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2017年に読んだ本ベスト20冊はこれだ!

いよいよ2017年も終わりに近づいてきました。今年「読んだ」本で面白かったものを20冊一気に紹介したいと思います。どれも面白いので順位はなく、また今年の出版でないものも含んでいますのでご注意を。

経営・組織論、起業/事業開発、データ分析やPython、脳科学、物語・神話論、などいまの自分の関心がこうしてまとめてみるとよく表れているなと思います。

皆さんの年末年始の読書の参考になれば嬉しいです!

Airbnb Story 

Airbnb Story

Airbnb Story

 

 会社を立ち上げる時の興奮と不安の両方を、丁寧な取材で見事に描き出している元気の出てくる本。事業が成長していく過程で不可避の、社会や制度との軋轢に、創業者達が「創業の理念」をもとにどう向かい合ったのかも描かれているのがさらに良い。また、「中間層のための居場所を作る」というメッセージが米社会の「分断」と合わせると非常に示唆深い。

 

起業の科学 

起業の科学  スタートアップサイエンス

起業の科学 スタートアップサイエンス

 

 複数の起業経験を持ち現在VCに在籍する著者が、起業に求められるプロセスを分かりやすく整理した良書。顧客の課題にフォーカスし、アイディアを磨きながらプロダクトを作り、事業プランに落とし込むまでを、ペルソナ、リーンキャンパス、ジャベリンボード、MVPなお馴染みの手法を使いながら説明しているので、非常に実践的。

 

リーダーの現場力

やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力

やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力

 

ミスターミニット社長の迫氏の「現場主導」の経営変革を、自らの熱い「思い」と精緻に積み重ねた「論理」を組み合わせながら、どうやって成功に導いたかをリアルに描いた本。ベンチャー企業の「マザーハウス」からファンド経由で同社に飛び込み、社長に抜擢されてから「リーダーとはなにか」という本質を模索しながら格闘していく様がとても熱く勉強になる。

 

会社を立て直す仕事(2016年初版)

会社を立て直す仕事-不振企業を蘇らせるターンアラウンド- (B&Tブックス)

会社を立て直す仕事-不振企業を蘇らせるターンアラウンド- (B&Tブックス)

 

マッキンゼーのパートナー後アスキー、カネボウをCEOとして経営変革を成功させた著者の「ターンアラウンド」の手法を2社の変革事例を踏まえて方法論化した本。「自律的な課題解決ガバナンスの確立」がターンアラウンドの要諦で、それに向けてどうやって体系的に変革を実行していくかを学べる良書で、私も日々の仕事でよく参照している。

 

データ分析の力

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

 

シカゴ大経済学部の教員による今年とても話題になった本。因果関係、というのはビジネスで重要視されつつ、実は「雑な」形で使われることが多い。それに対して、因果関係分析に使われる手法について、分かりやすく具体例と最新の研究成果をもとに説明されており勉強になる。ウーバーとシカゴ大の経済学者が協同して、需給に合わせた最適な価格設定モデルを検討した事例などは非常に興味深く、ビジネスの実務家もこうしたデータ分析の専門家と連携していくノウハウが必要な時代になってきていると言える。

 

退屈なことはPythonにやらせよう

退屈なことはPythonにやらせよう ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング

退屈なことはPythonにやらせよう ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング

 

 Python覚えたい!と思うけれど、プログラマーでないとなかなかきっかけが掴めない。この本は、Pythonを覚えてエクセルなど普段の作業を「自動化」しよう!という素敵なテーマで、ノン・プログラマーが普段の業務でどうやってPythonを使えるかを学びながら、その基礎を身につけることができるとてもありがたい本。私もこれで少しずつ学んでいます。

 

アルゴリズム思考術

アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール (早川書房)

アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール (早川書房)

 

これも非常に面白い本。コンピューター・サイエンスの視点を日常生活に導入し、「アルゴリズム」で最適な解を導き出せるとして、最適停止、探索と活用、ソート理論、スケジューリング理論、ゲーム理論などなど様々な道具立てを紹介しながら、部屋探しからオフィスの整理、最適な時間の使い方まで具体的な活用例を説明していく。最近は行動経済学で人間の「非合理」な行動についての説明がなされることが「ブーム」になっているが、「アルゴリズム」視点から人間の認知のモデルについて示唆を与えてくれるという意味でも興味深い。

 

脳の意識 機械の意識

脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書)

脳の意識 機械の意識 - 脳神経科学の挑戦 (中公新書)

 

脳神経科学者の著者が、「意識」とは何か、という課題に脳神経科学の学説史を丁寧に追いかけ、それぞれの実験のポイントや意義まで踏み込みながら、どうやって「意識」に迫ってきているかを説明した本。正直細かい実験のロジックをきちんと理解するのが困難な部分はあるし、「意識の自然則」に「情報の統合理論」をもとに迫る本書の肝の部分もなかなか難しい。。ただ、「意識」の研究を概観するにはもってこいだし、まさにこれこそ「新書」の役割と思う。

 

騎士団長殺し

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

 

やはりこの2冊は外せません。 私にとって村上春樹は「文体」の作家で、この長編はより徹底的にその部分に拘った作品。なので、1Q84で見せたようなストーリーが「ドライブ」していく感覚は少なく、第1部は正直「退屈」に思える部分があったのは事実。ただ、その「助走」があったからこそ、第2部の後半の「描写」は圧倒的で、お馴染みの「壁抜け」からの帰還、という部分も過去と違う迫力を持っており、何度か読み返したいと思わせる出来だった。

 

みみずくは黄昏に飛び立つ

みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子訊く/村上春樹語る―

みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子訊く/村上春樹語る―

 

これは本当に素晴らしい本。川上未映子による村上春樹のインタビュー集なのだけれど、入念に準備された上で投げかけられる質問が見事で、村上春樹もそれに真摯に応えている。村上春樹を世界作家たらしてめているのはその「神話性」にあるけれど、それを「地下二階」の比喩をもとに改めて対話している点が非常に興味深い。また、文体の重要性、フェミニズム、完成までの改稿、といったテーマも、川上未映子が作家であるが故に深いところまで語られているし、何度も読み返したくなる深い内容。

 

ブッダのことば(1958年初版)

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

 

育児と仕事に毎日追われると本音はやはり疲れますよね、みなさん!私もそうでした。ということで、通勤途中にこれを読みながら、ささくれだった心を静めることを習慣にしていました。

「自分を苦しめず、また他人を害しない言葉のみを語れ。これこそ実に善く説かれたことばなのである」

「聖者の説きたもうた心理を喜んでいる人々は、ことばでも、こころでも、行いでも、最上である。かれらは平安と柔和と瞑想とのうちに安立し、学識と智慧との真髄に達したのである」

 

ザ・ラストマン(2015年初版)

ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」 (角川書店単行本)

ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」 (角川書店単行本)

 

瀕死の日立を大胆に変革した川村氏の「仕事論」をまとめた本。日本の大企業は特に社内のステークホルダー関係が複雑に絡み合っており、その変革は「抵抗勢力」との激しい闘いになる。「自分の後ろに誰もいない」と考え、「自ら」決めて実行する。言うのは簡単だけれど、日立という超大企業の経営変革でこれをやり遂げた人の言葉なので、そこから強い信念と透徹した思考、そして何より「凄み」を感じて震える。

 

やり抜く力(2016年初版)

やり抜く力

やり抜く力

 

「仕事の質を決めるのは最後まで諦めずにやりきれるか」 という、仕事で経験を積んできた人なら誰もが頷くポイントを、研究成果をもとにきちんと論じていて、さらに実践的なヒントや事例も多く紹介されて参考になる本。興味や熱意を持って仕事することが成果を出す近道、とは最近あちこちで言われることだけれど、それを体系的にわかりやすく整理しているので、一度読んでおくと良いかと思う。

 

スクラム(2015年初版)

スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術

スクラム 仕事が4倍速くなる“世界標準”のチーム戦術

 

ソフトウェア開発では最近常識になりつつある「スクラム」の手法。この本はその手法について、なぜウォーターフォール型の「最初に」計画を立ててプロジェクトを進める手法がうまくいかない時があるかを説得力ある形で示した上で、スクラムの手法を分かりやすくその本質も含めて紹介しており勉強になる。システム開発に留まらず、広くホワイトカラーの働き方に示唆がある。また、「スクラム」が、トヨタ生産方式の考え方に多くのヒントを得ているというのも面白いところ。

 

生涯投資家

生涯投資家 (文春e-book)

生涯投資家 (文春e-book)

 

「村上ファンド」の村上氏があの渦中で何を考え、何を狙っていたのかを自ら語った本。正直やや「ブレーキ」を利かせながら語っているなと思うところもあるけれど、日本のビジネス界に「コーポレート・ガバナンス」を持ち込むことこそが日本を良くする、という強い信念を持って活動していことが強く伝わってくる本。日本の経営について考える上で一読しておくことをおすすめ。

 

ヒルビリー・エナジー

ヒルビリー・エレジー?アメリカの繁栄から取り残された白人たち?

ヒルビリー・エレジー?アメリカの繁栄から取り残された白人たち?

 

製造業の衰退により荒廃したアメリカの中西部「ラストベルト」出身の著者が、そこで実際に何が起きているか、を自らの人生を語りながら描き出していくメモワール。暴力が日常となった生活、麻薬から抜けられない母との思い出を執拗に描きながら、イェール大ロースクールに進学しエリート層の仲間入りしながら、この「原体験」の意味を問いかけ続けざるを得ないその筆致に惹きつけられる。アメリカの「分断」を個人の体験から浮かび上がらせ、全米でベストセラーとなっており、トランプの当選をはじめとして今アメリカで起きていることの本質を理解する上で助けとなる。

 

物語の法則(2013年初版)

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術

  • 作者: クリストファー・ボグラー,デイビッド・マッケナ,府川由美恵
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2013/09/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「個人の時代」においては、ビジネスでも「物語」が重要である、というのは最近非常によく語られていること。ハリウッドの創作のプロが、その手法を「方法論」としてまとめたこの本はとても学びがある。「ヒーローズ・ジャーニー」のモデルは仕事だけでなく、キャリアを考える上でも示唆がある。経営においても、優れたリーダーは、日常から非日常への旅路、そこでの試練、大きなチャレンジを乗り越えての勝利、日常への帰還、といった「物語」をうまく「演出」することが巧みであり、物語論を参照することはビジネスでも価値があると言える。

 

新しいメディアの教科書

新しいメディアの教科書 (Kindle Single)

新しいメディアの教科書 (Kindle Single)

 

BuzzFeedなど勃興するアメリカの「デジタル・メディア」の戦略や施策について分かりやすく整理している良書。BuzzFeedが自社の分析ツールに大きく投資をしており、SNSを通じた情報流通を定量的に捉えた上で、様々タイプの記事を「ポートフォリオ」として戦略的に生成している、というのは非常に興味深い事例だった。SNSをはじめとして我々の日常にこうしたメディアは欠かせなくなっており、その最前線の動きを知ることができるこの本は価値がある。

 

世界神話学入門

世界神話学入門 (講談社現代新書)

世界神話学入門 (講談社現代新書)

 

そして最後の1冊。これはまだ読み始めたばかりだけれど、非常に面白いので紹介。世界の神話は「ゴンドワナ型神話」と「ユーラシア型神話」の2つのグループに分けられ、それぞれの神話型の伝播が、DNA分析によってホモ・サピエンスの大陸移動の軌跡と合致している、とする「世界神話学」を説明し、各地の神話を紹介しながらその類似性や特徴を論じていく魅力的な本。物語、神話といった要素には個人的に強い関心を持っており、年末年始にゆっくりと読みたい本。

 

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