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オランダの銀行INGの「アジャイル」な組織作りがとても面白い

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オランダの金融機関INGが取り組んできたアジャイル型組織への変革が興味深いので、マッキンゼーによる彼等へのインタビューについて冒頭の部分を訳してみました。ぜひ読んでみてください。

マッキンゼー: 「アジリティ」をどう定義しますか?

ING: アジリティとはまず「柔軟性」、そして新しい方向に向かってすばやく適応できる組織の力がポイントです。前例踏襲や官僚的な部分を避けて、みんなの力を引き出そうとするわけです。

また、能力が高くバランスの取れたプロフェッショナルを「育成する」という側面も重要です。「アジャイル」であること、は単にIT部門やその他いろいろな部門を「変える」というのに留まりません。大切なのは、End to Endで一貫した原理を持つ、マーケティング、プロダクト、そして営業の専門家、UXのデザイナー、データアナリスト、そしてITエンジニアといった多様な分野の人たちからなるチーム - Squadと我々は呼んでいます - を作ること、そしてそのチームが、顧客のニーズを解決することに注力し、共通の成功の定義のもとに力を合わせるのが大切です。

このモデルはハイテク企業のやり方を参照していて、それを我々のビジネスに合うように設計したんです。

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マッキンゼー: 変革において最も重要な要素はなんでしたか?

ING: 振り返ってみると4つの大きな「柱」がありました。1つ目はアジャイルな働き方です。IT部門と事業サイドは同じオフィスにいて、Squadに属しながら顧客に提供するものを試行錯誤を繰り返しながら作り上げていきます。彼等がやっていることに介入してきてコラボレーションを妨げるようなマネージャーがいないのがポイントです。

2つ目は新しい役割とガバナンスモデルをうまく機能させるために、適切な構造を持った分かりやすい組織にすることです。たくさんの部門、ステアリング・コミッティー、プロジェクト・マネージャー、そしてディレクターがいるようでは、組織はサイロ化しますし、それが「アジリティ」を失わせます。

3つ目はDevOpsをきちんと活用することで、これは非常に重要な点です。とにかく新しいソフトウェアを「頻繁に」リリースできるようにしたかったんです。昔のように一年に5, 6回だけ「大規模リリース」するのでなく、2週間に1回リリースするような感じです。プロダクト開発とITオペレーションの統合によって、画期的な新サービスを作れましたし、そのおかげでオランダ第2位のモバイル銀行になれたと思っています。

最後は新しい人材モデルです。以前の組織では、マネージャーの肩書や給与は、彼等が責任を持つプロジェクトのサイズやメンバーの数で決まっていました。アジャイル型の業績管理モデルでは、そういった「プロジェクト」は存在しません。なので、組織の持つ「知見」を活用できているかが重要になります。異なるレイヤーの知識や専門性をうまく「組み合わせる」ことができているか、というのが変革の大きなポイントでした。

マッキンゼー: 変革のスコープはどんなものでしたか。どこから始めて、どれくらい時間がかかったのでしょうか。

ING: 最初はINGグループ本社の3,500人のスタッフを対象に考えました。マーケティング、プロダクト・マネジメント、チャネル・マネジメント、そしてIT開発といった部門から始めたんです。これは、まずは会社の「核」となるところからはじめて、その成功事例を他の組織に展開するのがいいと考えていたからです。.

 一方で、HR、ファイナンス、リスク管理といった間接部門、支店、コールセンター、オペレーション、ITインフラといった部門はいったんTribeやSquadといったモデルに移行する対象から外しました。これは、彼等が「アジャイル」でない、ということでなくて、「アジリティ」を別のやり方で取り入れてもらいました。

例えば、オペレーション部門やコールセンターにはザッポスの事例を参考にして、「自律型」組織のモデルを導入しました。以前より大きな責任を持ってもらい、同時にマネジメントによる管理を減らしたんです。

他にも、営業部門や支店には毎日の「朝会」(stand-ups)などを通じて、「アジリティ」を高めてもらいました。

また、法務、ファイナンス、リスク管理は独立性が重要なため、Spuadの一員とはしませんでした。一方で、Squad側が、こうした部門に客観的なアドバイスなどを求める、という形で連携を図っています。

2014年の後半に戦略とビジョンを描いてから、新しい組織と働き方が本社全体で実装されるまでに、大体8-9ヶ月くらいかかりました。まずはビジョンを描いて、テクノロジー業界のリーダー達からインスピレーションを得るところから始めたんです。

そして、2ヶ月を使って、オフサイトミーティングを5回実施し、この新しい「神経系」に基づく組織作りを進めました。同時に5-6個のSquadをパイロットとして走らせて、準備から実行、そして全体のデザインまで知見を集めました。結果として、適切な人を選んで配置したり、オフィスを改良したり、うまく「実装」に集中することができたと思います。

 

記事中でも触れられているザッポスについてはこちらもどうぞ。

 

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