グローバルの新卒人気企業ランキングにみる、日本でのコンサルキャリア構築の難しさ
Source: http://money.cnn.com/pf/jobs/newgrads/2014/full-list/index.html
では、なぜこれらの会計系ファームが人気があるのだろうか。
まず言えるのは、キャリアパスの側面。グローバル大企業は、それぞれの役割がかなり標準化されており、フロントエンドであれば、プリセールスからポストセールス、マーケティング、テクニカルサポートなどについて標準的な役割定義が存在する。バックエンドでも同様に、ファイナンス、オペレーション、購買など各種機能で標準化が進んでいる。
会計系ファームは伝統的な監査だけでなくコンサルティング業務をさらに強化しているので、標準化されたグローバル大企業のバリューチェーンの上流から下流まで、事業戦略分析および構築、As-Is分析からTo-Beモデルの構築、業務プロセス整備、ITシステム導入など、ビジネスを展開していく上での「足腰」の部分に具体的に関わることができる。特にコンサルティングは高いフィーを取ってクライアントに向かい合うわけで、グローバル経営の「基本」を体に叩き込める点が新卒にとって魅力と言える。
実際のところ僕が在籍している会社(サンノゼ本社のソフトウェア企業)も、同僚には、現場のコンサルだけでなく、ファイナンスやオペレーション部門などの間接部門も含めて、会計系ファーム出身者がかなりの数いる。
彼等の多くは会計系ファームでマネージャークラスまで自分を現場で鍛え上げ(経験5-10年)、その後大手グローバル企業やスタートアップに転職して、各機能でCxOなどの上級管理職を目指す。また、その過程で一度コンサルティングファームに戻る場合もある。いずれにせよ上記したように各機能は標準化されているので、自分が築き上げてきたスキルが「ポータブル」である、というのが最大のポイント。このおかげで多様なキャリアパスが可能になっている。
翻って日本はどうか。この点ではきわめて不幸な状況と言える。日本のコンサル界隈でよく聞かれるのが「事業会社」という言葉。この言葉が使われる時、「コンサルファーム」は顧客側の「事業会社」とは違うモデルで運営しているようね、という含意がある。これは一面真実をついていて、日本の大企業は一般的に、個別企業に「特有の」オペレーションを構築することが競争優位の源泉、という認識を強く持っている。ここが上述した「グローバル」企業が常に標準化を志向するのと大きく異なる点。
この差異は経営における多様な論点も含むのだが、今話しているキャリアパスの文脈で言うと、これが日本におけるコンサルタントのキャリアパスを難しいものにしている。
コンサルティングファームはどこも規模が拡大しており、俗にいう「上が詰まっている」状況は各社共通。がゆえに、大手ファームでパートナーまで昇進できる確率はかなり下がっている。こういう環境では、ファームでマネージャークラスまで自分を鍛えあげて、その後大手グローバル企業やスタートアップでCxOを目指す、というのはキャリア構築の有力な解になるはず。
しかし上述したように、日本の大企業は個別企業ごとに経営モデルが異なるし、役割型の雇用でなく終身雇用前提でどうしても「生え抜き」重視の人事制度が構築されている。さらにスタートアップも、大企業と違って「実力主義」的ではあるが、オペレーションの標準化を志向しているところは少ない。こうなると、コンサルティングファーム出身者が自分が培ったスキルをそのまま発揮することが難しく、転職後に個別企業に最適できるかが成功要因になってしまう。これは成功の確率を下げるし、がゆえに、「事業会社への転職はねえ」というコンサルタントの嘆きが日本では多く聞かれることになる。
だいぶ長くなってしまったが、もう一つ重要なポイントは給与。Glassdoorを検索かければこの辺はすぐ分かる。DeloitteのManager in USだとBase Salaryの平均値は$134,942。
Source: https://www.glassdoor.com/Salary/Deloitte-Manager-Salaries-E2763_D_KO9,16.htm
同様にPwCのManagerのBase Salary平均は$128,773になっている。
で、例えばハイテクの雄GoogleのFinance Managerで調べてみると、Base Salaryの平均は$158,259と非常に高い。
Source: https://www.glassdoor.com/Salary/Google-Finance-Manager-Salaries-E9079_D_KO7,22.htm
他にも色々調べると面白いけど、いずれにせよ、コンサルファームとグローバル大手企業との給与レベルは変わらないし、いま勢いのあるハイテク企業ならば、コンサルファームより高い給与水準であることが一般的。このことは、上述したキャリアパス構築の観点と同様に非常に重要で、コンサルから外部の会社に転職することが「当たり前」の選択肢になりうる。
これに対して日本がどうなっているかは、みな知っているように、総合商社などを除き一般的な日本企業であれば課長クラスで1000万円の給与が標準。しかも40歳前後でその役職につくことが普通。これに対して、アクセンチュアや会計系ファームだと、入社5-10年目でマネージャークラスになり、その給与は1000-1300万円くらいが相場。この事実は、スキル面でのフィットと合わせて、「事業会社」にコンサルが転職していくことの大きな阻害要因になっていると言えよう。
だいぶ長くなってしまったが、オペレーションの標準化、という思想は、現代経営を考える上での一つの大きなテーマなので、そのことについては別記事で論じてみたい。
*1:the U.S., China, Japan, Germany, France, U.K.., Brazil, Russia, Italy, India, Canada and Australia