グローバル経営の極北

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意思決定することは「仕事」です

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この記事(なぜグローバル企業の経営陣は「定時退社」するのか?)はありがたいことに多くの人に読んでもらっており、PVは60,000を越えて、Facebookのシェアも5716までいった。

この記事で言いたかったことの一つが、「意思決定は仕事である」ということ。前掲の記事では「定時退社」という言葉に反応する人が結構いて「定時に帰るマネージャーは信用できない」とか「家に帰って仕事してんだろう」みたいなコメントが散見された。これを見て思ったのは、「意思決定は仕事である」というのをなかなか信じ切れない人が多いんだなということ。

こう思っていろいろ検索していたら、こんな記事を見つけた。バブソン大学の教授のHarvard Business Reviewのインタビューをまとめたものだ。

重大な意思決定を迫られたマネジャーが、リソースにも知識にも恵まれていながら、賢明とはいえない決断を下すことが多いのはなぜだろうか。理由の大部分は、意思決定に対する認識が間違っていることにある。彼らは主要な意思決定を、組織の仕事を前進させるためにすべき選択のように考えている。しかし本来、意思決定そのものが仕事なのだ。

これは本当に重要なポイントで、多くのマネージャーは、意思決定を自分の重要な仕事であるとはなかなか信じ切れない。がゆえに「手を動かす」仕事に自分も長時間従事することで成果を出そうとする。

しかし、なぜ企業がマネージャーという「中間管理職」を置いているのかと言えば、それはまさに意思決定することを彼等に望んでいるからに他ならない。もっと言えば、マネージャーに「預けている」リソース(メンバーやその他経営資源)から、適切な意思決定の連鎖で、最大限の投資対効果を引き出すことを期待していると言える。

なので、マネージャー自身が「現場」の仕事に忙殺されていては、マネージャーというポジションを置く経営的な意味がなくなってしまう。そもそも、意思決定というのは、それ自体が非常に負荷のかかる「重い」仕事のはずである。

例えば、僕が「師匠」と思っている前職のCOOは、毎日6時には帰宅していたけれど、まさに24時間考えて、意思決定し続けている人だった。いつも頭の中で経営の最適解は何かを考えていて、その仮説のエビデンスが欲しい時に昼夜を問わず僕にメールをしてきた。

毎週土曜日の朝6時ごろに彼が欲しいデータや仮説のリストが僕に送られてきたのを思い出す。朝起きると次の1週間に向けて必要なアクションが彼の頭に浮かぶのだろう。そのリクエストからは、彼の深い経営的洞察や仮説がいつも透けて見えてきて、彼の意思決定を助けるデータや洞察をどうやったら提供できるかと考えるのは、苦労も多かったけれど、楽しい作業だった。

さらに、こちらが提供したデータや洞察によって、彼が素早く意思決定し、それが数千億円規模のビジネスを直接に動かしていくのは驚きだったし、「経営」の仕事というのが本当にあるのだ、と気づかせてくれたのも彼のその意思決定の見事さだった。

日系企業、外資系企業と僕は3社を渡り歩いてきたけれど、そのどちらも優れた管理職や経営陣は意思決定することに焦点を合わせていた。質の高い意思決定をすることは、経営を良くする、という側面だけでなく、ヒト、モノ、カネをチームに適切に呼びこむことで、メンバーも幸せにすることができる。「意思決定は仕事である」という認識がもっと広がればと思っている。

 

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