなどソフトウェアでは当たり前になりつつあるサブスクリプションモデルが、単なる昔からある「月額課金」というのでなく、「顧客の時代」に対応したモデルであることを、分かりやすくまとめていて有益。

 

戦争中の暮らしの記録

戦争中の暮しの記録―保存版

戦争中の暮しの記録―保存版

 

「暮らしの手帖」編集部による戦時中の庶民の生活や声を、まさにありのままにおさめた記録で、東京大空襲時に両親を失った子供による手記に溢れる痛切な思いなど、戦争とはなんなのか、を改めて真剣に考えさせてくれる素晴らしい本。

 

挑戦者たちに学ぶデジタルマーケティング

挑戦者たちに学ぶデジタルマーケティング

挑戦者たちに学ぶデジタルマーケティング

 

様々な業界や商品、サービスのデジタルマーケティングの事例を分かりやすく整理した読んでいて楽しい本。宇宙兄弟やサイボウズ式、福岡市動物園、帝京大学ラグビー部、など幅広いです。おすすめ。

 

奈良美智の世界

ユリイカ 2017年8月臨時増刊号 総特集◎奈良美智の世界

ユリイカ 2017年8月臨時増刊号 総特集◎奈良美智の世界

 

もう奈良美智は本当に大好きなんですが、これは彼のルーツを辿れるインタビューがたくさん載っていて良かったです。そのコアの精神が「ロック」なんですよね。

 

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2017年に読んだ本ベスト20冊はこれだ!

いよいよ2017年も終わりに近づいてきました。今年「読んだ」本で面白かったものを20冊一気に紹介したいと思います。どれも面白いので順位はなく、また今年の出版でないものも含んでいますのでご注意を。

経営・組織論、起業/事業開発、データ分析やPython、脳科学、物語・神話論、などいまの自分の関心がこうしてまとめてみるとよく表れているなと思います。

皆さんの年末年始の読書の参考になれば嬉しいです!

Airbnb Story 

Airbnb Story

Airbnb Story

 

 会社を立ち上げる時の興奮と不安の両方を、丁寧な取材で見事に描き出している元気の出てくる本。事業が成長していく過程で不可避の、社会や制度との軋轢に、創業者達が「創業の理念」をもとにどう向かい合ったのかも描かれているのがさらに良い。また、「中間層のための居場所を作る」というメッセージが米社会の「分断」と合わせると非常に示唆深い。

 

起業の科学 

起業の科学  スタートアップサイエンス

起業の科学 スタートアップサイエンス

 

 複数の起業経験を持ち現在VCに在籍する著者が、起業に求められるプロセスを分かりやすく整理した良書。顧客の課題にフォーカスし、アイディアを磨きながらプロダクトを作り、事業プランに落とし込むまでを、ペルソナ、リーンキャンパス、ジャベリンボード、MVPなお馴染みの手法を使いながら説明しているので、非常に実践的。

 

リーダーの現場力

やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力

やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力

 

ミスターミニット社長の迫氏の「現場主導」の経営変革を、自らの熱い「思い」と精緻に積み重ねた「論理」を組み合わせながら、どうやって成功に導いたかをリアルに描いた本。ベンチャー企業の「マザーハウス」からファンド経由で同社に飛び込み、社長に抜擢されてから「リーダーとはなにか」という本質を模索しながら格闘していく様がとても熱く勉強になる。

 

会社を立て直す仕事(2016年初版)

会社を立て直す仕事-不振企業を蘇らせるターンアラウンド- (B&Tブックス)

会社を立て直す仕事-不振企業を蘇らせるターンアラウンド- (B&Tブックス)

 

マッキンゼーのパートナー後アスキー、カネボウをCEOとして経営変革を成功させた著者の「ターンアラウンド」の手法を2社の変革事例を踏まえて方法論化した本。「自律的な課題解決ガバナンスの確立」がターンアラウンドの要諦で、それに向けてどうやって体系的に変革を実行していくかを学べる良書で、私も日々の仕事でよく参照している。

 

データ分析の力

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

 

シカゴ大経済学部の教員による今年とても話題になった本。因果関係、というのはビジネスで重要視されつつ、実は「雑な」形で使われることが多い。それに対して、因果関係分析に使われる手法について、分かりやすく具体例と最新の研究成果をもとに説明されており勉強になる。ウーバーとシカゴ大の経済学者が協同して、需給に合わせた最適な価格設定モデルを検討した事例などは非常に興味深く、ビジネスの実務家もこうしたデータ分析の専門家と連携していくノウハウが必要な時代になってきていると言える。

 

退屈なことはPythonにやらせよう

退屈なことはPythonにやらせよう ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング

退屈なことはPythonにやらせよう ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング

 

 Python覚えたい!と思うけれど、プログラマーでないとなかなかきっかけが掴めない。この本は、Pythonを覚えてエクセルなど普段の作業を「自動化」しよう!という素敵なテーマで、ノン・プログラマーが普段の業務でどうやってPythonを使えるかを学びながら、その基礎を身につけることができるとてもありがたい本。私もこれで少しずつ学んでいます。

 

アルゴリズム思考術

アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール (早川書房)

アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール (早川書房)

 

これも非常に面白い本。コンピューター・サイエンスの視点を日常生活に導入し、「アルゴリズム」で最適な解を導き出せるとして、最適停止、探索と活用、ソート理論、スケジューリング理論、ゲーム理論などなど様々な道具立てを紹介しながら、部屋探しからオフィスの整理、最適な時間の使い方まで具体的な活用例を説明していく。最近は行動経済学で人間の「非合理」な行動についての説明がなされることが「ブーム」になっているが、「アルゴリズム」視点から人間の認知のモデルについて示唆を与えてくれるという意味でも興味深い。

 

脳の意識 機械の意識

脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書)

脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書)

 

脳神経科学者の著者が、「意識」とは何か、という課題に脳神経科学の学説史を丁寧に追いかけ、それぞれの実験のポイントや意義まで踏み込みながら、どうやって「意識」に迫ってきているかを説明した本。正直細かい実験のロジックをきちんと理解するのが困難な部分はあるし、「意識の自然則」に「情報の統合理論」をもとに迫る本書の肝の部分もなかなか難しい。。ただ、「意識」の研究を概観するにはもってこいだし、まさにこれこそ「新書」の役割と思う。

 

騎士団長殺し

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

 

やはりこの2冊は外せません。 私にとって村上春樹は「文体」の作家で、この長編はより徹底的にその部分に拘った作品。なので、1Q84で見せたようなストーリーが「ドライブ」していく感覚は少なく、第1部は正直「退屈」に思える部分があったのは事実。ただ、その「助走」があったからこそ、第2部の後半の「描写」は圧倒的で、お馴染みの「壁抜け」からの帰還、という部分も過去と違う迫力を持っており、何度か読み返したいと思わせる出来だった。

 

みみずくは黄昏に飛び立つ

みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子訊く/村上春樹語る―

みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子訊く/村上春樹語る―

 

これは本当に素晴らしい本。川上未映子による村上春樹のインタビュー集なのだけれど、入念に準備された上で投げかけられる質問が見事で、村上春樹もそれに真摯に応えている。村上春樹を世界作家たらしてめているのはその「神話性」にあるけれど、それを「地下二階」の比喩をもとに改めて対話している点が非常に興味深い。また、文体の重要性、フェミニズム、完成までの改稿、といったテーマも、川上未映子が作家であるが故に深いところまで語られているし、何度も読み返したくなる深い内容。

 

ブッダのことば(1958年初版)

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

 

育児と仕事に毎日追われると本音はやはり疲れますよね、みなさん!私もそうでした。ということで、通勤途中にこれを読みながら、ささくれだった心を静めることを習慣にしていました。

「自分を苦しめず、また他人を害しない言葉のみを語れ。これこそ実に善く説かれたことばなのである」

「聖者の説きたもうた心理を喜んでいる人々は、ことばでも、こころでも、行いでも、最上である。かれらは平安と柔和と瞑想とのうちに安立し、学識と智慧との真髄に達したのである」

 

ザ・ラストマン(2015年初版)

ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」 (角川書店単行本)

ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」 (角川書店単行本)

 

瀕死の日立を大胆に変革した川村氏の「仕事論」をまとめた本。日本の大企業は特に社内のステークホルダー関係が複雑に絡み合っており、その変革は「抵抗勢力」との激しい闘いになる。「自分の後ろに誰もいない」と考え、「自ら」決めて実行する。言うのは簡単だけれど、日立という超大企業の経営変革でこれをやり遂げた人の言葉なので、そこから強い信念と透徹した思考、そして何より「凄み」を感じて震える。

 

やり抜く力(2016年初版)

やり抜く力

やり抜く力

 

「仕事の質を決めるのは最後まで諦めずにやりきれるか」 という、仕事で経験を積んできた人なら誰もが頷くポイントを、研究成果をもとにきちんと論じていて、さらに実践的なヒントや事例も多く紹介されて参考になる本。興味や熱意を持って仕事することが成果を出す近道、とは最近あちこちで言われることだけれど、それを体系的にわかりやすく整理しているので、一度読んでおくと良いかと思う。

 

スクラム(2015年初版)

スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術

スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術

 

ソフトウェア開発では最近常識になりつつある「スクラム」の手法。この本はその手法について、なぜウォーターフォール型の「最初に」計画を立ててプロジェクトを進める手法がうまくいかない時があるかを説得力ある形で示した上で、スクラムの手法を分かりやすくその本質も含めて紹介しており勉強になる。システム開発に留まらず、広くホワイトカラーの働き方に示唆がある。また、「スクラム」が、トヨタ生産方式の考え方に多くのヒントを得ているというのも面白いところ。

 

生涯投資家

生涯投資家 (文春e-book)

生涯投資家 (文春e-book)

 

「村上ファンド」の村上氏があの渦中で何を考え、何を狙っていたのかを自ら語った本。正直やや「ブレーキ」を利かせながら語っているなと思うところもあるけれど、日本のビジネス界に「コーポレート・ガバナンス」を持ち込むことこそが日本を良くする、という強い信念を持って活動していことが強く伝わってくる本。日本の経営について考える上で一読しておくことをおすすめ。

 

ヒルビリー・エナジー

ヒルビリー・エレジー?アメリカの繁栄から取り残された白人たち?

ヒルビリー・エレジー?アメリカの繁栄から取り残された白人たち?

 

製造業の衰退により荒廃したアメリカの中西部「ラストベルト」出身の著者が、そこで実際に何が起きているか、を自らの人生を語りながら描き出していくメモワール。暴力が日常となった生活、麻薬から抜けられない母との思い出を執拗に描きながら、イェール大ロースクールに進学しエリート層の仲間入りしながら、この「原体験」の意味を問いかけ続けざるを得ないその筆致に惹きつけられる。アメリカの「分断」を個人の体験から浮かび上がらせ、全米でベストセラーとなっており、トランプの当選をはじめとして今アメリカで起きていることの本質を理解する上で助けとなる。

 

物語の法則(2013年初版)

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

  • 作者: クリストファー・ボグラー,デイビッド・マッケナ,府川由美恵
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2013/09/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「個人の時代」においては、ビジネスでも「物語」が重要である、というのは最近非常によく語られていること。ハリウッドの創作のプロが、その手法を「方法論」としてまとめたこの本はとても学びがある。「ヒーローズ・ジャーニー」のモデルは仕事だけでなく、キャリアを考える上でも示唆がある。経営においても、優れたリーダーは、日常から非日常への旅路、そこでの試練、大きなチャレンジを乗り越えての勝利、日常への帰還、といった「物語」をうまく「演出」することが巧みであり、物語論を参照することはビジネスでも価値があると言える。

 

新しいメディアの教科書

新しいメディアの教科書 (Kindle Single)

新しいメディアの教科書 (Kindle Single)

 

BuzzFeedなど勃興するアメリカの「デジタル・メディア」の戦略や施策について分かりやすく整理している良書。BuzzFeedが自社の分析ツールに大きく投資をしており、SNSを通じた情報流通を定量的に捉えた上で、様々タイプの記事を「ポートフォリオ」として戦略的に生成している、というのは非常に興味深い事例だった。SNSをはじめとして我々の日常にこうしたメディアは欠かせなくなっており、その最前線の動きを知ることができるこの本は価値がある。

 

世界神話学入門

世界神話学入門 (講談社現代新書)

世界神話学入門 (講談社現代新書)

 

そして最後の1冊。これはまだ読み始めたばかりだけれど、非常に面白いので紹介。世界の神話は「ゴンドワナ型神話」と「ユーラシア型神話」の2つのグループに分けられ、それぞれの神話型の伝播が、DNA分析によってホモ・サピエンスの大陸移動の軌跡と合致している、とする「世界神話学」を説明し、各地の神話を紹介しながらその類似性や特徴を論じていく魅力的な本。物語、神話といった要素には個人的に強い関心を持っており、年末年始にゆっくりと読みたい本。

 

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朝5時起きで弁当作る「ワーママ神話」からいかに逃れるか

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あの頃は辛かった。。

娘も2歳4ヶ月。すっかりおしゃべりできるようになって、毎日とても楽しい。子供と言葉でコミュニケーションすることが、こんなに楽しいものとは思わなかった。

1歳のころは毎週のように熱を出して会社休んで病院連れていったり、道の真ん中でいきなり癇癪を起こして泣き出す娘をオロオロとしながらあやしたり、毎日6時に帰宅して育児と家事を奥さんとなんとか片付けて、皿洗いが終わった後に床でそのまま夜中まで寝てしまったことも数えきれないほどあって、毎日ヘトヘトになっていた。

この頃は本当に疲れ切っていて、毎日重い体を引きずりながら会社にいって、寝不足と疲労で仕事にも集中できず、生産性は著しく低かった。イライラしてコミュニケーションが雑になり、それが問題を引き起こしたこともあった。娘が産まれる前は、常に高い質とスピードで仕事を進めることを心がけて、主導権を常に握ることで成果を出していたので、その落差に我ながら愕然とすることもあった。

で、思ったのは、仕事と育児の両立無理ゲーすぎ、ということ。これが嘘偽りない本音だった。でも、世の中にはスゴい人がいる。スゴすぎる人が。。

「ワーママ神話」を越えて

それが、AERAなどにインタビューを受けるようなワーママ。彼女たちは「外資系役員で、ワンオペで、子供寝たら夜中まで仕事して、朝は5時に起きて弁当作って、大変ですけど充実してるし何より子供の笑顔に癒されます」みたいな、言葉は悪いが「パラノイア」気味の人だったりする。

で、このことをツイートしたら、いいね4000を越えるなど大きな反響があった。

多くの人から貰ったのは「こういうワーママを目指さなければいけないとプレッシャー感じてました」とか「育児と仕事の両立を完璧にやらなくてはと頑張りすぎて体壊しました」といったコメント。

そうなんですよね。他人は他人、なのについそういう「極端な」ケースに目が行ってしまって、自分のペースを乱したり、過剰に頑張りすぎてしまう。私も同じようなプレッシャーを知らず知らずのうちに感じていた。

育児に限らずなんでもそうだけれど、他人のことは参考程度にして、とにかく自分なりにやれることをやる、高望みしない、というのがとても重要と改めて思う。特に、育児&仕事の生活を乗り切る上では特に重要な指針だなあとしみじみと。

あと「スーパーワーママ」も実際は、実母や夫の手厚いサポートあるからできてるよ、というのもリプライで頂いた。まさにそうで、家庭内のことは他人からは結局窺い知れないし、メディアにでるのはその上澄みの、しかも分かりやすく刺激の強い部分に過ぎない。

「個人として」どうしたいのかを自分に問いかける

このことで思い出したのは、よく言う「プロは環境のせいにしない」っていうやつ。育児を言い訳に仕事の質落とせない、的な雰囲気は、特に日本の職場だと色濃い。でも、育児中、特に子供が小さい時は仕事の質は明らかに落ちるので、少なくとも「自分には」カッコつけず「あっこりゃだめだ、諦めよ」って素直になるのが大事かなと考えを切り替えている。そうやって「いい意味で」言い訳しないと潰れるというのが身にしみて分かったので。

結局のところ、なんでも自分が当事者として経験しないとほんとのところは分からないので、育児と仕事の両立は大変だけど学びはすごいある。会社に「依存する」のでなくて、会社を「活用する」とはどういうことか。個人としてどう生きれば幸福そうか、など、リアルな経験から本質的な部分を考えられるので。

結局のところ、頭だけで「育児と仕事の両立」なんて考えていてもどこにも行けなくて、状況に放り込まれて必死になってはじめてその意味するところが分かってくるのだなと改めて思う。

日本(と言い切ってしまうけれど)はどうしても「組織」を「個人」に優先させてしまいがちなところがある。私もその傾向は強い。それがこの国の治安や秩序を保ってる側面もあるので、一概に否定すべきものではないけれど、やはりそろそろそこから少しずつでも「個人としてどうしたいのか」をまず考える方向にずらしていかないとなのかなと思う。

そしてそれは、例えばネットの有名人が主張する「日本人こうすべき」といった教条的なべき論でなくて、我々一人一人が、自分自身の心に問いかけて「自分はこういう道を歩んでいきたいんだ」と自分の言葉を見つけていくことから始まるのではないだろうか。育児と仕事で充実と疲労を行ったり来たりしながら、私自身自分に日々問いかけている。

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「スゴい」CEOの3つの特徴とは?-マッキンゼーによる600名超のCEO調査より

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マッキンゼー・クォータリーの今年の人気記事で第二位になっていたこの記事。2004年から2014年の期間に在任した、S&P500企業のCEO600名超をマッキンゼーが調査し、傑出した業績を挙げた「スゴい」CEOの特徴を3つにまとめている。

なお、この調査では「スゴい」CEOを、在任期間中に株主へのリターンを+500%以上に高めたCEO、と定義している。

外部からの登用

1つ目の特徴は「外部登用」。以下のグラフが示すように、「スゴい」CEOのうち45%は「社外からの登用」だった。それ以外のCEOグループでは22%が外部登用で、78%と大半は「内部昇進」だった。

ここから著者は、外部登用者は、今までの会社の「しきたり」や「慣習」にとらわれない、新しい考え方を組織に持ち込める点でメリットがあるとまとめており、これは頷ける視点。

Exceptional CEOs are twice as likely to have been hired from outside the company.

戦略的なアクション

2つ目の特徴は、戦略的なアクションの重要性。就任後2年以内に「戦略レビュー」を実施した比率は、「スゴい」CEOグループで、調査全体の平均より58%も多かった。

CEOs with exceptional track records are more likely than others to conduct a strategic review early in their tenure.

これは外資系にいると頷けるところがあって、CEOでなくても、私が見てきた優れた事業責任者は、就任後まずできる限り多くの人に会って、数字を徹底的に読み込んで、そこからできあがってくる方向性の素案を社内外の専門家とディスカッションし、最終的に戦略的な方向性が明確な幾つかの指針を出していた。

この論考でも指摘されているが、こうした「戦略レビュー」を実施するには、多くのリソースを割く必要があるし、コスト削減などと比べて即効性があるか確信できない部分もある。

その意味で、まず戦略についてきちんと考えられるところから始められるCEOというのは、それだけの胆力と経験を持っていると言えよう。

組織をいじりすぎない

3つ目の特徴は、「イケてる」CEOは意外にも組織を「いじっていない」ということ。上に挙げたものと同じグラフでわかるように、組織の再デザイン(Organizational Redesign)に手を付けた比率は、全体と比べて48%も低い。

CEOs with exceptional track records are more likely than others to conduct a strategic review early in their tenure.

本論考の著者の仮説としては、「イケてる」CEOの会社は組織をいじるほど低業績に喘いでいなかったこと、次に「イケてる」CEOは外部登用が多く、まず戦略の立案からスタートしているため、その体制が整ってから組織に手を付けていったのでは、という優先順位の点、の2つを挙げている。

これも私の経験からは頷けるところがあって、優れた事業責任者が外部から登用された時は、まず「色眼鏡」無しに様々な人の話を公平に聞いて、その上で判断する傾向がある。その上で、明らかに組織の「癌」となっている人はすぐ外されたりすることもあるけれど、基本的には現有の戦力のポテンシャルを信じて、正しい「方向づけ」をすることで実績をあげようとする人が多い。

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あのザッポスCEOが語る「自律型」組織とは?

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革新的な経営で知られる靴のネット通販ザッポスのCEOトニー・シェイが、自社の「自律型」の組織運営について語っているインタビューがマッキンゼー・クォータリーに載っていて、とても示唆があるので訳してみた。

最近流行りの「ホラクラシー」という、上司や部下という階層構造を無くした、フラットな構造で役割ベースの組織運営が最近良く語られるけれど、この文脈も踏まえつつ、ザッポスの「自律型」組織運営はどういうものなのかが語られていると興味深い。

(以下翻訳中の強調は筆者によるものです)

「自律型」組織とは?

マッキンゼー:「ホラクラシー」はザッポスにとってどんな意味をもっていますか?

トニー:みんな「ホラクラシーとは何か」「どんなツールを我々が使っているのか」といった「テクニカル」な部分に目が行き過ぎてるかなと思いますね。私達が社員にいつも言ってきたのは、自分が「情熱を燃やせるもの」「得意なもの」そして「会社に価値を提供できるもの」がうまく「交差する」ところを探しながら仕事しようということで、これは実は昔から変わってないんですよ。

 個人的には、「ホラクラシー」という言葉で、以前から私達の文化に組み込まれていたものを改めて再確認している感じです。親切な上司やCEOに依存するのだけは避けないとダメなんです、だってそれが失敗の元凶ですから。従業員自身が組織の中で自由に動き回ることが重要なんです。

私達の組織図はリアルタイムにオンラインで確認できますし、一日に50回は変わります。1500名の社員全員が、他の人がどんな目的を持って、責任を担っているかを誰でも見られるようにしているんです。つまり、「自律型」の組織運営の手法や会議が日常的に組み込まれていて、全てオンラインで完結します。ポリシーの策定ですら、全ての従業員がオンライン上で参加して、組織を「作り上げていく」ことに貢献できるようになっています。なので、「ホラクラシー」というより「自律型組織」といった方が正しいかなと思います。

「都市」は優れた自律型のシステム

マッキンゼー:会社が「自律型組織」で、CEOに依存してはならない、となると、どうやって会社の方向性を位置づけていくのですか?

トニー:植物を育てている「温室」を想像してもらえばいいと思います。それぞれの「植物」が従業員です。普通の会社だと、CEOが一番高くて、強くて、皆がいつかそうなりたいと仰ぎ見る「植物」ですよね。うちの会社だと違うんですよ。ここでの私の役割は温室の「設計者」です。全ての「植物」がきちんと「花咲く」ように、最適なコンディションが保たれるように注意を配るんです。

「都市」もいい例ですね。都市は人間が作り上げた組織のうち「時の試練」に耐えてきたもので、「会社」より古くからあります。そして、再生する力(レジリエント)や適合していく力も持っている。さらに、会社に比べて「階層的」でもない。

どこかで読んだんですが、マンハッタンではどこでも、文字通り3日分の食料が流通しているそうです。中央にその計画を立てる存在はないのに、です。代わりにそこにあるのは、消費者や働いている人が、自律的に「自分が好きなように」食料を消費していて、それが供給する側に「機会」を与えているわけです。なので、もし自然災害があっても、その自律的システムはうまく機能して、橋が倒壊したとしても、マンハッタンでは食糧不足は起こらない。

 都市は時の試練に「耐えてきた」だけでなく、生産性やイノベーションという点でも大きな実績があります。一つ面白い数字があるんです。都市のサイズが2倍になると、住民当たりのイノベーションや生産性は15%増える。一方で、会社の場合は、逆です。大きくなればなるほど、官僚的になって従業員のイノベーション力は落ちていく。

都市の首長は、住民に「これをやりなさい」とか「ここに住みなさい」とか言いません。都市が提供するのはインフラです。水道、電気、下水処理などの。あとは守るべき基本的な法律ですね。で、多くの場合、都市が成長してイノベーションを引き起こすのは、住民や企業などの組織が「自律的に」活動した結果なんです。

ザッポスを支える3つのコア

マッキンゼー:ザッポスの核となる「規範」はなんですか?

トニー:その点について言うと3つの異なる「柱」があり、それがザッポスの基盤となっています。常にそれらがきちんと機能しているかに気を配ってるんです。

1つ目は文化と価値観(Value)です。他の企業も我々の価値観を取り入れるべき、といってるわけではないです。ある研究によると、面白いことに価値観「それ自体」が重要なのでなくて、きちんとそれを定めて、そこにコミットし、組織全体にきちんと紐付けることが重要なんです。つまり、その価値観にもとづいて人を雇ったり、あるいはクビにしたりする。大半の大企業は、「コア・バリュー」や「基本理念」といったものを持っています。でも、それって社員からすると、まるでPRの言葉みたいに聞こえます。会社のウェブサイトとか、受付のロビーとかで見かけるけど、誰もそこに関心を払うことはない。

ザッポスでは、自社の文化を定義づけるものとして、10個の「コア・バリュー」を作っています。これらは「クラウドソーシング」、つまり、社員に我々のコア・バリューは何かと問いかけて作ったんです。そして、1年ほどかけてあれこれ検討して、最終的に10個にまとめました。これが我々の文化を作り上げ、社員の毎日の仕事の「言語」になっています。このコア・バリューは、自然な形で毎日の会話に出てくるので、それは「言語」の一部となり、そうすると我々の「マインドセット」とも繋がってくるんです。こうして、最初の軸である、「価値観」と紐付ける、というのが浸透していきます。

2つ目は「目的」です。我々は、個人でも組織のレベルでも、目的を特に重視しています。そして、ホラクラシー型の組織は、個人と組織が持つ目的を「繋げる」ことがやりやすくなります。我々は「"WOW"という驚きの体験と共に生き、それをお客様に届ける」というミッションを我々が存在する目的の根幹に置いています。そして、これを基本として、個々の役割に落とし込んでいきます。両者がうまく繋がっているんです。従業員はこの「繋がり」を意識しつつ、自分の役割を選びますが、それは常に組織のコアの目的と紐付いています。こうした目的の捉え方は、まだまだそうなってはいませんが、我々のコア・バリューとして常に意識するものにしたいですね。まだ毎日の「言語」になってるとは言えないんですが、もっともっとここを大事にしていきたいんです。

3つ目は私が「マーケットベースのダイナミクス」と呼ぶものです。都市のように、正常に機能するマーケットを持つことはすごく重要で、独占を排除し、社内のチームが互いの「顧客」になります。多数の人が参加できて、素早いフィードバックを回せて、クラウドソーシング型の参加を可能にするインフラのために、社内のツールやシステム、そして「通貨」(注: ゾラーと呼ばれる社内通貨)を構築しています。例えば、株式市場と似た仕組みの「商品仕入れ」を想像してみてください。従業員が、人々が株式市場で投資するように、商品仕入れに「投資」するような仕組みを。

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長くなったが以上見てきたように、トニー・シェイ特有の表現でうまく「自律型」組織のポイントが説明されている。 これを読んで思い出したのがメルカリのバリュー。メルカリの経営陣はいつもこのバリューがお題目でなく、事業の根幹にあることを強調しているけれど、これはザッポスとも共通する。言うは易し行うは難し、の「バリュー」をもとにした経営、だが現代のビジネス環境では改めて考える必要があると思う。

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なぜ「愛と情熱」こそが「知的生産」を駆動するのか?

「愛と情熱」こそが自分を駆動する

ビジネス界隈は、嫌になるくらい知的生産やロジカルシンキング、読書術など「ノウハウ本」に溢れているけれど、ほとんどのものは残念ながら役に立たない。

本当に重要なのは対象への「愛」や「情熱」だよなと思う。

音楽でもファッションでも、「大好きな」趣味だと大量の情報を収集、取捨選択、カテゴライズ、意味づけする、といった知的に高度な作業をみんなできている。つまり、愛や情熱が知的活動も含めて自分を「駆動」しているわけだ。

このことについて、サイモン・シネックのTEDでの講演はとても示唆がある。

彼は講演の中で、マーチン・ルーサー・キングやキング牧師、そしてアップルなど偉大な指導者や組織がなぜ世界を変えられたのか、そこに共通する「原理」を発見したと語る。

それが「ゴールデンサークル」で、以下の非常にシンプルなモデル。

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「普通」の人や 「組織」は、「なにを? WHAT」「どうやって? HOW」やるか、という順番で考えて、実行しようとする。でも「なぜ? WHY」と言われると言葉に詰まる。

優れた人や組織はここが違う、とサイモンは述べる。普通の人と正反対で、まず「なぜ?」からはじめる、と。

このモデルを説明するのに使われたアップルの事例が非常に分かりやすい。

例えばアップルが「普通の」会社だったら、きっとこう言うだろうと彼は述べる。

「私達は素晴らしいコンピューターをつくっています。ファッショナブルなデザイン、操作はシンプルでユーザーフレンドリー。いかがですか?」

ありきたりのセールストークだ。しかし、実際のアップルは違う。彼等はこう言う。

「私達は世界を変えられると信じています。そして常に既成のものと違う考え方をします。世界を変えるために、美しくデザインされ、誰にとっても使いやすいプロダクトを届けられるよう努力しつづけ、このコンピュータを作り上げたのです。いかがですか?」

 つまり、普通の企業とは正反対に、アップルは「なぜ?」からスタートする。それが多くの人の感情を揺さぶり、共感を呼び、それがアップルの製品がこれだけ世界中で成功を収めている原因だと彼は述べる。

そして、彼はこのゴールデンサークルと同じく脳も3層構造になっており、WHYの部分にある「感情」の部分を「まず」揺さぶることが重要だとする。

人々は「なぜ?」に反応する、と私は言いました。つまり私達が、なぜ私達の仕事をするのか、真の意味で理解していないとすれば、一体どうやって選挙で投票を皆から獲得したり、製品を買ってもらったりするのでしょうか? どうやって人を説得することなどできるでしょう? さらに重要なのは、皆さんの信念やビジョンに人々の共感を呼ぶことです。

AI時代に本当に必要なものとは?

実はこれから本格化するAI時代にいっそう重要になってくるのは、こういう「愛」や「情熱」、そして「物語」だと思っている。

サイモン・シネックのTEDでの講演のように、人を本当に揺さぶり、共感を引き起こすものは、ありきたりの陳腐な「ロジカルシンキング」ではなく、自分の「WHY」からスタートする愛や情熱、そしてそれを人に届けてくれる物語だからだ。

「ロジカル」の部分でAIが圧倒的に人間を凌駕する時代が来ているいま、改めて、ビジネスにおいても真の「付加価値」を生み出すのは自らのエモーショナルな部分であることを認識することが重要なのではと思う。

そして、自分の愛や情熱はどういう時に「駆動」するのか、そのメカニズムに目を向けてみるのが重要になってくる。趣味でも仕事でも、なんだか分からないけれど自分を「引きつける」要素があって、その法則や自分が好きな部分をうまく理解できると、いろいろな仕事も「楽しめる」ようになるのではないだろうか。

そして思い出すのは、何度繰り返し見たかわからない、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大卒業式での素晴らしいスピーチの言葉。改めて自分が「愛する」ものの存在に思いを馳せている。

皆さんも大好きなことを見つけてください。仕事でも恋愛でも同じです。仕事は人生の一大事です。やりがいを感じることができるただ一つの方法は、すばらしい仕事だと心底思えることをやることです。そして偉大なことをやり抜くただ一つの道は、仕事を愛することでしょう。好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。決して立ち止まってはいけない。本当にやりたいことが見つかった時には、不思議と自分でもすぐに分かるはずです。すばらしい恋愛と同じように、時間がたつごとによくなっていくものです。だから、探し続けてください。絶対に、立ち尽くしてはいけません。

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冷笑的な人はなぜ組織を「壊す」のか?

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ネットでの情報発信を挫けさせるもの

このインタビューでも話したけれど、ツイッターやブログで自分がまさに「毎日やっている仕事」での気づきや考察を書くのは本当におすすめ。書いてみてはじめて自分が何を考えてたり、知っているのか分かるし、そこに読んでくれた人からフィードバックもらえると、さらに嬉しいし記憶にも残る。それは、自分だけの「知のデータベース」と言えるものなっていく。

どんな仕事や職種にも必ず奥深く面白い要素があるし、それを人に届くようにちょっと工夫して「言語化」することで、自分って面白いことやってるかも、という気づきが必ずあるはず。そして、その「面白さ」はどこかで他の人にも届き始める。

一方で、ネットで何かを「発信し続ける」上で一つの壁になるのが、極端に冷笑的、批判的な人たちの存在。

冷笑的、批評的なポジションはネットでもリアルでも「最強」で、そこにいれば傷ついたら笑われたりしないし、しかも「頭がよく」見えたりする。

どんな主張でも、そこに論理的な穴や説明が不十分な部分を見つけることはできるので、冷笑家達は的確にここを突いてくる。「それは特殊な事例に過ぎない」「こんな反例がある」「きちんと論証できていない」と。

もちろん、建設的な批評はきわめて重要だ。それによってある考えやアイディアは強くなっていく。けれど、残念ながら、誰かを「バカにする」こと、「からかう」こと、が本当の動機となっているタイプが存在するのも事実。

コツコツと発信を続けて、ある時うまく拡散されたとしても、こうした冷笑的な人に寄ってたかって批判されてそのまま発信を辞めてしまう人は案外多い。

組織を蝕む「冷笑家」たち

実はこれは組織でも同じで、特に、仕事の能力は高く声が大きい人が冷笑的だと組織に与える負の影響は甚大になる。

大多数のメンバーは、「場の空気」を読みながら自分の立ち位置を決めるので、仕事ができて影響力の大きい人が冷笑的だと、いつのまにか皆がその視点を受け入れていく。

結果としてそういう組織はマネジメントが機能しなくなる。例えば、うまくいっていない組織のチームミーティングに出席すると、かなりのケースでこういう「冷笑家」が会議の空気を支配していて、マネージャーは場をリードできずに何とも言えないムードが漂っている。

私の覚えている印象的な事例もそうだった。その組織のマネージャーは、中途ですぐそのポジションについたので、その領域の専門的な知識や経験は不足していて、また性格も優しかったので、強いリーダーシップで皆を引っ張るタイプではなかった。

そこに「付け込んだ」のが、組織に長くいて自分の知識や経験に自信を持っている「冷笑家」。彼は事あるごとにマネージャーの発言や判断を批判し、ネガティヴな空気を組織に広げ、その「場の空気」を常に「支配」していた。

結果として、多くのメンバーも、マネージャーに対して懐疑的な姿勢を取るようになった。必ずしも全員がこの「冷笑家」を100%支持していたわけではなかったが、「場の空気」の支配は強く、多くの人はそこに流されていく。数多くの論者が指摘しているように、「場の空気」が人々の行動を支配しがちな日本型の組織ではこの傾向はさらに強くなる。

こうなると組織のマネジメントは難しい。そういう冷笑的なタイプが仕事ができなければ、組織から外してしまうという選択肢が出てくるが、多くの場合そういうタイプは経験豊富で仕事の能力も高かったりするので、マネージャーも大胆なアクションを取りにくい。

唯一の解決策は、より上位のマネジメントがその課題を正しく理解して適切な対応を取ること。実際のこのケースでも、最終的には上位のマネジメントが介入し、それを不服としたこの「冷笑家」は自ら会社を去っていた。

 

このケースのように上位マネジメントが決然としたアクションを取れればよいけれど、そこにきちんと踏み込める人は案外少なく、結果として課題が放置されてしまっている組織は多い。この問題の影響は皆が思っているより深刻なので、マネジメントにおいては非常に重要なポイントといつも思っている。

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